劇場公開日 2025年1月17日

「映画で似せるとはどういうことか」アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5映画で似せるとはどういうことか

2025年2月28日
PCから投稿

セバスチャン・スタンをドナルド・トランプに似ていると思ったことはなかったが、役者だからそれなりにやるのでしょうと期待していて、フタを開けてみたらとんでもなかった。自分を含めて多くの人は若い頃のトランプをさして知らず、しかしスクリーンの中にいたのはちゃんと後のトランプに繋がるクセやビジュアルを兼ね備えた、トランプ一歩手前の若者の姿だったから。

若い頃には随分ナイーブだった(劇中の)ヤングトランプは、ロイ・コーンという手本にしちゃいけないけれど力を求め、力にひれ伏したい欲望を持った男を手本にして、どんどん自我が肥大したろくでなしになっていく。つまりはわれわれが知っているトランプのイメージに近づいていくわけだが、セバスチャン・スタンはモノマネのように似せるでなく、しかし要所要所でしっかりとトランプ味をだだ漏れにさせて、ひとつの寓話としての半生記を形にしていく。

物語上の時代を反映させた映像処理も、ちょっとやり過ぎなくらいクッキリとしていて監督の腕力を感じさせる出来栄えだが、とにかくセバスチャン・スタンが良かった。いや、ロイ・コーンを演じたジェレミー・ストロングも良かった。もう肩幅の狭さだけでキャラに説得力が宿っている。ストロングも、似ているといえば似ているし、似てないといえばそんなには似てないのだが、人としてのインパクトがある。キャスティングの勝利!

村山章