「意外なほどのストレートさが清々しい」正体 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
意外なほどのストレートさが清々しい
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予告編や事前情報から、姿形を変えながら逃亡を続ける男、はたして彼は何者なのか、という作品なのかと思っていた。例えれば、阪本順治の傑作「顔」のような。
しかし、最初の飯場のところはまだしも、その後の編集社や介護施設では、主人公の姿形は大して変わってなくて、あれだけ世間を騒がせているのに気付かないの?そもそも身元保証もないのに正社員になれるの?などと突っ込みを入れたくなる。
そんなご都合主義的な展開がありつつも、俳優陣の熱演と演出の力技で引っ張られるうちに、この作品は、設定の面白さに寄りかかるのでなく、意外なほどストレートに「人を信じることのかけがえのなさ」を伝えようとしていることが理解できる。ひねくれがちな今では珍しいほどの清々しさで、こういう作品もいいものだと素直に感じたところ。
横浜流星の熱演はもちろんだが、特に山田孝之の内に秘めた受けの演技に目を見張った。森本慎太郎もハマっていた。女性陣は、ちょっと甘いかな。藤井道人監督は、持ち味のショッキング演出は控えめに、的確で濃密な画作りをしていた。
昨今話題の冤罪事件などを思い起こし、実際こうはうまくいかないだろうと思いつつ、現実社会でも、犯人決めつけのような印象操作にはくれぐれも惑わされないようにしなければ。
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