「原作とは違う雰囲気も好きでした」ブルーピリオド レンコンさんの映画レビュー(感想・評価)
原作とは違う雰囲気も好きでした
原作未読でしたが、自分も美大受験をしたことがあったので観に行きました。予備校の雰囲気とか講評で泣いちゃう子がいるとか、「絵なんて趣味でいいだろ」とか、「あー こんな感じだったー…」と当時の感触が蘇りました。
何でもオールマイティにこなせる主人公が、つぶしの効く進路を捨てて美術一本にしたのは、死んだように生きていきたくなかったということ。手堅いけど手応えのない人生は、いずれ自分を蝕んでいく。本当の自分をアウトプットできる世界を見つけてしまったら、もう手堅い生き方になんて戻れない。おそらくずっと、周りに合わせて本当の自分をさらけ出せず苦しかった。「俺の心臓は今、動き出したみたいだ」のセリフは、そういう意味だと思います。
主人公と元おな中のユカちゃんは最高にかわいいし綺麗だし(高橋文哉の役作りは圧巻!)、何より主人公が母親にまっすぐ届ける言葉が刺さって、1巻だけ原作も読んでみました。
原作マンガの方がポップな感じでテンポもいい。当然、情報量もセリフも多い。主人公はもっと器用で明るいキャラです。2巻目以降はさらに深掘りされるのでしょう。「原作と違う!」と仰る方がいるのはごもっとも。
でも私は、映画の少し不器用で静かな、時にシリアスなテイストがやけに気に入って、2回目も観に行きました。セリフは所々割愛されているけど大事なところをきちんと見せているし、やっぱりユカちゃんにはキュンとさせられるし、主人公と母親のシーンは沁みる。ちょっとした「リトルダンサー」ですね。親と進路のことでぶつかったことのある人は、どこかしら響くのでは。
映画は、エフェクトのかけ方も音楽の使い方も巧みで、ハイセンスだと感じました。3回目も観に行こうか検討中。
なお、どうでもよいことですが、芸大(美術)の一次試験て今は国技館じゃないんですね。ずっと国技館のイメージだったので、この映画で「今は違うの!?」となり、調べたら2009年で終わってたみたいです。昔とは色々変わっていました(当たり前か)。