「月は出ているか?」フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
月は出ているか?
アポロ計画
冷戦下の1957年にスプートニクの
打ち上げに成功したソ連に
宇宙開発を先んじられたアメリカは
1960年代に人類を月へ送り出す
計画で大逆転を狙った計画
1969年にアポロ11号が月に降りたち
その計画は成功とともに
「一人の人間の小さな一歩だが
人類にとって大きな飛躍である」
人類史における
科学の進歩における偉業となった
今年でちょうど55周年である
たびたび映画になるこのテーマ
最近だとアポロ11号の船長
ニール・アームストロングを
主人公にしたディミアン・チャゼル
監督の「ファースト・マン」
もあった(これもいい映画)
自分も宇宙開発ものの
映画は大好きでロン・ハワード監督
「アポロ13」のED聞いただけで
条件反射で号泣できるくらい
今作はその中でも
計画の「広報」という部分から
長年言われてきたある種の「陰謀論」
を題材に取り扱ったがどうだったか
大変面白かった
最初は陰謀論寄りのアポロ計画を
小ばかにするような話なのかなぁとすら
思ったが全然そんなことはなく
「もう絶対に失敗できない」という
様々な人々の気持ちと思えば
本当に偉業を成し遂げたんだなと
改めて思わされるものでした
1960年代のアメリカは
天へ向かって宇宙開発も行っては
いたものの地上ではベトナム戦争も
やっており世論は揺れている中
アポロ計画も失敗の連続
アポロ1号では配線のトラブルから
訓練中に宇宙船内で火災が発生
3名の宇宙飛行士が亡くなる
悲劇もあった
自身の身体面の問題で
宇宙飛行士になれなかった
コール・デイヴィスは
これまでの犠牲に報いるべく
黒猫を不吉だと近寄らせない
ようにするほど縁起を担ぎ
アポロ計画の実行に心血を
注いでいたがそこへ
呼ばれたのが
殆ど詐欺のようなきわどい
やり口の広告屋で知られた
ケリー・ジョーンズ
戦況の悪いベトナム戦争などで
世論が批判的になっている
アポロ計画に理解を得るため
広報を改革してほしいと
政府筋の怪しいおっさん
モーから依頼されます
ケリーは張り切って
役者を使った
プロモーション映像を作る
など刷新しコールらNASA職員は
戸惑いますがそういう形で
予算が出てくるのも事実
アポロ計画は進み
10号で目処が立ったので
ついに11号で月面に向かいます
ケリーも喜んでいたところ
モーに呼ばれ
なんでも月面着陸の「映像」を
別撮りしてほしい
テレビ中継の際に実際の音声に
合わせて流す奴を作れと
指示してきます
要は月面着陸が失敗した時の
ための布石ですが
これが長年言われてきた
「アポロは月に行ってない」
「カメラアングルが不自然」
「国旗が不自然」
「地上でスタジオで撮影した」
などの都市伝説というわけ
ケリーは用意された
超巨大なハンガー内で
セットを作り月面に降り立った際の
生中継準備をしています
こういう事をこっそりやっていた
ケリーにコールは俺たちが
月に行けても行けなくても
関係ないのかと当然怒ります
ただ計画の成功へ向かって
犠牲者に花を手向けつつ
真っすぐに向かうコールに
ケリーも次第に惹かれていきます
そしてアポロ11号は月へ旅立ち
いよいよ全世界が注目する月面着陸
アームストロングの神業で
宇宙船イーグルは見事着陸
セットの宇宙船から役者が降りて
月面に足を付けた瞬間・・
そのセットの中にあの冒頭の
黒猫が走りこんできて現場は大混乱!
モーは真っ青になりますが
全米の生中継に写っていたのは・・
最初っから「本物」の方の映像でした!
ケリーはコールらの計画が
成功するのを信じたというわけです
いいオチじゃないですか
ちなみにアポロ11号が月面に
降り立った前年に作中でも名が出た
スタンリー・キューブリック監督の
「2001年宇宙の旅」が公開されており
その映像美に圧倒された関係で
陰謀論も盛り上がったのかもしれませんね