劇場公開日 2025年2月28日

「底辺層の人々へのエール」ANORA アノーラ じゅんぢさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5底辺層の人々へのエール

2025年3月9日
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鑑賞方法:映画館

アカデミー作品賞を取った映画だからと身構えて観るとたかが外れる。風俗嬢と富豪のバカ息子のから騒ぎを描いたおバカコメディですから。
風俗嬢だけど実は過去に××〇があって身を粉にして働いているとか、バカ息子に見えて実は小説家とか役者になりたい夢があるとか、そんなのは一切なし。
風俗嬢はよくある家庭環境の問題からなっただけで教養もしつけない女性。バカ息子はただ遊びたいだけの本物のバカ。だからこの映画のカップルはまさにバカップル。
お金とセックスのために生きてるだけ。
だけどだけど、これがこの映画の要で良いんですね。
彼らは偽りのない本音の生き方。
もしお金とセックスが不自由なく手に入れられたら、毎日朝から晩までベッドの上でセックスして疲れたら寝て、セックスに飽きたらテレビゲームする。
そんな裏のない生き様を長々と描くから、観る人によっては冗長と感じてしまうだろう。
でもそんな人生甘くないのが後半のテーマとなる。必死に抗うアローラの人間性が爆発しまくり、それが何とも言えないチャーミングさを感じさせてしまう。これが映画マジックだろう。
監督のショーン・ベイカーは60〜70年代の東映映画のエロ・グロ・ナンセンス映画が大好きらしいが、アノーラにはその影響が強く出てますね。それはかつて日本映画が得意としていた底辺層への人間讃歌でもあり、この映画が愛される理由だと思う。
世間からゴミ扱いされる人間だって一生懸命生きてるんだ!

じゅんぢ