シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
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何を象徴しているのか考えながら観れば…ただ疲れます
評価3.5というところなんですが、悩んで3にしました。
とびきり観賞後の満足感が高いというわけでもなかったので…。
アメリカ合衆国が政治的派閥により分断されてしまった世界で、ジャーナリスト数名のパーティーがワシントンDCを目指して旅する話です。
予告観ての予想では、もう少しエンタメよりなwell-madeな作品かと考えていたのですが、仮想のジャーナリズムというか、凄惨なシーンが主人公たちによって次々写真に納められていく…という表現です。
とにかく緊張感がすごいです。気が緩むシーンがほとんどないので正直疲れます。映画好きな人が観に行くのは良いのですが、ファミリーやらカップルやらがいくのはお勧めできません。
さて、ここからネタバレかつ鑑賞の仕方についてです。
こうしたスリル満点の映画において、見始めたとき、なぜ戦うヒーローではなくジャーナリストを主人公に設定したのか、そこから考え始めました。
この映画は今のままアメリカ国民を分断させ続けると、いずれこういう未来が現実になるという、アメリカ国民への警鐘として撮られていると思います。
すると監督もアメリカ国民なわけで、わかりやすい対立構造の中でヒーローが敵方を倒してしまったら、そのまま政治的主張ととらえられかねません。
そうしたことを避けるために、どこかの派閥が悪いのではなく、分断そのものが悪なのだということで、この設定になったのだろうと考えました。(話の構造上は分断を煽っている大統領が悪ということになっています)
この捉え方を皮切りに、それぞれの登場人物が何を象徴しているのか、順に考えていくと、最終的に以下のようになりました(すみません、名前を覚えるのが苦手で…鑑賞していただければ誰のことを指しているのかはすぐわかると思います。)
主人公…現状を憂えている中年層
浮かれ男…分断を面白がっている中年層
少女…現状に課題意識は持っているが、世の中のことをわかっていない若年層(あるいはこういう若年層が現れて欲しいという監督からの希望)
老ジャーナリスト…現状を変える気力も力も持たず、達観してしまっている老年層
あまりアメリカ国内の派閥と地理的関係性は詳しくないのですが、州ごとに細かく別れているはずです。が、複雑すぎると海外視聴者がついていけなくなるので、大雑把に、西海岸(リベラル・裕福)、東海岸(保守・エリート)、中央(労働者・貧困)位の分け方にしているんだと思います。
つまりこの映画の舞台設定は、自らが当選し権力を握るために対立を煽る大統領と、富裕層の対立の間で、周りから与えられる力に翻弄され不満を蓄積させている労働者・貧困層の目で分断の状況をつぶさに観て回る、という構図なのです。
旅の途中、牧場のようなところでライフル射撃に逢い、対立している一方と会話するシーンがあるのですが、相手方は倒した後まで全く姿が見えません。他に主人公一行皆殺しの瀬戸際に立たされる場面もありますが、暴漢が何にどうして怒っているのか全くわかりません(劇中の主人公達にも理解できません)。これはつまり、今の分断・対立構造はお互い相手の何がいけないのか、何に怒っているのか当事者でも理解していないということのメタファーだと思います。
最初は好奇心だけで着いてきた少女は、こうした過酷な旅を経て成長していきます。DCでは流れ弾に当たるリスクをも恐れず、兵士に混ざって射線上に立ちながらカメラに収めていきます。
これは結局、(劇中でWFが大統領を殺害して解決したのではなく)分断を解決し、状況を打開するのは意識ある若年層しかいないという監督からのエールだと捉えました。
クライマックスで出過ぎた少女を庇って主人公は撃たれます。映像的には、調子に乗りすぎると痛い目に遭うぞ、と警告しているようにも見えますが、ここまでの全体像から俯瞰すると、希望であるこうした若年層をそれ以外の年代の人々が命がけで守っていかなければならない、というメッセージではないでしょうか。
総括です。
ヒーローがドンパチやって生き延びるアクションものを期待すると完全に裏切られます。また、映像そのものから鑑賞者が全ての情報を得られることを期待するような見方をする向きには、説明不足な作品だと思います。
捉え方は色々だと思いますが、私のような視点で解釈しながら観るのが一番スッキリするのではないかと…。結局武力による対立は映像上のメタファーでしかないので、精神的なものであれ、こうした分断分裂が起きるというのは、どの国でも考えられうる話かなと思います。日本でも徐々に中流層がなくなり分断されつつありますので、さらに先の未来として、こんなことにならないようにしなければ、と考えさせられる映画ではありました。
意味がわかってなくても人は殺し合える?
予告編に興味がそそられたが結論としては題材は面白そうなのに意味不明のオンパレードで残念な内容
内戦に至った理由描写や説明がなく、わかる施策でいうとプーチンの揶揄?なのか大統領が3期務めてたりとかFBI解散させたとか
説明がないからなぜなのかよくわからないけどそんなことで内戦しないでしょ
なんで保守のテキサスとリベラルのカリフォルニアが手を組んでるのかもわからない
とにかく説明がないから理解しようとしてもよくわからない
道中のガソリンスタンドで吊るされてるおじさんとか誰と戦ってるのかよくわからないスナイパーや山賊みたいな赤メガネとか
関わらないように努めていれば表面上は平和ですったって暴徒はそれでもやってくるのに
結果、内容もありそうでないし、誰目線で何を描きたいのかわからない
なぜ内戦が起きているのかわからない以上、人にあてるしかないんだろうけど野良ブン屋のロードムービーなのか、日中にネガを広げちゃうヒヨッコカメラマンのサクセスストーリーなのか、ヒヨッコを守るために冷静なジャーナリストが死ぬ話なのか何がなんだかさっぱり
サザンの曲の歌詞に「カメラがあれば覗きも仕事と呼べる」とは良く言ったもの
しかし、なんでヒヨッコはフィルム式なんか使ってるんだ?意味不明
ジャーナリストなんてただの野次馬が野次馬で飯を食ってるだけの崇高な生き物じゃないっていうことを言いたいだけだったのだろうか?
当然どっちのアメリカ人だ?はブン屋も同じでこの人たちが書くものもプロパガンダになるからどっち側について原稿書くんだ?という意味もあるだろうし
アメリカ人同士がイデオロギーもよくわからないのに憎悪でもって殺し合ってますよってことなのかもしれないけど、グロを撮りたいだけならセンスないなあと思った
戦場カメラマンの意義は伝わるが
アメリカ社会が孕む狂気と、幻想の平静
米国内で起こった国を二分する内戦を描いた作品であり、近年叫ばれる「分断」というキーワードがおのずと浮かび上がる。しかし、この映画からは「分断」以前の、アメリカ社会の根底にある底しれぬ狂気が見え隠れする。
アメリカは、なにより自由と権利を大切にする社会だ。Youtubeにはアメリカ警察が犯罪者を取りしまるボディカムの映像が多数公開されているのだが、富裕層から貧困層まで、実に多くの人が犯罪取締に自らの権利を盾に立ち向かう様子が見られる。
アメリカ市民(=civilian)の権利のなかには、銃器で武装し自衛する、という権利も含まれる。事実、人口3億3000万人以上の数の銃器がアメリカで正規に登録され、所持されているという。真っ当な市民であれ、極端な人種差別主義者であれ、等しく武装し自衛する権利を持つのが、アメリカ社会の特異な点と言える。
この映画には、おそらく州兵とみられる反乱軍兵士のほか、武装市民が多く登場する。ミリタリー好き的な視線で戦闘シーンを観ると、「そんな風にヘリは編隊飛行しない」とか、「兵士の分隊行動がまるで素人」といったいちゃもんを付けたくなるのだが、そこは映画の核心ではないので、ハリウッド映画のご都合ということでいいと思う。
映画全体としては、ジャーナリストである主人公たちが、合衆国大統領への単独インタビューを敢行するために首都ワシントンDCを目指すロードムービー的な流れで、近年の戦争映画にありがちな過剰演出されたドンパチの戦闘描写は一部に限られる。むしろ、主人公たちが道中出くわす人々が引き起こす事件を通して、主人公たちの心の変様に丁寧にスポットを当てることで、アメリカ社会に潜む狂気をじわりとあぶり出すような描き方がなされている。
映画の中で登場する、その狂気じみた人々は、小学校の同級生だった人を「泥棒をしようとした」としてリンチして吊り下げたり、アジア人だから、というだけの理由で躊躇なく虐殺したり、またある街の人々は「内戦には関わらなければいい」と言いつつ、遠くからスナイパーライフルで主人公たちに銃口を向ける。そのどの人物も、ガソリンスタンドの単なる店員や農場主や、アパレルショップの店員という「平静」なふるまいと、銃で武装し、時には理不尽に人に暴力を加えて死に至らしめる「異常さ」を併せ持っている。
平時のアメリカでは法の支配の下に「平静」が社会を成り立たせているが、ひとたび内戦にでもなろうものなら、「異常さ」が逆転して表出する。この危うい2面性こそが、この映画における狂気の正体だ。
作中、あるシーンで主人公たちは森林火災のなかを車で走り抜ける。カメラは、燃え盛る狂気的な炎と、幻想的に舞い上がる火の粉を交互に映す。銃弾を受け、息も絶え絶えなひとりは、その光景を笑みを浮かべ、光悦とした表情で見つめる。その異様とも言える光景が、本作のテーマを示すもっとも象徴的なシーンだ。
鑑賞後の素直な感想としては、「やっぱりアメリカとは仲良くできないかなぁ」というものだった。日本にももちろん、理性的な普通人から根っからのワルまでピンキリの人が社会に存在し、それはアメリカと違いはない。しかし、アメリカではその振り幅が極端に広く、善と悪の人口分布も日本よりずっとフラットだ。
倫理観も思想も信条も、多様であっていい。自由で多様な社会はしかし、極端な格差と過剰な権利主張を伴って分断を生み、ややもすれば自分とは異なる思想の他者を排除したり、暴力を生んだりする危うさをも孕む。この映画はそんなことを伝えようとしたいのではないか。
他の終末ものとは一味違う、荒廃した国土のロードムービー
内戦により荒廃した国土を縦断するロードムービーは、絶妙なバランスで進行していく。
何よりそれは、「戦場メディア」の視点だから。
彼らは武器を持たず、自分を襲う民兵たちに抗う手段を基本的にもたない。相手を攻撃したり、殺すという選択肢は無い。
また、銃撃の中でも、報道人であるがゆえに、少なくとも表向きは攻撃を受けないという体になっている。
終末もの映画の中で、主人公が人間やゾンビを倒しまくる場面に慣れてしまっているのでそれだけでも新鮮。
重たい音楽と、まるでドキュメンタリーのような戦場のシーン、ほぼすっぴんで表情を見せるリーは映画に説得力を与える。
ロードムービーから一転、ラストのワシントンDCの銃撃戦は緊張感が高まる。
大統領を問答無用で射殺するのも
ラスボスが逃げたり、死んだと思ったら生きていたりなんていう、B映画とは一線を画す。
星0.5マイナスなのは、ラストのリーの死のためのきっかけでしかない、彼女の飛び出しが見え見えなので。。。
リアルさもう一つ
記者目線でのストーリー展開ではありますが、一般市民が戦争に巻き込まれた現代をしっかりと映像化しています。
違和感を感じたのは、容赦ない残虐性がこんなにまで短期間で現代のアメリカ軍に蔓延するのかな?平気で市民を虐殺したり、理不尽な殺害を感情もなく行えたりって文明社会の元たるアメリカの軍人がそんなに傍若無人にできるものなのかな?って感じました。
だとしたらそこに至る内戦の経緯を見せて欲しかったです。2時間足らずの上映時間で表現するのは厳しいストーリーですよ。
こんなことが起きたからこんな戦争が始まったという説得力に欠けたままストーリーが進んでいき、結局足手まといの若いジャーナリストで主人公に面倒をかけ、しまいには命まで、、。
全体的なストーリーや表現は見ていて飽きないしドキドキして鑑賞できました。
でもちょっとモヤモヤと軽はずみな行動でのストレスが残ってしまったかな?
やっぱり映画館で観るべき映画
屋外でフィルムの現像がやれる?
映画が始まった時点でアメリカは内戦中。ちょっとビックリ。何が原因で戦争になったんだろう?どちらが正義なのか分からないが、テキサスとカリフォルニアの西部同盟がアメリカ政府を追い込んでいる。ニューヨークの街中でも争いが起きていて、女カメラマンのリーが戦場カメラマンに憧れる女の子ジェシーを助ける。この子、可愛くて中学生くらいかと思ったら23歳だった。持ってるカメラはNikon、あら、デジタルじゃなくてモノクロフィルム。これ未来の話か?
その後リー達ジャーナリストは大統領の取材をする為にジェシーを連れてニューヨークからワシントンに車で向かう。その途中途中で起きる銃撃戦。敵でも味方でもないのに命の危険にさらされる皆んな。兵士のぶつかり合いなら分かるけど、何でなんだろうね。仕事として写真を撮りまくってはいるんだけど、今時モノクロフィルムだなんて不適切じゃね?とにかく危険なシーンの連続でずっとハラハラ。次から次へ死んでしまう仲間達、後半結構悲しかった。最後なんてまさかリーが。こんな不幸が起こるのは良くないと、大統領選挙前のアメリカ人に内戦禁止の意向じゃないかな。
予想してたよりドキドキウルウルして楽しめました。
とても日本人には理解不能かも
これは分断が極端に進んでいるアメリカ人と中国人しか理解できないんじゃないかなぁ。でも銃の恐怖と、多人種はアメリカだけかな。
ラストはちょっとオチを付けるため無理クリっぽい展開で、リーのジャーナリスト魂をジェシーが受け継いだ事を見せたかったのだろうけど、一緒に死線を乗り越えてきた仲間に一暼もせず特ダネを取りに行くのはちょっと、感動できなかった。
ジェシーの存在がリアルさを打ち消していた。いない方が物語が締まったんじゃないかな。
リアルさで言うと暗いところであんなにクイックに撮影できないんじゃないかな。フィルムは装填しなきゃならないし、カメラ一台だけってのもファンタジーかな。
思い込みって…
思い込み その①
作品紹介から、近未来のSF戦争映画と勝手に
思い込んでいた。
それだけで面白そうと、レビューも見ずに
チケット購入。
観てびっくり、SFじゃなかった
思い込みその②
チケットの購入、いつもようにインターネットで購入。席もいつもの席。
前日に行く用意をしていたところ、チケット購入完了メール来ていないことが判明。イオンはこの完了メールがないと、映画館に入れない。会員カードではダメ。
サイトを確認したところ、完了メールのアドレスが変更になり、メールが届かない事があると記載。
当日窓口で確認してもらえば良いと思い、いざ映画館へ。窓口で手間がかかると思い、7:30に家を出発。色々と調べてもらったら、なんと購入していなかった。最後のボタンをポチしなかったのでしょう
そのため、当日購入。いつもの席は取れず
隣の隣にした。
8:25から93席のキャパ
びっくり仰天、9割程入っていた。
いつもなら、朝イチの洋画は10人以下なのに
なぜこんなに混んでいるのだろう。
内容は迫力があり、中東の戦争ではなく、
アメリカ国内の戦争だが、きっと実際もこんな感じなのではと思った。
ロードムービーみたいな感じで
良い作品なんだろうけど、自分の好みではなかった
帰り際、いつもの席を購入された方、寝ていたのでびっくりした。
150年前の日本の明治維新を重ねて。
原題「SIVIL WOR」は、「民間人による、闘い」。で、そのタイトル通りの、フリージャーナリストという私人と、内戦を描いた作品。副題の「アメリカ最後の日」は、ドンパチ推しのキャッチコピー。
内戦を描いた本作品、おのずと日本の明治維新と重ねながら、鑑賞していました。
「どのアメリカ人か?」の問いに、テキサスとか、フロリダとか、応えるところは、アメリカに疎いので理解が追いつかず。たぶん、幕末に置き換えると、薩摩、長州、会津、みたいなことなのかと。(こういうところは、日本映画の『侍タイムスリッパー』は、しっかり楽しめますね)
ワシントンD.C.は、戦火で壊滅し、大統領は命乞いで腰抜け。
日本の歴史に置き換えると、日本のリーダー、最近では、昭和天皇も、政権交代では、命の覚悟を決めたことや、江戸城の無血開城は、本当に、大英断だと感じました。
映画によって、明治維新や、日本映画の良さ(細かい事情まで理解できる面白さ)を再認識できたので、星5つです。
ラストカットからエンドロールへの、モノクロ写真が現像されてゆくカットは、秀逸でした。
赤サングラスのヤバい奴はキルスティンの旦那さん(笑)
予告編とは全く違った映画。。。いや、それはそれで面白いのですが。
ニューヨークからワシントンDCまでの若手女性カメラマンの成長譚でもある文字通りのロードムービーでした。久々にキルスティン・ダンストを観ましたが、ベテランカメラマンの彼女がケイリー・スピーニー演じる若手カメラマンジェシーの師となるわけです。NYからDCまでは本来300数十キロですが、安全な地帯を遠回りするために1500キロ以上にもなる旅です。道中でいろいろな体験をし、危険な目にもあうジェシーですが、着実に成長していく様はまさにロードムービーでした。
話は変わりますが、道中で出会う赤サングラスのやばい軍人(ジェシー・プレモンス)はキルスティンの夫らしいです。
アメリカ内戦でなくても良くない?
アクション映画ではなくロードムービーか
「今のアメリカ」でしか撮れない映画
架空でも濁しても無い現実の国が舞台で、テロリストでも思想犯でも無い、ましてやサイコパスでも無い自国の国民が、自国の大統領をあっさり射殺するシーンがクライマックスとなり、それをあたかも"めでたしめでたし"的な演出でエンディングを迎える映画を、大掛かりに撮影し、一般公開する。
そんな事が出来る国がどれだけ有ろうか!
おそらく我が国でも無理、エンタメ界隈で追い抜かれた韓国でも無理であろう、北朝鮮や中国であれば制作前に全員投獄or死刑…
こういうエンタメ界での懐の深さを見せられてしまうと、アメリカ映画界が世界の頂点である…と改めて認めざるおえない。
劇中、国の分断を煽った大統領は当然"あの方"がモデルなのであろうが、そんな大統領を射殺するのが"黒人女性"というのも皮肉たっぷり…
ハンヴィーを登場させるというのはどうかな?
悪くはないが、期待したのとは違ったかな
アメリカの内部分断による内戦勃発というタイムリーな設定に惹かれ、公開初日に鑑賞してきました。期待してIMAXで鑑賞しましたが、映像的には通常スクリーンでもよかったかなという印象です。
ストーリーは、アメリカ連邦政府からいくつもの州が離脱し、テキサス州とカリフォルニア州が同盟を結び、西部勢力として政府軍との間で内戦を繰り広げ、ワシントンD.C.陥落を目前に控える中、大統領の単独インタビューを行うためにホワイトハウスを目ざす、戦場カメラマン・リーを始めとする4人のジャーナリストの姿を描くというもの。
人種のるつぼと言われるアメリカで、主義や思想の異なる人々が激しく対立する内戦を通して、現在のアメリカが抱える問題を浮き彫りするような展開を予想して鑑賞しました。テーマそのものはそれに近いものを感じますが、その描かれ方は予想とは大きく異なりました。もっと大規模な内戦シーン、互いの主張をぶつけ合うシーンを描き、そこに絶対的な正義など存在せず、残るのは虚しさだけ…みたいな感じを期待していたのですが、実際にはもっと地味な感じで展開します。
物語の大半は、降伏寸前の現政府大統領のインタビュー敢行を目ざすジャーナリストと戦場カメラマンのロードムービーといった感じです。最前線の激戦地を目ざす道中であるため、徐々に戦場の激しさと危険度が増す中、若い女性カメラマン・ジェシーがしだいに覚悟を決め、いっぱしの戦場カメラマンとして成長していく過程をうまく描いています。と同時に、各地で出会う人々の生きざまに、国内分断の受け止め方の違いがよく表れています。中でも、過激な行動に出る人々の姿を見ると、現実もこの一歩手前ぐらいにあるのではないかと恐怖を感じます。
また、クライマックスの大統領官邸への突入は、ヒリヒリするような緊迫感で描かれ、なかなか見応えがあります。実際に無防備なジャーナリストが最前兵に同行できるのかは疑問ですが、そこでしか撮れない瞬間があるのは確かだし、その写真に大きな説得力が生まれるのも頷けます。ラストは、リーの言葉を受けた、ジェシーの非情なジャーナリズムが印象的で、本作の軸足はむしろこちらにあったかのような印象を受けます。
こんな感じで、見応えがないわけではないですが、期待とは異なり、終盤にさしかかるまではわりと退屈な印象を受けます。特に、ジェシーの行動を看過できず、彼女さえいなければ…と思えてしまうことが多く、なかなか共感しにくいです。そのため、期待したようなアメリカが抱える分断問題の描き方がかなり薄い印象になっているような気がします。かといって、リーたち4人のジャーナリズムが深く描かれているかというと、そちらもやや中途半端だったように感じます。そう感じたのも、ミスリードを誘うような予告のせいかもしれません。なんの予備情報ももたずに鑑賞すれば、もっと楽しめたような気がします。
主演はキルステン・ダンストで、ベテラン戦場カメラマンとしての貫禄十分な演技が光ります。脇を固めるのは、ワグネル・モウラ、スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン、ケイリー・スピーニー、ソノヤ・ミズノ、ニック・オファーマン、ジェシー・プレモンスら。中でも、ジェシー・プレモンスが印象的で、彼の登場シーンはとてつもない恐怖を感じます。
劇場で事前に流された予告編は観客をミスリードするため恣意的に切り取られたもの
絶望と恐怖の未来を追体験
ありえない架空の物語かもしれないが、本作を観て現在の分断されたアメリカを想起する人は多いのではないだろうか。トランプ政権時代の排他的な移民政策や、一部の支持者たちによる議事堂襲撃事件等、これまでには考えられないようなことが次々と起こり、今やアメリカは混沌とした時代に突入している。その先には、ひょっとしたらこうした絶望的な未来が待ち受けてるかもしれない。そんな作り手側のメッセージが感じられた。
映画は、女性カメラマン、リーの目を通して死屍累々とした戦場を掻い潜る追体験ドラマとなっている。
全編に渡って息詰まるような緊張感が持続し、サバイバル・ムービーとしてとても面白く観ることが出来た。
監督、脚本はアレックス・ガーランド。謎のウィルスが蔓延したロンドンを舞台にしたSFパニック映画「28日後…」の脚本で注目され、その後「エクス・マキナ」や「MEN 同じ顔の男たち」といった問題作で監督業にも進出している鬼才である。
これまでの作品同様、いわゆる通俗的なエンタメ作品とは一線を画した風刺性、問題提起を優先させた作りになっており、観終わった後には色々と考えさせられた。
演出手腕も近年冴えわたっており、緊迫したトーンの創出や臨場感溢れるシーン作りに並々ならぬ力量を感じる。
とりわけ、赤いサングラスをかけた軍人との対峙にはゾクゾクするような興奮が味わえた。
また、無人のシュールな街並みや、銃弾がどこから飛んでくるか分からないスリリングな空間作りには「28日後…」を連想させられたりもした。
リーをはじめとした主要4人の個性あふれる造形も物語を飽きなく見せている。
特に、リーを師事する見習いカメラマン、ジェシーのキャラは出色である。彼女が旅に加わることで疑似家族愛、友情のような趣が生まれ、終盤にかけて物語は上手く盛り上げられている。
一方で、本作で少し物足りないと思ったことも幾つかある。
一つは、ジェシーがカメラマンになりたいと思った動機である。父から譲り受けたカメラを使用していることから、おそらく彼の影響から始まったカメラ好きなのだろうが、年端も行かない少女が危険な戦場に足を踏み入れるというのは、やはり普通に考えてどうしてもありえない話に思えてしまう。そこに説得力を持たせるためにも、報道カメラマンという職業に対する彼女の強い思いを打ち出すような場面がどこかで欲しかった。
もう一つは、彼女が終盤にかけて徐々に自分自身を見失い暴走していく…という展開である。おそらく凄惨な現場に次々と遭遇するうちに彼女は狂気に飲み込まれてしまったのだろう。ここをもっと鬼気迫る演出で筆致して欲しかった。そうすれば、彼女の成長ドラマとして更に見応えのある作品になったかもしれない。
そんなジェシーを演じたケイリー・スピーニーは、徐々にプロのカメラマンらしい引き締まった表情に変化していくあたりは見事だった。先日観た「エイリアン:ロムルス」でもハードなアクションシーンに挑戦していたし、ただの可愛いだけではない、芯の強さを持った本格的な女優に今後成長していくかもしれない。
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