シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
百戦錬磨の戦場カメラマン・リーと駆け出しヒヨコのジェシー。
視点は三人称で誰の主観も存在しない。
ジャーナリストでありリーの師匠であるサミーが戦場で死ぬ。
ここからリーとジェシーのキャラクターが変化していくというもの。
映画としての面白さが一周しきってしまって、
映画のタイトルとメインキャストの建付けが
いまいちしっくりこない。
兵士の視点とか(政府軍または西部勢力)
大統領かどこかの市民
なんでもいいけど、どっちかの側から観ると感情移入もわかりやすさも
あるのだけど。
ジャーナリストをW主役にしているものだから、基本的に中立的。
途中、兵士が誰と戦っているのかわからなくなっているあたり、
撃たれるから撃つというリアリティがそこにあった。
いずれにしても、感情移入ができないままジェシーが覚醒していくという
なんとも当てつけのような終わり方で、映画的にはこのジャーナリスト視点は
落ち着くんだと思うけど。
なんだか、映画通が映画を楽しむため(これくらいの角度じゃないと
アメリカ内戦の映画ってツマンナイヨネ)みたいなのが透けてるんだよな。
つまりそれなりの正義の御旗みたいなものがお互いに(政府軍・西部勢力)
描かれてないものだから、こいつら何のために戦っているのか?
と白けてしまうのだ。
そもそも戦争なんてのは、「俺、なんのために戦ってたっけ?」となるんだろうけど
それが狙いなら、ジェシーがあそこまでのめり込んでいく姿が狂気だった。
戦争ってくだらない、って伝えるための写真ではなかったからだ。
という私見とともに。いい映画だったけど、ずっと気持ちが入らなかったよ。
トニーとボハイが死ぬ理由
トニーとジェシーが入れ替わり、ボハイと共に離脱するシーン。視聴者がリーと思いを同じくするのはボハイがジェシーに性的な加害を行うのではないかという不安ではないだろうか。ドアが開け放たれて放置された車を見たとき、最悪の事態として想定するのはレイプではないだろうか。ボハイとジェシーを処刑しようとする白人至上主義と思われる兵士も、ボハイとジェシーの性関係をそのような人種差別的な色眼鏡で見たので、ピンクのサングラスを付けていたのではないか。このシーン以外、この映画にはなぜか性的な暴力の匂いがしない。あたかもそのような性暴力は真のアメリカを巡る戦争には存在しないかのように。仲間になるかと思われたトニーやボハイなどと一緒に性暴力も戦争の枠外に「排除」されてしまっているかのように。移民と性暴力を妄想の線で結ぶ差別は、どちらも内戦の構造から排除されていることから、この映画においても当然視されている。ピンクサングラスの兵士がどちらにも属さない「アメリカの兵士」である所以である。
壮大な思考実験
「もし、アメリカが内戦になったら」それだけを状況設定して観客を戦場の中に放り込む。この映画を観た人は自分がどちらの勢力に属しているのか考えたことだろう。善か悪かなど関係ない。ましてやあるべきジャーナリスト象を描いているわけでは決してない。ジェシーは、ヒーローだったリーが自分の身代わりになって撃たれているところを夢中になってカメラで撮る。その時、自分もジェシーの感情に共鳴していることに恐怖する。そして最終盤、写真に写った大統領の遺体の側で微笑む軍人の姿は、悪を倒した正義にも、人間のおぞましい姿にも見えるのだ。私の手は小刻みに震えていた。この映画と同じことが、世界中で起きている。戦場は今なお、あるのだから。
偏った人による偏った人のための偏った映画。
面白くなかった。
現実では平和な街が作中では戦場になっていて、って話だと漫画の『西武新宿戦線異状なし』を思い出しましたが、アメリカでも『レッド・ドーン』とかありますし、特に珍しいプロットでもない。
狂ったディストピア世界で自分たちだけ狂っていない主人公が生き延びるために奮闘する話、その程度のプロットなんだと思う。
何を争って内戦に発展したかとか、背景は何ひとつ語られてないし。
本来『その程度』であるはずの映画がアンチトランピズムの民主党支持者のいう、トランプがもたらした『アメリカの分断』っていうフレーズに嵌ったから、現実世界を投影して未来への警鐘だなんだと持ち上げられてただけなんだと思う。
予告編で有名な「私たちはアメリカ人だ」「どの種類のアメリカ人だ?」の台詞のあとには「中米か南米か?」と続く。全然、深い意味はない。
登場人物がみんなおかしい。
正規軍でさえ話が通じず無防備な民間人に平気で発砲する。
普通、戦争を終わらせたければ投降してもらうのが一番簡単で手っ取り早いわけで「大統領は見つけ次第殺害」なんて方針は阿呆でもやらない。
首都で攻防戦が始っても避難もせず大統領府に籠って執務を続ける大統領ってめちゃくちゃ気骨ある人じゃないか。
結局、ストーリーを考えた人は、ちゃんとしたキャラクターを立てて現実味のあるストーリーを作れるだけの能力がある人じゃないって事なんだろう。
大統領の気骨なんて考察しても無駄なのはわかるから一瞬以上考えない。
最前線の兵隊について行って銃弾に身を晒しての撮影取材は、最後主人公が撃たれて死にますが、雲仙普賢岳の噴火の時のようにああいう時って得てして無関係な第三者を巻き込んで死人を出すもので、私は本来やるべきだと思いません。
あと能天気な挿入歌がどれもこれもシーンにまるで合っておらず、しかも全然名曲とも思えず非常に気色悪かった。
動く戦場写真集
米国内戦の戦場写真集が発売されたらこんな感じかな~という作品。
別にシーンを切り抜いてエッセイをつけて書籍にしてみても問題ないくらいないまぜだったけれど、同じ状況下でも各地域の様子は国土が広けりゃそりゃあ色々あるだろうと思って違和感はなかった。
また、移動直後のガソリンスタンドでの狂気の一面は見てもまだ被写する出来事・・・何なら「すげぇ特ダネイベントだ!」とすら感じていた一行の雰囲気が、どんどん目的地に向けて自身の身の上の事だと浸透していく感じは映像ならでは。
アジア系ジャーナリストに対していかにもなアメリカ人が慈悲なくぶっ放すシーンは、アメリカに妄想を抱いている日本の海外出羽守がやられる感じで非常に良かった!
今作唯一のスカッとシーン!!
終盤のリーがジェシーをかばった後のシーンは狂気の継承完了した雰囲気が凄まじくて個人的には完全にホラー。
それまでに二人の振る舞いが逆転していく流れがあったから余計そう感じたのかもしれない。
ジョエルの大統領への質問については、一人のジャーナリストではなく近しい人を殺された一人の犠牲者(まぁ自ら赴いたことは置いておいて)に変わったのは分かるけれど、直前にジェシーの狂気っぷりがあるのでインパクト薄かった。
※笑顔で「ねぇどんな気持ち?」くらいだったらまた違ったのかも。
鑑賞後の余韻は完全にモヤっと。
結局は、このモヤっとが好きかどうか次第かなと。幸い私にとって今作のモヤっとは好ましいものでした。
あと、ゲームFallOutシリーズで各地域の違いを楽しめる人はすんなり受け入れられそうかな~。
反対にべき論を用いる人や質問して解を得られないと不機嫌になる人には絶対合わないと思われます。
評価が分かれるかな
僕は、観たあと、精神的にけっこうやられました。
(それくらいの映画だと、褒めてます(笑))
政治的な背景含め、俯瞰して評する知識も何もないので、そういうことはしません。
ただ、全体としてはふわったとしたとりめのなさ、私は(この映画は)こうなんやでと言わない中に、短いセンテンスで「もし内戦が起こったら」実際に起こりそうなことを表現してくれるので、きわめてわかりやすかったです。
それだけに、心に刺さりまくって、ホラー映画とかには耐性があるにも関わらず、別種の恐怖を感じてビビッてしまいました。
特に、基本的に心が強く、若者にとってのヒーローだった人が、恐怖に心と身体を支配されてしまう瞬間の、容赦ない描写に、引きずる後味の悪さを感じつつ、でもこれが実際の人間なんやなと納得。
観て、ほんまによかったです。
一方、映画としてのジャンル区分がはっきりしないと気持ち悪いと感じる方や、世の中を二項対立でわかりやすく判断したい方、人間って社会って結局こうなんよと断定したい方…相手に「はっきりもの言わんかい!」と思ってしまう方(笑)…には、かなり不満というか、そのご自身のレベルには達していないと感じられるかもしれません。
それは、この映画に限らずですが。
知的レベルとかを評しているのではなく、センスの違いなので、それらの見解も、こういう感覚なんやなぁと思えば納得しかありません。
ただ、観る人を選ぶ作品ではあると思います。
プロではなくなったリー、プロになったジェシー。
戦場カメラマンとして一目を置かれているリーと、そんな彼女に憧れる23歳の新人フォトグラファーのジェシー。2人の視点で内戦を描かれている。
NYに滞在していたリーとジェシーのジャーナリスト4人は、スクープとなる大統領に単独インタビューを撮るため、ホワイトハウスへと向かう。戦場と化した旅路を行く中で、様々な内戦の恐怖と狂気を体験することになり、リーとジェシーに少しずつ変化が生じはじめる。
そして、
ホワイトハウスに突入する…
ジェシーの愛機は1980年代の銀塩カメラ「NikonFE2」、リーはSONY α7Rに白レンズを使用。
また、リーという名前は、実在の戦場カメラマンであるリー・ミラーから取られているそうです。
『ヴォーグ』モデルから戦場カメラマンへと転身した、20世紀の写真史において特異な存在を放った女性写真家です。
こういう映画なのね
アクションと陰謀とかの映画化と思ったら、地獄の黙示録でもやりたかったのか。戦争の異常さ、狂気とpressという傍観者から自分も現実の一部ということを突き付けられていく展開だが、バックの音楽を含めなじめない。見る価値はない。
戦争の狂気と報道の使命という名の狂気
戦争そのものより記者たちの行動を追うことで却って映画に緊張感が出ているし、戦争の狂気・不条理を描いて訴えるものもある。
しかし内戦に至った背景はほとんど語られず(政府軍と独裁的な大統領に反旗を翻した独立州軍の戦いであって、民衆の姿はどこにもない)、終盤は大統領を狙っての殺人ハンティングの様相。中盤までに描いた兵士や個人レベルと、国家や反乱軍の正義の名のもとにある「狂気」を同じには括っては見ることはできなかった。
また、リーのラストも予想を裏切って欲しかったところ。
終盤、恩師の死を引きずってか戦場で足が前に出なくなったかのように描かれていたが、もともと臆病なたちであって、駆け出し写真家のジェシーが無鉄砲なだけなのかもしれない。
記者のジョエルやジェシーには生命の危機に瀕して「興奮」だの、「生きている実感」的なセリフがあったが、映画の中ではジャーナリストも報道の使命という名のある意味での「狂気」に突き動かされている。
自分を庇って死んだリーを放っておいてシャッターを切るジェシーも十分に「狂気」的であるが、恩師の死も、気にかけていたジェシーのことも頭から吹き飛ばし、最後の最後にリーが「狂気」を爆発させる様も見てみたかった。
ドンパチ映画と思いきや
アマプラで早速鑑賞。
やけに配信が早いなと訝りながら全く期待せず視聴開始。まず思ったのはキルステン・ダンストもいい感じで年齢を重ねたなあということ。ジャーナリスト役である。彼女に憧れる若い写真家(戦場カメラマンの卵?)、男性ジャーナリスト、老齢のジャーナリストの4名で訳あってホワイトハウスを車で目指す。
内戦状態の国内は死体が転がり、私刑が横行。かと思えば全く変わらぬ日常を送る街もあったりする(とはいえ、警戒は怠らない)。ここまでは完全にロードムービーなんだけど、途中から「あれ?なんかこの感じ、地獄の黙示録っぽい」と感じた。カオスの中を、とある目的のためにゆらゆら進む感じ。最後は敢えて書くまい。率直な感想は「観て良かった」。果たして日本でも内戦は起こりうるのかな?同じ国民同士で殺し合う虚しさといったら無い。
それは、今日起こるかもしれない
原題
Civil War
感想
109分、あなたが戦慄とともに体感するのは、世界最大国家の終焉。
もし今、アメリカが2つに分断され、内戦が起きたら
A24史上最大の製作費で送るディストピア・アクション
見応えありました。臨場感、没入感ありでした!
ショッキングなシーンで絶妙なBGMも好きでした。
ってか戦場カメラマンって凄すぎる…。
赤いメガネに出身地を聞かれるところは個人的には1番緊張感があり、恐ろしかったです。
市街地、ホワイトハウス突入はリアルでした。
終盤になる頃にはリーとジェシーの立場が逆転したように感じました。
最初はなにも出来ず泣いていたのに環境に順応した人間はこうも変わるのかと…。
※どういうアメリカ人だ?
※私を殺させるな
意味不明
アメリカで内戦ぼっ発、理由は語られないし、結局大統領は殺されカメラマンも死ぬ。
本国ではヒットしたらしいが、何が関心を引いたのか、理解しづらい。
これだけの騒動なら欧州はじめ世界が、ただ、傍観するわけはないだろうに何も描かれない。主人公は戦場カメラマンという訳でもなくただの地方祇記者とカメラマン、内乱の最中、命がけで大統領のインタビューと言うが、「何か一言」と尋ねるだけ、何故、他のメジャーなメディアが登場しないのかも不自然。結局、何が言いたくて作ったのか意味不明、リアリティの感じられない暴動映画でした。
描き切れてない対立構造
数々の報道賞を受賞した有能女性フォトジャーナリストが
米国東西内戦(?)の終結を追って仲間達と共に戦時下のニューヨーク(?)から
反乱軍が陥落させようとしてるワシントンDCを目指す物語。
なぜか悪者にされてる現政権や内戦の経緯の描写が不十分で
DCを目指すまでの過程が、唐突すぎる下らないエピソードの数々で辟易。
結果、軍より先にホワイトハウスに突入とかツッコミどころ満載。
そもそも新米フォトジャーナリスト志望お姉ちゃんのカメラがフィルムカメラって...
戦闘シーンなどのVFXもやや迫力不足。残念。
映画館で観なくて本当によかった
サブスク無料鑑賞で済ませられて何より。お金を払って観ていたら年内いっぱいは後悔していたと思う。戦場カメラマン志望の若い女性はなぜ終始Nikonのフィルムカメラを使用していたのか?しかも白黒フィルムで撮影。今どきの銀塩カメラ好き意識高い系女子戦場カメラマンってことなのか?キャパのような写真を撮るにはやっぱり白黒フィルムでないと、ということなのか?クライマックスのホワイトハウス突入で、周りの兵士たちの銃が弾切れ、リロードに苦労しているのに、この女性のカメラだけはどれだけ撮影してもフィルム切れにならない都合の良さ。呆れました。
お金は無駄にならなかったけど、時間はちゃんと無駄になりました。
もしもの話 さすがA24お金かかってる 86点
内容は内容なので面白くは無いとは失礼だが、恐ろしくかつ凄い映画だった。
特に赤メガネおじさん怖すぎやろ。イキリきってたおっさん撃たれて、めちゃめちゃざまあみろ!と思った自分が性格悪いなぁと思ったよ…
最後はブラックジョークで終わるのはさすがだなと。アメリカ映画。最後ニコニコ写真撮るなよ(笑)
主人公が女の子(新人記者)をかばうシーンは辛く、思わず涙が…あの時新人記者の女の子はどう思ったのか。「ラッキー!シャッターチャンス」と思ったのか…
自分の性格歪んでるな(笑)
米国の近未来内戦とそれを取材する新旧のジャーナリストを描き、とても興味深まった。
アレックス・ガーランド 脚本監督による2024年製作(109分/PG12)によるアメリカ映画。原題または英題:Civil War、配給:ハピネットファントム・スタジオ。劇場公開日:2024年10月4日。
米国大統領が何の敬意や躊躇いも受けずにブチ殺されたことには、物語とは言えかなりショックを感じさせられた。ただ、任期を超えて居座りFBIも解散させた独裁者ということだから、この結末も当然ということかもしれないが、裁判も無し?とは思った。
主人公がベテランと新人の女性ジャーナリスト二人(キルステン・ダンストとケイリー・スピーニー)というのは、上手い設定だと思った。ラストの役割交代劇も、予想通りとは言え、強く印象に残った。
あとやはり、香港生まれと聞いて問答無用に撃ち殺す人種差別者の赤いサングラスの男(ジェシー・プレモンス)は、イメージとしてのトランプ支持者を象徴している様で、強烈なインパクトを受けた。
東海岸のエスタブリシュメントへの反感は大と聞くので、カリフォルニアとテキサスが連合して、ワシントンに進軍してホワイトハウスを攻撃するというストーリーは、多少リアリティも有り、面白いと思った。ただ、一番の主題は内戦というよりも、戦争下のジャーナリズムにあった様に思えた。自分を庇って撃たれてしまうキルステン・ダンスの姿を、感情に支配されずスクープ映像として冷徹に撮りまくるケイリー・スピーニーの憑かれた様な姿こそが、メインテーマであると。
監督アレックス・ガーランド、製作アンドリュー・マクドナルド、 アロン・ライヒ 、グレゴリー・グッドマン、製作総指揮ティモ・アルジランダー 、エリーサ・アルバレス、脚本アレックス・ガーランド、撮影ロブ・ハーディ、美術キャティ・マクシー、衣装メーガン・カスパーリク、編集ジェイク・ロバーツ、音楽ベン・サリスベリー、 ジェフ・バーロウ。
キャスティング
フランシーヌ・メイズラー、リー・スミスキルステン・ダンスト、ジョエルワグネル・モウラ、ジェシー・カレンケイリー・スピーニー、サミースティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン、アニャソノヤ・ミズノ、大統領ニック・オファーマン、ジェシー・プレモンス、ネルソン・リー、エバン・ライ。
腑に落ちない映画
ジャーナリストを主軸に大統領のいるホワイトハウスまで最後のコメントを取ろうと、やっとの思いで辿り着く映画。
が、ラスボス大統領を射殺して最後は終わるのだが、
状況説明は一切無し。
何で内戦になったのか?発端は?
どのくらい経過?大統領が悪いのか?
ナレーションも何にも説明は劇中にない。
女の子を庇おうとして、撃たれて死亡。
死ぬ必要性がない。要らないでしょ。
後味が良くない。
おもしろかった! そして、つまらなかった!
面白かったのは何よりも第2次南北戦争というコンセプトだ。
現代のアメリカで内戦が発生して、アメリカがパレスチナのようになる。
先進国が戦場になる。
治安はなくなり、憎しみが吹き出し、凄惨な私刑が横行する。
実に惨たらしく、恐ろしく、心に迫る映像だ。
このシチュエーションを成立させるために、監督が採用したアイデアとは何か?
理由を説明しないこと!
なぜカリフォルニアとフロリダが合衆国に反旗を翻したのか?
全く説明されない。
内戦状態から話が始まり、物語が終わるまで、全体状況についての説明が一切ない。カメラで写していない地域のことが全くわからない。なんなら反旗を翻したカリフォルニアとフロリダの現状もわからない。アメリカが内戦状態に陥ったことで、諸外国がどんな反応を示しているかとか、世界経済がどうなっているかとか、全然さっぱりわからない。
正しい。
現代のアメリカが内戦に突入する可能性はゼロだ。
納得できる理由を作ろうとするとすればするほど、アメリカが内戦に陥るような世界を作り出そうとすればするほど、その新設定のせいで、映画の中の現実が、我々の生きている現実とは違うものになってしまう。
じゃあ、なにも説明しない。
アメリカが内戦状態に陥り、至るところで戦闘が始まり、多くの人間が殺されていく。
その映像を怒涛のように流すことで、否応なしに映画の現実を受け入れさせる。受け入れるしかない。
映画だからできるマジックである。
内戦は、分断されたアメリカの比喩だ。
19世紀の南北戦争と違うのは、別々の勢力が合衆国に戦いを挑んでいるところだ。戦っている人間ですら、自分が銃口を向けている敵が何者なのかわからない。撃たれるから撃ち返している。殺されそうだから殺している。どさくさ紛れに殺したいやつを殺している。
現実の反映があるから、映画の中に溢れる人間の悪意や狂気が心に迫ってくる。あの赤メガネだけではない。無関心な街にもだ。この部分だけで、この映画は十分に傑作になっている。
では、つまらなかったところはどこか?
説明が足りていないところだ。
面白かった理由と表裏一体なのだが、この作品、説明すべきことも省略している。A24らしさと言ってしまえばそうなのだが……。
いちばん象徴的なシーンが、主人公リーの死だ。
リーはなぜあそこで、ケイリーをかばったのか?
人間性の発露? 先輩としての責任感? 彼女を止められなかった後悔?
解釈が絞り込めないので、映画のクライマックスである一番キメのシーンを、ありがちで平凡なムーブで決められてしまったガッカリ感で見送ることになってしまう。
あのシーンのアイデアは実に素晴らしい!
戦場ジャーナリストは、仲間の死すら、写真におさめなければならない。
素晴らしいカットが目の前にある!
人の心など捨てて、シャッターを切り続けろ!
その絵の迫力に、ストーリーが負けている。
前ふりを積んでいけば、むちゃくちゃエモーショナルなシーンにできるのに、必要なお膳立てが足りないので、心が滑っていく。
なんでもいいんですよ。
リーはこの仕事を最後に故郷に戻って農場を継ぐつもりだったとか、ケイリーに対して、戦場に高揚を覚える戦場カメラマンは失格だ、と教え諭すけれどケイリーにはなかなか理解してもらえないでいたとか、もっと単純にケイリーは亡くした妹に似ているとか、なんでも。
そういう前振りの後で、リーが飛び出し、ケイリーをかばって死ぬ。
すると情感がこもる。
あそこでリーが飛び出す理由。
ケイリーをかばったことで失われたものの価値。
自分のせいでリーが死んだことに、ケイリーは何を思うのか?
その辺がさっぱりわからない。
想像で補おうにも、手掛かりが少なすぎる。
もったいない……、本当にもったいない……。
とはいえ、この作品は現代アメリカがパレスチナになるというアイデアが本当に素晴らしく、隣人だったはずの人間が隣人を殺しだすおぞましさを体感するのに大画面と大音響はぴったりでした。特に音!
馬鹿には難しい映画でした。
馬鹿には難しい映画で、モヤモヤが残りました。
以下、疑問が残った部分です。
・登場人物の行動への疑問①
「冬のワンダーランド」に向かう道で怪しさに気づいた時、サミーは引き返せって言ってた気がするけど進んだのはなぜ?戦闘が起きている場所ならいい写真が撮れるかもしれないから?
・登場人物の行動への疑問②
トニーの車にジェシーが乗り移ったあと。ハイになって爆走してたら武装勢力に運悪く遭遇しちゃったって事?
というかトニーのイカれたテンションが気持ち悪すぎてあの後から集中出来なかった。「最高にイケてる」じゃないんよ。アメリカ人こわい。
・登場人物の行動への疑問③
ホワイトハウスから出てきた専用車に大統領が乗ってないことにリーだけが気づくシーン。他の戦闘員たちは馬鹿なの?誰でも気づく手口じゃない?
・登場人物の行動への疑問④
大統領にインタビューした男性、あの人録音してたっけ。自分と周りの戦闘員だけ聞いてても意味無いのでは…
地獄の黙示録 ver.A24?
前情報を全然仕入れず鑑賞!
真面目な戦争映画かと思いきや、内戦に至った経緯や背景はノータッチ!
中盤の“ウィンターワンダーランド”のシーンからA24お得意のアトラクション映画に変身!
(後から知ったが、実際にあの場所あるらしい!)
特に中盤の赤グラサンに処刑されかけるシーンの緊張感が凄まじかった。
全編通して、銃撃戦の音響の迫力よ!ほんとに戦場にいるような恐ろしさ。
序盤の柱のに隠れながらの銃撃とラストの戦闘は是非音響のいい劇場で観たいところ!
そして主要キャスト4人、とてもいい。
あと後半、西軍?のキャンプ地の手前のシーンが、夕陽+川+ヘリ!地獄めぐり的な映画の構成も完全に『地獄の黙示録』意識してるなー。
惜しい点
・各場面はそれぞれ見応えがあったが、単発感というか、もう少し物語的な繋がりは出せなかったものか?主役の彼女いくらなんでも終盤で覚醒しすぎやないですかね。(そもそも戦場カメラマンってあんな最前線にいけるの?)
・見せ場は人間?社会派ドラマ?戦闘?戦場カメラマンの視点に終始してるから止むおえないが、直近で『地獄の黙示録』を見返してしまったので、若干食い足りない感。
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