劇場公開日 2024年8月30日

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「祖国の国旗をつけて走る喜び」ボストン1947 アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5祖国の国旗をつけて走る喜び

2025年2月5日
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鑑賞方法:映画館

ソウルオリンピックの開会式、聖火ランナーとして孫基禎が大きく手を振り登場し、韓国国民が万雷の拍手をしているシーンをよく覚えている。1988年のことだからその時76歳。ベルリンオリンピックから52年、この映画の舞台ボストンマラソンから41年経っていた。
ベルリンオリンピックでは日本国の金メダルと記録されているが、朝鮮人だからだろうが日本ではその事実はそれまでほとんどテレビ等で知らしめることはなく、このソウルオリンピックの時に初めて知った。
映画では表彰式で日章旗を隠したことの制裁で選手生命を絶たれたエピソードがあった。今からでも遅くないからソン・ギジョンの金メダルもナム・スンニョンの銅メダルも日本は韓国の記録に変えてあげてもいいんじゃないかと思う(不寛容な我が国やJOCにそんな芸当は出来ないだろうが)。
日本統治終了後の1947年において朝鮮はアメリカ占領下で難民国。映画の通り、途轍もない苦労をしたであろうソン・ギジョンはボストンで見事ソ・ユンボクを優勝に導き、更に1950年には1位から3位独占の偉業を成し遂げた。本命はオリンピックでのマラソンの金メダルだろうが、それは朝鮮戦争などの混乱で時期が遅れ、1992年バルセロナオリンピックでのファン・ヨンジュの金メダルでようやく念願が叶う。
不屈の努力でスポーツの世界で栄光を掴む物語は数多くあるが、国家の運命に翻弄されながら成し得たソン・ギジョンの歴史は別格の重みがある。
素直にいい涙を流すことができた良作でした。
ありがとうございます。

アベちゃん