劇場公開日 2025年5月16日

「ホラータッチな演出に引き込まれる」ガール・ウィズ・ニードル ありのさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ホラータッチな演出に引き込まれる

2025年7月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

驚く

 20世紀前半にデンマークで実際に起こった事件に着想を得て創り上げた作品ということである。かつて日本でも”間引き”という風習があったが、それを連想させる話だと思った。こういう話はきっとどこの国にでもあるのだろう。
 観終わって何ともビターな鑑賞感が残ったが、事件を伝えようという製作サイドの意気込みは強く感じられた。

 ダウマのやっていることは明らかに違法行為である。そればかりか、後半で明らかにされるが、その行為は人道に反するものである。まるで鬼か悪魔か。終盤で見せる開き直りとも言える彼女の態度に戦慄を覚えた。

 ただ一方で、当時の社会状況を鑑みれば”汚れ仕事”をやらされている…という見方も出来る。先述した”間引き”にしても、当時の人々は生きるためにやむを得ずしていたわけで、自分はダウマを一方的に糾弾するという気にはなれなかった。

 実際、彼女は本作の主人公カロリーナに救いの手を差し伸べたわけで、人間らしい心を失くしたわけではないように思う。
 二人の出会いは公衆浴場。絶望に打ちひしがれ傷ついたカロリーナを見て、ダウマは理由も聞かずに介抱してやる。そして、住むところを失った彼女を家に招き入れて面倒を見てやる。後になって、ダウマ自身、悲劇の過去を持っていたことが分かるが、それを知ると彼女はカロリーナとの共同生活に安らぎを求めていたのかもしれない。あるいは、男尊女卑的な社会に対する女性の連帯という見方もできる。

 一方のカロリーナは出征した夫と再会を果たすが、時すでに遅し。別の男の赤ん坊を身ごもっており、元の幸せな暮らしには戻れない。そして、我が子を委ねたという複雑な感情はあるものの、孤独な者同士、ダウマと親密な関係を築いていく。年齢差を考えれば、あるいは疑似母子のような関係にも見えた。

 こうして二人の共同生活は始まるが、しかしこの安然の時間はそう長く続かない。当然のことながら、ダウマのやっていることは法律的には違法であり、その罪からは決して逃れることはできないからである。それはカロリーナも同じことで、我が子を捨てた罪は一生ついて回るものであり決して消せるものではない。

 鑑賞後に知ったが、主人公カロリーナは映画独自のキャラクターということである。彼女は事件の被害者であると同時に共犯者でもある。ダウマの犯罪を間近で目撃するキャラであり、観客は自ずと彼女の目を通して一連の経緯を知ることとなる。この構成が中々秀逸で、事件の裏側を覗き見するような、そんな感覚で物語を追いかけることが出来た。

 映像はダークなモノクロで統一されており、画面全体が不穏なトーンに覆われている。複数の顔がモンタージュされる奇怪なオープニングシーンに始まり、瞳の強烈なクローズアップ、シャープな照明効果等が不気味さを煽り、ほとんどホラー映画のような禍々しさが作品全体に蔓延している。

 加えて、映像に合わさる音楽も不快感、不穏さを募り、観てて非常に神経が逆なでされる。

 本作は決してホラー映画ではないのだが、ある意味で極めてホラー映画然とした演出が徹底されており、それが一種独特な作風に繋がっているように思った。

 ちなみに、ドラマ的には名匠マイク・リー監督の「ヴェラ・ドレイク」を連想したりもした。これは秘密裏に堕胎手術を引き受ける主婦の数奇な運命を描いた作品であるが、本作のダウマに通じるような所がある。
 ただ、社会背景、宗教観、信条という点ではかなり異なる部分もある。また、どちらもシビアなラストを迎えるが、本作は少しだけ光明を見出せるようなエピローグが追加されており、そこは救いであった。

ありの
ノーキッキングさんのコメント
2025年7月5日

ラストが理解し難い。 子ども引き取るって、いつそんな余裕ができたのか!いい服着ちゃって。

ノーキッキング