骨を掘る男

劇場公開日:

骨を掘る男

解説

沖縄戦の戦没者の遺骨を40年以上にわたって収集し続けてきた具志堅隆松さんを追ったドキュメンタリー。

沖縄本島には激戦地だった南部を中心に、住民の人々や旧日本軍兵士、さらには米軍兵士、朝鮮半島や台湾出身者たちの遺骨が、現在も3000柱近く眠っていると言われる。28歳から遺骨収集を続け、これまでに約400柱を探し出したという70歳の具志堅さんは、砕けて散乱した小さな骨や茶碗のひとかけら、手榴弾の破片、火炎放射の跡など、拾い集めた断片をもとに、その遺骨が兵士のものか民間人のものか、そしてどのような最期を遂げたのかを推察し、思いを馳せ、弔う。

自身も沖縄戦で大叔母を亡くした映画作家・奥間勝也監督が具志堅さんの遺骨収集に同行して大叔母の生きた痕跡を追い、沖縄戦のアーカイブ映像を交えながら、沖縄の歴史と現在を映し出す。

2024年製作/115分/G/日本
配給:東風
劇場公開日:2024年6月15日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

監督
撮影
奥間勝也
整音
川上拓也
カラリスト
田巻源太
編集
奥間勝也
音楽
吉濱翔
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フォトギャラリー

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(C)Okuma Katsuya, Moolin Production, Dynamo Production

映画レビュー

石と骨

2024年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 こんな人がおられる事を全く存じ上げませんでした。

 太平洋戦争末期の米軍沖縄上陸以降、押し付けられた集団自決や米軍の火炎放射などによってガマ(洞窟)内で亡くなった人々の遺骨を収容しようと今もたった一人で掘り続ける具志堅隆松さんの活動を追うドキュメンタリーです。

 まず、具志堅さんの持つ道具が、園芸用と思しき小さなスコップと刷毛などに過ぎない事に驚きます。それで根気よく少しずつ少しずつ掘り進めるのです。そうすると、戦後80年近く経った今でも、ガマ内で過ごしていた人々の茶碗や銃器の部品などが出て来ます。そして、勿論遺骨も。

 次に驚くのは、土や石と見分けがつかない様なものの中から骨の欠片を的確に見つけ出す具志堅さんの眼力です。そして更なる驚きは、そんな欠片だけで「それが何処の骨」なのかを識別し、一本の歯だけで「何歳くらいの子供だな」と言う事まで分かる解剖学的見識です。具志堅さんはそうした遺骨・遺品の様子から「亡くなった時にはこんな状況だったんだろう」と思いを致します。勿論それは想像に過ぎないのですが、この様な経験と知識を踏まえた言葉には強い説得力があり、我々を80年前の真っ暗なガマへいざないます。

 この様な遺骨収集をもう40年近く続けておられるのです。具志堅さんは、「遺骨が出なくても何ら問題ではなく、これは『行動的慰霊』なのだ」と語ります。その言葉を聞くと、「沖縄の土を掘り起こして辺野古の米軍基地用の埋め立てに用いる」という計画が、あの時沖縄で亡くなった人々とその思いを受け継ぐ人々を如何に傷つけているかがよく分かります。6月23日の「沖縄慰霊の日」に飛行機でブーンと遣って来て、官僚の書いた作文だけ読んで帰る総理には想像もつかない事でしょう。

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La Strada

3.5現代人がここで食事をして、用足しをして、眠りなさいと言われてもできないだろうね。

2024年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

戦争によって打ち捨てられ、76年もの間土の中に埋められたままの骨を、ひとり黙々と掘り続ける男、具志堅隆松。とかくこの手の話題になると活動家のパフォーマンスを疑いたくなるが、そんな空気はみじんもなかった。むしろ、とてもニュートラルな言葉選びと物腰。作業に対する責任は感じても、他人に圧を与えるような態度はとらない。とても好感を持った。
「基地の土砂を南部で調達しようとしてる。そこには遺骨がまだたくさん残っている。」と訴える言葉は切実だ。遺骨が混じっている南部の土砂を埋め立てに使うことに抵抗があるのは当然。それは戦争のために命を失った戦没者の尊厳を踏みにじる行為。基地の土砂になるということは、骨になってまでも戦争の犠牲になる(可能性がある)ということ。
これは大事なポイントなのだが、具志堅さんは基地反対とは言っていなかった。すくなくとも映画の中では。南部の土を使うのをやめてくれ、とお願いしている。その理由はただひとつ、まだ遺骨が残っているから。それならば、政府主導で遺骨採掘の作業を進めることはできないのだろうか。あまりにも膨大で二の足を踏んでいるのだろうか。なんか、どこかで沖縄県人を他人だと思ってるんじゃなかろうか。知事にしたって、具志堅さんのハンストに対してけして全面的な賛意ではなさそうだったのが気にかかる。そこに打算が見え隠れしていた。
いまだにガマの中から『たしきてぃくみそーれー(助けてくれ)』という叫びが聞こえるという具志堅さんの、「沖縄なんて、みんな骨の土で生活してきたんだと思うよ」という言葉は、戦没者に対して今でも深い弔意を心に抱いている表れだ。そしてそれは、多くの沖縄の人も同じ思いなのだろう。

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栗太郎

5.0ガマふるゃー =ガマを掘る人

2024年7月19日
Androidアプリから投稿

3ヶ月の地上戦で、
15万人が死んで、住民の4人に1人が死んだ沖縄戦。
誰しもが遺族。みんな身内を失っている。
特に沖縄島の南部に追い詰められて死んだ、無数の人々の遺骨。
その遺骨が埋まる ( あろうことか ) 糸満の土砂を使って
アメリカ軍・辺野古新基地の海の埋め立てを
日本政府は 沖縄の地元の建設業者にやらせている。

黙々と、最後の一体まで死者の遺骨を掘り出して、それを弔おうとする具志堅さんと、
それをさせまいとする日本政府との一騎打ちだ。

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きりん

5.0この映画を撮った事自体が素晴らしい。具志堅さんの情熱。そして彼も何...

2024年7月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

この映画を撮った事自体が素晴らしい。具志堅さんの情熱。そして彼も何故掘っているのかを自問する。

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えみり