大きな家のレビュー・感想・評価
全51件中、1~20件目を表示
メディア向けのきれいごとを言わない子どもたち
『14歳の栞』の制作チームに斎藤工が合流して出来上がった、ある児童養護施設のドキュメンタリー映画。普段の施設の日常を、子供たちの目線で撮ることを徹底していて、感動的な演出などをしない点がいい。子供たちの発する言葉が、「メディア向けのきれいごと」ではないのだ。施設の職員や子供たちを「一緒に住んでいる他人という感覚」と言ったりする。当然、「血は繋がってなくても家族だ」という言葉の方がメディア受けはいいわけだが、決してそういう言葉を言わせようとしない取材スタイルが良い。
ミャンマーの児童養護施設に行くエピソードがあるが、そこの子供たちは対照的に、みな家族だと言う。この違いは何だろうか。家族の捉え方の違いか、日本的な照れや謙遜のようなものがあるのか。
本作は、子供たちのプライバシー配慮のために映画館のみで上映される。『14歳の栞』と同様のやり方だが、映画館というある程度クローズドな場所だけで見せることができるもの、というのがある。ある程度、クローズドであるということ、これも映画館の価値だと思う。
やっぱり家だろうな
飾り気ない
《人をそこに想像する》
家族という捉え方はさまざま
映画館での上映のみ、ソフト化も配信もしないということで、ずっと気になっていたものの、なかなかなかなか後回しになってしまっていたけれど、やっと上映時間が合って観ることができた。
児童養護施設というと、なんとなく触れちゃいけないような気がしていたけれど、そこで暮らす子たちは意外にもドライに自分の境遇を捉えている印象。みんな将来の夢や目標を持って、悲壮感のようなものは感じない。
そして職員の方々も怒りもするし叱りもする、時には辛辣な事も言い合うし、成長を喜び泣きもする。
家族ではないと言いつつも、心の拠り所でもある、なんだか不思議な関係。
未就学の小さな子から始まり、小学生から思春期、反抗期の中高生、そして施設を出た19歳までの子たちが登場する。
18歳になったら自立する訓練をして退所、特に用事がなければ戻ってきてはダメというルールに少し驚き。
今では18歳は成人の歳とはいえ、強制的に大人にならざるを得ないのかと思うと、自分は甘ったれだったなと感じるし、もしかしたら今でもそうかもしれない。
なぜ施設で暮らすことになったのかは様々だけれど、死別だったり、離れて暮らしていると本人が話すことはあっても、あまりそこは重要ではないから明かされることはない。
撮影に関しても、東京である事は明かしてはいるけれど、時折差し込まれる町の風景も、あまり個性のないどこにでもある街並みで、極力特定されないようにしているのが好印象。
観るまで7週かかったけど、観てよかった。
「放課後カルテ」で毎回泣く私ですが…
配信なし、今すぐ映画館へ!
現在、日本で児童養護施設に暮らす子どもたちは何人いるか? …答えられない人はもれなく、この映画を見るべし。プライバシーの観点から配信はないと言うから、今すぐに…!
カメラの前の児童たちは、子どもらしい無邪気さをまといつつ、時に子ども離れした鋭さを見せる。全編にほんのりとした切なさがありつつ、今を生きる子どもたちの姿は美しく、思わず応援の拳をにぎってしまう。
何より本作で描かれている児童養護施設の日常は驚くほどリアル。彼らは日々何を食べているのか?洗濯はどうしているのか?部活はやっているのか?そんなことすら知らなかった自分の無知さを突きつけられる。
鑑賞後、「児童養護施設」という文字の羅列が、輪郭をもった立体的なものに感じられる。映画館でしか観られない、だからこそぜひ観たい名ドキュメンタリー。
その人なりの幸せを願って
現在進行形で施設にいる子は「ここは家ではない」と話し、施設を卒業した子の心には、よりどころのようになっていたのが印象的でした。
映画の冒頭で施設職員の方が「卒業した子の中には、連絡が取れなくなる子も相当数いる」とお話されていたので、それだけこの世の中は、「世の中が考える一般的なレール」からはずれて生きている人々に、厳しいのだということなのでしょうか。
施設職員と子どもとは、わりと関係良好なシーンが多く映っていましたが、現実では、長所も欠点もある人間同士、どうあがいても上手くいかないことはあるでしょう。
「世の中が考える一般的なレール」の枠内に収まっているはずの私でさえ、親子関係、家族関係に日々悩むのですもの。
この世に生を受けたすべての人が、それぞれの環境で、その人なりの幸せを感じながら毎日を生きていけますように…そんな気持ちになりました。
人間、ずっと生き地獄だよ。
作中、少女のつぶやいた言葉が、耳に残った。
彼女が今の状況を選んだわけではない。
あきらめと怒り、両方を感じた、やるせなかった。
私は、50代で一念発起し、社会福祉士の学習を始めた。
福祉系以外の大卒の場合、受験資格を得るためには、1年8ケ月の間、通信教育での学習と1ケ月間の実習への参加が必須だった。
社会福祉士取得後は、高齢者、障がい者、児童など様々な現場で、専門職として働くことができる。
私は、児童分野で働きたいと考えていたので、児童養護施設で実習を受けることにした。
この映画同様、児童養護施設の子どもたちは、衣食住、十分な支援を受けている。
私が滞在したのは1月15日から2月13日までだったが、節分の行事もあった。
夏休みには山にスタッフと子どもたちでキャンプに行き、クリスマスプレゼントもある、寝る前には1対1で順番に絵本の読み聞かせもしてもらえる。
数人のスタッフが、シフト勤務で子どもたちをサポートし、中学生以上の子たちへは、自立に向けて自分の身の回りのことを担当するように促す。
児童養護施設の印象は、家庭というより、寮のようだと思った。
映画の中で、子どもたちが、ともに過ごす人たち(子ども・スタッフ)を、「家族ではない、他人だ」というのは、感覚としてよく分かった。
どの子も、家族とのお出かけやお泊り、家族からの電話などをとても楽しみにしていた。
家庭ではなく、社会的養護施設で育った子は、特定の大人と親子のような絆を持つことはできない。
スタッフは、配置転換があるし、3年から5年ほどで燃え尽きて退職する人も多いと聞いた。
退勤後は、スタッフは各々の家に帰り、本来の自分として過ごす。
その顔を、子どもたちが知ることはないだろう。
相談したいことがあれば、その時、施設にいるスタッフに言う。
家庭というより、むしろ学校に近いかもしれない。
政府は、社会的養護を受ける子どもたちが、できるだけ家庭的な環境で過ごせるように、里親制度と、児童養護施設等でも小規模なグループでの養育することを進めようとしている。
家庭的な養育によって、子どもたちが、身近な大人との間で本来得るはずだった絆を得ることができるようにだろう。
児童養護施設では、できるだけ10人以下の小グループで養育するよう努めているが、スタッフの充足具合と資金繰りがそれを実現できるかのカギとなる。
里親に関しては、基準が厳しく、そもそもなり手が少ないという問題点もある。
これらの自分の体験を踏まえてこの映画を鑑賞すると、かなり実態に近い映像作品だと感じた。
ひとりひとりの子どもたちの不安や心もとなさに、目の前にいたらハグしたいと思った。
実の親に育てられていても、社会に出て、自立する時は、しんどい。
いっぱい恥をかくし、失敗するし、泣きたくもなる。
そんな時、心から信頼できて、頼ることができる人が身近にいないのは、つらいだろう。
子どもたちの心情が、少しずつ、足元から降り積もり、だんだん息苦しくなってきた。
思わず、途中で終了時間までどれくらいか確認してしまった。
こんなことは、映画鑑賞に来て、初めてだった。
幸せな気分になる映画ではない。
けれど、今、生きている大人として、受け止めなければいけない日本の現実だ。
微力ながら、今後、目の前の子どもたちの力になっていきたいと改めて決意した。
7歳から19歳まで、全員が全員、自分の考えを自分の言葉でしっかりと...
今年一本目がこの作品で良かった。
「人生のヒントがたくさん」
「普通」であることの幸せ
日々の日常を淡々と綴った静かな映画です。それは、製作者の意図に沿った演出でもあり、そのことにまず志の高さを感じます。
日々は淡々と過ぎていくものであり、それが「普通」なことなのですが、児童養護施設で「普通」であると言う事は、なんと尊い営みであろうと思います。
それぞれの事情、それぞれの思い〜複雑
色々評判になっていたので鑑賞。
様々な事情で親と暮らせない子供たちが集まって
職員さんにサポートされながら暮らす養護施設を取材したドキュメンタリー。
賑やかに誕生日を祝うシーンや、施設で行われる様々な行事など
子供たちの遊ぶ姿や軽く喧嘩する姿も織り込んで、
幼稚園に通う年齢の少女から、18歳で施設から退所して
施設の近くで一人で暮らす大学生まで、数人の子供たちに密着して
日頃の暮らしへの感想と施設の仲間や職員に対する本音を
インタビューしている。
この映画は撮影に協力してくれた子供たちのプライバシーに配慮し
ビデオ化や配信はされないので、興味のある方はぜひ劇場で!
で、月に8回ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好きとしては
私の頭の中が養護施設と言うと「タイガーマスク」に出てくる
ちびっこハウスからアップデートされてなくて(何十年経ってんだ!)
今時の施設の充実度にまず、驚いた!
それぞれ個室になってて、食事も担当の職員さんが作ってくれる。
洗濯物や身の周りの物も、年齢の低い子供たちには、
本当の親がするように職員さんが片付けて準備したりしてくれる。
本当の親子ではないけれど、一般家庭に少しでも近づけるように
色々工夫されているんですね。
一緒に暮らす仲間と職員さんたちを子供たちはどんな風に思っているのか?
例え一緒に暮らしていなくても、親との関係がそれなりに良好な子供たちは
「血が繋がっていないので家族とは言えない。」と答える。
親との関係が破綻しかけていて、薄々それに気付いている子供は
「家族みたいなものかも〜」と曖昧ながらそっちの方向で答える。
それぞれの実の家族との関係性によって、施設生活のポジションが違う。
それぞれに複雑な感情〜〜
子供によって、施設の仲間を「家族」として認めてしまうと
自分が本当の家族と暮らせていない寂しさと現実を
丸ごと、受け止めないといけなくなる。
あくまでも施設の暮らしや仲間は「仮の存在」としておく事で
「本当の自分」を保とうとする様な健気な姿がほの見える。
兎に角、
みんな元気で!
みんな自由に生きられる様に!
願わずにはいられない。
出演された施設の皆さんの映画
タイトルとおり大きな家
2日連続で鑑賞。
居場所。
児童養護施設。その昔、履修科目中の一部として学び、触れたことはあった。しかし、実際にこの目で目にしたことはないし、同施設で暮らしていたという人物とも出会うことのない人生を歩んできた。
鑑賞後、パンフレットを購入し読んだ上で。24時間・365日、施設の職員として働く方々の懐の深さを思う。もちろん、様々な事情で施設に入所している子どもたちが、それぞれの日常をちゃんと生きている、その姿にもグッとくるものはあったのだが。
その子どもたちの生活の基盤を維持し、より良いものへと日々奮闘する職員の方々。職員が子どもの成長に涙する姿をみて、私自身は他者に対して、これほど想いをもって関わっているのだろうか、と自問自答した。そして本当のところ、そんなに想いをもって他者と関わってはいない自身に気づいてしまう。私は薄っぺらい人間なのだな、と。
施設を出て、彼ら彼女らがどんな人生を歩んでいくのか。願わくば、未来にわたって自身で選択できる人生を歩んで欲しい。
全51件中、1~20件目を表示