「期待度◎鑑賞後の満足度◎ 胸糞悪いけれどもここまで突き抜けてくれたら却って爽快。コメディ映画とモンスター映画の新たな融合といえる傑作。」サブスタンス もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 胸糞悪いけれどもここまで突き抜けてくれたら却って爽快。コメディ映画とモンスター映画の新たな融合といえる傑作。
①“物質文明”のくだらなさとそれにふりまわされる現代人の愚かさを見事に映像化。
②『ベイビー・ガール』での顔面が硬直するくらい顔をいじり倒しても美しさに固執するニコール・キッドマンに比べると、本作で顔の皺や身体の弛みをさらけ出しているデミー・ムーアに(80年代の青春スター時代を知っているだけに)開き直った女優のガッツを感じたが、まさかここまでやるとは思わなかった。
“若さ”と“(表面的な)美”という精神的なものから程遠いものに幻惑される人間の行き着くところを皮肉たっぷりに熱演。
③始終クスクスさせられたりニヤニヤさせられたり笑わせてくれたから本質的にはコメディだと思う。
クローネンパーグが入っているように思うが(『ザ・フライ』のパロディ?オマージュ?)、最後までユーモアとアイロニーとを忘れなかったところが独特か。
④どこまで行くね?と思っていたら、クライマックスのショーでの壮大な流血(というか吐血?)シャワーシーンは『キャリー』(1976年版)のクライマックスの体育館の放水シーン(というかこれもパロディ?オマージュ?)以来の壮大さというか爽快さ。
⑤最終形態は人間の押さえきれなかった物欲を具現化したもの(モンスター)だと思うけれど、女性監督だけに“美”と“若さ”に執着する現代女性の愚かさと哀しさとを痛烈に皮肉ると同時に、それを助長する男達や大衆の罪もやんわりと皮肉たっぷりに描く。(最終形態の時、ぶったぎられた頭?の後から生えてきたのが“乳房”であったところでも痛烈な皮肉)
最近、なにかいうと「劣化」「劣化」とSNSで揶揄するけれども、年取ったら劣化するの当たり前じゃない、そこの貴方・貴女、あなた達もいずれ劣化するんだから其の時に「劣化」なんて言われたらどう思う?ちなみに私は食べ物以外は何も顔やお肌の手入れはしていませんが、遺伝のせいか65歳という現代の年齢より結構若く見られます。いずれある年齢に来たら急に老けるでしょうけど…
また、フランスの監督だけあってアメリカの物質文化を皮肉っぽい目でやんわりと描いている。もちろん、物質文明の弊害はいまやアメリカだけではないけれども。
しかし、若い頃は私も21世紀の世界はもう少し物質文化・消費文化から進歩すると根拠なく思っていたけれども人間の欲望や愚かさはいつまで経っても変わらないことを実感。
⑥注射嫌い、清潔好き、血嫌い、虫嫌い、手術シーン苦手等々の人にはおぞけをふるう描写がふんだんに挿入されるけれども、スタイリッシュな映像と演出であまり気にならない。
まあ、私は注射は嫌いでもなく怖くもないし、少し汚れているくらいが快適に感じるし、血には慣れたし、虫は好きなのでスタートラインが既に違うんでしょうけど。
⑦クライマックスでヒロインに向かって「モンスター」と叫んだ観客(大衆)に対して、あなたたちこそ「モンスター」だと叫びそうになったわ。
⑦スー役の女優さん、どこかで観たと思ったら『哀れなるもの』『憐れみの三章』に出ていたアンディ・マクダニウェルの娘さん。彼女もアカデミー賞助演女優賞にノミネートされてもおかしくない熱演。
⑧“substance”は色んな意味を持った単語だけれども、本作のテーマやディテールがどの意味にも当てはまりそうで、中々奥深い題名。
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