若武者のレビュー・感想・評価
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二ノ宮監督作品は初鑑賞です。どこかオシャレな予告編や、配給の狙うターゲット層に当てはまればいいなという期待も込めて鑑賞。
腹の底から笑いながらも、人が持つダークな部分を根掘り葉掘りしていく様子には共感せざるを得ない、若武者に近い年頃だからこそこの映画にしっかりのめり込める映画でした。
気怠げ、お調子者、一見普通な凸凹3人組の小さく捻くれた世直しが今作の肝になってくるんですが、ロン毛の英司がこれでもかってくらい喋りますし、面白いくらいの屁理屈を言いますし、他人に絡みまくりますしで最初こそ不快だなぁと思って見ていたんですが、段々とクセになってきて、困ったことに共感するところも多かったので、彼の一挙手一投足に注目しっぱなしでした。
河川敷での英司1人での独壇場大騒ぎはヤバさを際立たせていましたが、歩きタバコを注意するところは真っ当というか、いけない事としっかり分かっていて詰め寄るのは相当な勇気だなと思いましたが、それにしても煽る煽る、煽り散らかしてタバコさんもちょっと怯んで口だけ人間にしちゃう。
英司の態度自体はDQNそのもので、実際にあんな人がいたらそそくさと逃げちゃいたいもんですが、同性でのキス(演技とはいえ舌を入れる生々しい演技)を嘲笑した女性2人組にこれでもかと詰め寄ったりと正義と気狂いの境目を反復横跳びしまくっていて観ている側の情緒もなんだかおかしくなりそうでした笑
喫茶店のシーンだけはシンプル迷惑客&お客様は神様精神を自分で持ってるという面倒くささにマスターげんこつ食らわしてもいいよと心の中で唱えていました。
3人とも仕事はしっかりしているというのが今作のギャップの一つにもなっていて、渉は黙々と倉庫内作業、英司はハキハキと接客する居酒屋の店員、光則は介護士と全員しっかり社会に溶け込んでいるからこそ、仕事内外で溜めたストレスを声に出して叫んでいるんだろうなーと思ったらちょっとだけ羨ましいと思ってしまう自分がいました。
英司がカウンターでおじさんを倒した時の快感、自分は誰かを殴った事は全くないので、もしイライラの最高到達点に達したらこの快感も分かるのかな…なんて思いましたが、そんな快感を味合わずに人生全うできたらいいなってところに落ち着きました。
殺すなら殺してみろよを衝動的に渉がアクションに起こして、瓶で思いっきり殴って立ち去っていく様子は劇場全体の時がピタッと止まったかのような感覚に陥りました。
それまでは口だけだったし、ほぼ言葉にしないしで寡黙だった渉のこの映画の中での最初の大きな動きが攻撃だったというのも含めての衝撃でした。
そこから渉の行動力は凄まじくて、リミッターが外れたように父親の元へ押しかけて殺そうとして…でもふとして落ち着いて…緩急が激しい終盤には体ごと持っていかれました。
最後の観客を見つめる視線に構えられた日本刀、余韻を残す終わり方に賛否割れそうですが、感情が揺さぶられまくった今作の締めとしては落ち着いたもので個人的には良かったです。
誰かに刺さればいい、そんな意欲作を作る会社が出てきた事は映画ファンとしては嬉しい限りです。
今後とも長いお付き合いをしていきたいです。
鑑賞日 6/5
鑑賞時間 16:05〜17:55
座席 E-12
その不穏さがリアル
居酒屋店員・英治( 高橋里恩さん )が、怒りに任せ延々と吐く言葉は、こちらの寛容さを試されているよう。
介護士・光則( 清水尚弥さん )が理路整然と紡ぐ言葉に、デリカシーは無い。
父親( 豊原功補さん )との折り合いが悪い渉( 坂東龍汰さん )が、父親と対峙する緊迫したシーンで、息を潜めてスクリーンを見つめていた。
映画「 福田村事件 」でもそうだったが、豊原功補さんの迫力ある演技に圧倒された。渉が『 僕は … 僕は … 』と声を絞り出すよう語る姿に胸が苦しくなった。
登場人物が皆、それぞれに強い怒りを孕んでおり、そんな彼らの姿が、昨今ニュースとなっている痛ましい事件と重なり、やるせない気持ちで劇場を後にした。
劇場での鑑賞
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