「やっぱ悪口多くなるわ」室町無頼 MAKOさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱ悪口多くなるわ
鑑賞は数日前だが、作品としては良いのに駄目な部分の印象がどうしても残る。
期待は大きかったんだよ。大好きな大泉洋さんの主演時代劇ってだけに。
一揆を成功させる為に弱者が知恵を集めて巨悪に挑む。
一揆を題材にした娯楽時代劇って結構珍しいと思うが、日本人なら大好きになれる映画だった筈だ。
なのに悪印象が強いのは、ひとえに才蔵役の長尾謙杜が下手過ぎる故だ。
彼については多分初見だし何の恨みも無いが、冒頭のシーンから"大声出してりゃ熱演"っていう日本映画の駄目な部分を集約した様な演技だった。
これは"熱演"じゃない、"騒音"って言うんだ。
おかげで冒頭からイライラしたが普通のセリフも駄目過ぎて、いつ『ハッピーバースデー、デビルマン』って言い出すかと思った。そのレベルで駄目だ。
普通のセリフで下手過ぎて噴き出したのは初めての経験だった。
これなら聾唖って設定にしてセリフは無い方がずっと良い映画になったと思う。
少し弁護するがアクションはとても良かった。ジャニーズ出身だけあり運動神経は相当良いのだろう。
殺陣は見事だったし"汚し"の入った顔も男前だったんで、まだまだこれからの俳優なんだと思う事にします。
あいにくこの映画の悪印象はまだ有る。
堤真一氏のメイクだ。なんだアレ。
有名俳優だし普通に存在感の有る俳優なのにいかにも"はいっ僕悪役です。"って感じのメイク。在りし日の福本清三氏をイメージしたのか?
まぁ殺陣に関しては元JACなんで福本清三氏にも引けを取らない見事さでしたけど。
あと1つ、大きな不満点が丞威さんを起用しながら殆ど見せ場が無い事だ。
あれほど動けて演技も上手な俳優を起用しておいて出番もセリフも殆ど無い。
尺の都合で道賢の右腕ポジションに見せ場を作る事が出来なかったのかも知れないが、余りにも役者の無駄遣いが過ぎる。
入江悠監督はお詫びとして丞威さん主演で1本撮るように。
ここからは少し褒めます。
この作品は時代劇だけどマカロニウエスタン風の演出を入れています。
この事で史実を元にした時代劇だけど重くならず、且つ黒澤明監督の「用心棒」へのオマージュになっていたのは、現代劇ばかり撮って来た入江監督ですが時代劇愛がしっかり有る事が伝わる上手な演出でした。
一揆当日の京都の夜景も現代の技術ならではでしょう。
武田玲奈さんや坂口拓の弟子でもある吉本実憂さんを良い役で起用してくれたのもファンとして嬉しかったです。
主演の大泉洋さんは見事な殺陣を披露していましたが、本格的な殺陣に初挑戦と書いていたのは公式の間違い。
舞台「WARRIOR〜唄い続ける侍ロマン」で見事なチャンバラを披露しています。
喋りが達者なイメージも強いですが、その器量の広さには敬服するしかないです。
歴史の資料に名前が有るだけの人物を、ここ迄魅力的にしたのは彼の演技の賜物でしょう。
批判が多くはなりましたが時代劇の入門としては悪くない。比べるものでは無いでしょうが「十一人の賊軍」よりはずっと観やすいエンタメ時代劇です。
矛盾するけど、あまり時代劇は観ないって方にこそ
オススメ。
入江悠監督は最低もう1本時代劇撮るように。