「期待度◎鑑賞後の満足度◎ 雪の白さと日の光が目に眩しい。行間を読む淡い詩の様な映画。スケートシーンに比べ極端に少ない台詞ながらも三者三様の気持ちがくっきりとわかる。しみじみと切ない。」ぼくのお日さま もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 雪の白さと日の光が目に眩しい。行間を読む淡い詩の様な映画。スケートシーンに比べ極端に少ない台詞ながらも三者三様の気持ちがくっきりとわかる。しみじみと切ない。
①三人が同じ目標を目指して仲良く練習していた中盤から三人の関係が軋み出す後半への流れ。しかし予兆はほぼ冒頭から示されている。光の中で滑り舞うサクラを光の精を見るように憧れの目で見つめるタクヤの姿をふと目に停め、サクラを見たあと再びタクヤに視線を戻してそのまま見つめ続ける荒川。「真っ直ぐな(タクヤのサクラへ)想いが羨ましたった」と後程荒川はくちにするが、本当にそれだけだったのだろうか。タクヤに佇まいに心惹かれた気持ちはなかたったのだろうか(勿論、少年愛とか異常なものではなく)。
その辺りを何とも取れるように微妙に目の演技だけで表現する池松壮亮はやはり上手い。
②荒川は元フィギュアスケート選手でスケート雑誌やスケーター達のカレンダーに載るくらいのスケーターだった過去がある。それが何故雪深い北海道の田舎町でスケートのコーチをしているのか。
それが分かるシーン。男と同居しているようだ。そしてパートナーは親のガソリンスタンドを継いだリターン組だと分かるシーンで仲良く枕を二つ並べたベッドが移る。
荒川はゲイだと分かるシーン。最近はLGBTQ という言葉が巷に溢れ多様性がある意味押し付けの様に取り上げられる世の中になっているが、こういうことには揺り戻しは必ずあるし、日本社会にはまだまだ偏見や無理解、誤認識が蔓延っている。都会ならともかく地方都市では尚更だろう。
パートナーが地元民であればおそらく直に噂は広まるに違いない。
荒川の未来が気になるシーンだ。
③面白いことに三人の中で最も素直というか真っ直ぐと言うか屈折していないのはタクヤだ。普通なら吃音であることに悩むようなものだが本人は気にしていないよう。
サクラのことが好きなのはミエミエだし、荒川のことも親切で優しいお兄さん→コーチとしか思っていない。
※因みに荒川が引っ越し荷物の中から自分の使っていたスケート靴を嬉々として探すシーン。深読みかもしれないが無償の贈り物には暗喩がある。
コンテストにサクラが来なかった事も、タクヤは結局サクラは自分の事がキライ、或いはアイスダンスをやっぱりやりたくなかったとしか思わない。
街を離れることにした荒川に「また戻ってくるの?」と屈託無く訊くタクヤ。
まあ、男の子って鈍感なものだから。
最後に二人でキャッチボールをするというところも微妙な塩梅だ。ごく普通に男二人でボールを投げ合い受ける。それだけ。でも、だからこそ色々な意味合いを持たせられるし、ただ微妙な距離感を保てる。(『フィールド・オブ・ドリーム』のラストの若き父親と主人公のキャッチボールみたいに)
荒川が暴投したボールを追って走って行くタクヤの後ろ姿を見つめる荒川の視線に浮かぶ感情…
④タクヤに較べるとサクラは遥かに敏感でそして残酷だ。でもそれも仕方がないのかもしれない。
ハッキリと思った事を口にする同級生と違って気持ちをなかなか言葉にできないサクラ(その代わりスケーティングは饒舌だ)。
密かに荒川に淡い気持ちを抱いている。
街で荒川の車を見かけて思わず走りよろうとするが、