「「あんな悲惨な時代だったから仕方がない」で済ませてしまって良いのだろうか?」ガール・ウィズ・ニードル tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「あんな悲惨な時代だったから仕方がない」で済ませてしまって良いのだろうか?
最初の頃は、誰が主人公で、どんな話なのかがよく分からない。
やがて、勤め先の御曹司の子供を身籠り、戦争から傷痍軍人として帰還した夫に「出て行け」と言い放つ女性が、主人公であると分かるのだが、余りに自己中心的な振る舞いのせいで、中々感情移入することができない。
案の定、御曹司から捨てられた主人公が、サーカスの見世物になっている夫とよりを戻し、出産した子供を養子の仲介者に託すところで、ようやく、どんな話なのかが分かってくるのだが、ここまで、プロローグとしては長過ぎるのて、もう少しテンポ良く描けなかったものかと思ってしまった。
物語のポイントとなる養子の仲介にしても、「闇」でやっていて、しかも、子供を預ける側から手数料を徴収している時点で、その実態が容易に想像できてしまい、それが明らかになっても、さほど驚きを感じなかった。
ここでも、案の定、悪事がバレて、乳児たちを殺めた犯人は逮捕され、裁判にかけられるのだが、その一方で、主人公に何のお咎めもないことには、どこか釈然としないものを感じざるを得ない。
例え、知らなかったとは言え、主人公は、乳児の殺人に明確に関与していた訳だし、麻酔薬のせいで意識が朦朧としていたのだとしても、主犯の女性と共に、1人の乳児を死に至らしめたのも確かなのである。
「子供は宝だから絶対に手放すな」と言っていた主人公の夫が、終盤、子供を手放したことを「それが一番だ」と言ったことにも、今一つ納得することができず、ここは、身勝手な主人公を非難するような一言があっても良かったのではないかと思ってしまった。
悲惨な物語の末に、主人公が、同居していた少女を養子として引き取るラストからは、仄かな希望が感じられて後味は良いのだが、その一方で、「あんな時代だから仕方がなかった」という理屈で、主人公のすべてが許されてしまったかのようにもなっており、「本当に、それでいいの?」という疑問も残った。
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