「人と関わることを避けても、人の役に立ちたいと思うのが人間なのかな」ルート29 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
人と関わることを避けても、人の役に立ちたいと思うのが人間なのかな
2024年の日本映画(120分、G)
原作は中尾太一の詩集『ルート29、解放』
ある女性の願いを叶えるために鳥取〜姫路間を往復する女性を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本は森井勇佑
物語は、鳥取にて清掃員をしている中井のり子(綾瀬はるか)が、とある精神病院にて、入院患者の木村理映子(市川実日子)から「あるお願い」をされる様子が描かれていく
理映子は「もうすぐ死ぬ」と言い、「姫路に住んでいる娘・ハル(大沢一菜)に会いたい」と言う
初対面で縁もゆかりもないのに、のり子は清掃会社のワゴンを拝借して、姫路へと向かってしまった
映画の冒頭は、ハルを探している最中に泊まっていたゲストハウスのシーンで、そこもなぜか摘発を受けて追い出されてしまう
また、時系列的に一番最初になるのが、のり子が脳のCT写真の説明を受けているシーンで、これが一連の出来事の「5日前」となっていた
脳に腫瘍があるものの、経過観察と言われていたのだが、あの映像が誰のものかは明確にはなっていないのだが、おそらくのり子のもので、定期的な検査であるように思えた
物語は、知らない人・のり子になぜかついてくるハルが描かれ、彼女はのり子に「トンボ」と言う名前をつけた
彼女と親しいシャケ師匠(播田美保)のペットは「坂本」だし、ネーミングセンスが結構ズレている
そんな二人は、当初はワゴン車で鳥取を目指すものの、ドライブインで知り合った犬を探す赤い服の女(伊佐山ひろ子)に車を奪われてしまい、徒歩で向かうことになってしまった
そこからは、よくわからない人たちと出会い、途中でのり子の姉・亜矢子(河井青葉)と再会を果たしていく
だが、このあたりに登場する人はおそらくすでに死んでいる人たちで、帰り道は精神世界にでも入り込んでいるかのように思えた
結局のところ、姉のところで自分が誘拐犯になっていることを知り、ハルを母親に引き合わせた後は、きちんと警察署に出頭したりするのだが、どこまでがリアルなのかはほぼわからない
ぜんぶが夢のようにも思えるし、何なら「のり子=理映子」とか、「ハル=のり子の幼少期」なんて構図にも見えないことはない
このあたりは想像にお任せしますレベルなのだが、あまり深く考えない方が良いのかも知れません
いずれにせよ、かなりファンタジックな内容で、イメージとしての大魚が登場したりとか、変な夢を見たりとか、シュールな展開も多かったように思う
原作の詩を解釈した内容になっているが未読なので、その再現度というものはわからないの
だが、映画の舞台が「ルート29(若桜街道:鳥取県側)」であることに意味があるのかなと思った
鳥取から南下する若桜街道は「浅井」という場所で、左が伊勢道(現在の482号線、氷ノ山経由の但波馬道に続く)、直進(右)が播磨道に分かれている道で、この播磨道の先に姫路がある
伊勢に行かないというのは、忌中であるとも言え、それゆえにスルーする行き帰りだけになっているのかなと思った
帰りにハルを手放すことになることにも意味があると思うので、おそらくはのり子はすでに死んでいて、その魂が母と娘を引き合わせる役目を担ったのかな、と感じた
個人的な解釈なので的外れかも知れませんが、のり子という人物は人と関わることを避けてきた人間で、そんな彼女が「本当にしたかったこと」がこの映画で描かれていることなのかも知れない
そう言った意味もあるのだとするならば、生きているうちに人の役に立つことをすれば、迷い道には迷い込まないというメッセージになるのかな、と思った