Shirley シャーリイ

劇場公開日:

Shirley シャーリイ

解説

アメリカの怪奇幻想作家シャーリイ・ジャクスンの伝記を基に、現代的で斬新な解釈を加えて現実と虚構を交錯させながら描いた心理サスペンス。

1948年、短編小説「くじ」で一大センセーションを巻き起こしたシャーリイは、女子大生行方不明事件を題材にした新作長編に取り組むもスランプに陥っていた。大学教授の夫スタンリーは引きこもって寝てばかりいるシャーリイを執筆へ向かわせようとするが上手くいかず、移住を計画している若い夫妻フレッドとローズを自宅に居候させて彼女の世話や家事を任せることに。当初は他人との共同生活を嫌がるシャーリイだったが、懲りずに自分の世話を焼くローズの姿から執筆のインスピレーションを得るようになる。一方、ローズはシャーリイの魔女的なカリスマ性にひかれ、2人の間には奇妙な絆が芽生え始める。

ドラマ「ハンドメイズ・テイル 侍女の物語」のエリザベス・モスがシャーリイを演じ、「君の名前で僕を呼んで」のマイケル・スタールバーグ、「帰らない日曜日」のオデッサ・ヤング、「ウォールフラワー」のローガン・ラーマンが共演。マーティン・スコセッシが製作総指揮を手がけ、「空はどこにでも」のジョセフィン・デッカーが監督を務めた。

2019年製作/107分/PG12/アメリカ
原題または英題:Shirley
配給:サンリスフィルム
劇場公開日:2024年7月5日

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映画レビュー

4.0読み解く鍵は“分身”

2024年7月6日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

本作については当サイトの新作映画評論の枠に寄稿したので、ここでは補足的な事柄をいくつか書き残しておきたい。

評では、映画の原作になった2014年発表の小説があること、シャーリイが1951年に発表する長編第2作「絞首人」の構想を練っていた頃に時代が設定されていること、シャーリイたちの家で暮らすことになるフレッドとローズの若夫婦が架空のキャラクターであることなどを紹介した。

さらに評の中で、「『絞首人』の構成要素を分解してリバースエンジニアリングにも似た手法で着想から執筆に至る過程を再現し、さらにはシャーリイ作品の幻惑的な世界に没入させることが作り手たちの狙い」と書いた。先に「絞首人」を読んでから「Shirley シャーリイ」を鑑賞した場合は、映画の人物らの関係性は小説のあの人物らの関係性をなぞっている、などと気づくことが多々あるのだが、もちろん未読だからといって映画を楽しめないわけではない。先に映画を観てから、答え合わせのような心持ちで「絞首人」を読むのもありだろう。

この映画と小説「絞首人」のネタバレにならない範囲でヒントを記すなら、作品を読み解く鍵のひとつは“分身”だ。評の中でも「(「絞首人」の主人公)ナタリーは小説後半で分身と思しきトニーと交流する」と書いた。シャーリイ・ジャクスンが「絞首人」で採用した叙述スタイルは「信頼できない語り手」に近いもので、序盤からいきなりナタリーと空想上の刑事とのやり取りが出てきたりする。そうした小説の傾向から、後半に登場しナタリーと行動を共にするトニーの存在そのものも空想でありナタリーの分身と解釈できるのだが、映画においてもシャーリイとスタンリーの分身として若夫婦を位置づけることが可能だろう。現実にはシャーリイが「絞首人」を準備していた頃すでに4人の子を産んで育てていたのだが、映画では子は存在しない。もちろん2時間程度の尺に収めるため登場人物を整理して減らすのは映画脚本でよくあることだが、この「Shirley シャーリイ」の場合はそれだけでなく、シャーリイとスタンリーの新婚の頃がローズとフレッドに投影されていると考えるとしっくりくる。ローズの出産を描いてシャーリイが母になる過程を想像させるためには、シャーリイが映画の最初から母親であるべきではないという作り手たちの判断ではないか。そう推測すると、あの断崖のシーンもわかりやすくなる。

ともあれ、この映画を機にシャーリイ・ジャクスンの再評価がさらに広がり、過去の映像化作品が配信で観やすくなったり、新たな映像化の企画につながったりするといいなと思う。スーザン・スカーフ・メレルによる原作小説も邦訳が出たらぜひ読みたい。

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高森 郁哉

2.5現実と非現実が混沌とする世界観

2024年9月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
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共感した! 5件)
ひでちゃぴん

2.5気まぐれ作家と陰湿教授

2024年9月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

難しい

アメリカの作家シャーリイ・ジャクスンの伝記を基にした作品。
1948年、短編小説、くじ、がヒットしたシャーリイは、女子大生失踪事件を題材にした新作に取り組んでいたが、筆が進まずスランプに陥っていた。大学教授の夫スタンリーはそんな妻シャーリイを助けようとい、家を探していた新婚夫妻フレッドとローズを自宅に居候させて家事を担当してもらうことにした。当初は他人との生活を嫌がるシャーリイだったが、自分の世話をしてくれるローズにより、執筆が進みだした。一方、ローズはシャーリイに誰にも言ってなかった妊娠を当てられ、彼女の超能力の様なカリスマ性にひかれ、2人の間には絆が芽生え始め・・・さてどうなる、という話。

実在するシャーリーという作家が居たことを知れたのと、後で調べると、シャーリーを演じたエリザベス・モスがよく似ていた事がわかった。
妻が家事が出来ない時には夫が手伝ってあげれば良いのに、と思ったが、第二次世界大戦直後頃の話なので、当時はアメリカでも家事は妻の仕事だったのかな?
単に家政婦を雇うお金節約?
教授の行動もイマイチよくわからなかった。
で、これは鑑賞後何を感じれば良かったのだろう?
気まぐれな作家と陰湿な教授夫婦の話、って事で良いのかなぁ。

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りあの

そうした意味でゾワゾワ

2024年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 書けなくなった女流作家の世話役を任された若夫婦が、偏屈な彼女との距離を詰めながらも彼女に呑み込まれているお話です。

 この作家もその夫の大学教授も若夫婦もみんなクズな面を垣間見せながら、映画自体がザラザラした肌触りで観る者の心を不安にします。でも、お話の収め方が「えっ、それだけの話しなの?」と少し呆気に取られました。どこか見逃した点があったのかな、気づいていない暗示があったのかな、単にボケてたのかな。勝手に、「こんな映画だろう」と決めつけていたのかな。そうした意味でゾワゾワの残る物語でした。

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La Strada