「意外と平凡な時代劇だった」室町無頼 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
意外と平凡な時代劇だった
令和の時代劇なのか、時代劇仕立ての令和の映画なのか、アクションシーンてんこ盛り、CGをふんだんに使い、会話も今風、コメディ要素も入れて、音楽はエンニオ・モリコーネのマカロニ・ウエスタン風、昭和の頃こんなBGMのテレビ時代劇を観たような気がします。
「歴史書にたった一行記されている人物」で、誰も彼のことを知らないんだから、もっと自由で大胆なフィクションができたはず。
見かけは派手で大作だが、内容はありふれていて捻りもなく、すべて予想の範囲内で面白みがない。
蓮田兵衛とその仲間たちが生き延びたら良かった。
堤一派が兵衛側につくどんでん返し、兵衛はその後、才覚を活かして大商人になり、ともに一揆を扇動した仲間たちと船を操り貿易を行ったとか、ふてぶてしく生き延びて観客ともども快哉を叫ぶような話だったら痛快で良かったのに。
テンポが良くなく冗長な気がする。
全体的にメリハリがなく平板で、一揆のシーン以外は盛り上がりに欠ける。
兵衛がどれほどの人物なのかいまいち分からない。
そもそも大泉洋が役に似合っていないような。
カリスマ的な魅力ある人物にしたかったのだろうが、重いパートの演技がしっくりこなくていまひとつ魅力がない。殺陣もいまいちだったような。
才蔵の修行のシーンがベスト・キッドか初期のジャッキー・チェン映画みたいで浮いていた。笑いが口元で立ち消えてしまうくらいのコメディ感で微妙。
群衆が松明を掲げて京の街を走り抜ける一揆のシーンはさすがに圧巻で、「借金棒引きだぞ」と叫べばみんな我先に仲間に加わる、上手い人集めのフレーズだと思った。女たちまでわらわらと参戦して悪徳高利貸しの店や倉庫、自宅を次々壊し火をつけたら、集まった人々は狂乱じみたハイになって、ええじゃないかみたいになりそうで納得。
一方で死んだ人、死人を抱えて泣く人もきっちり描かれていた。
証文は確実に燃やしたほうが良いと思う。
マクロファージ先生は相変わらず美しく凛としてなおかつ可愛らしい。
先生に男にしてもらったら、そりゃあ才蔵は思い出しにやにやが止まらないよね。
才蔵役の長尾謙杜くん、良かったです。
残酷描写が多い。
飢饉と疫病で亡くなる人、一揆で命を落とす人、死体や死人の数では、もしかしたら邦画史上最多では。知らんけど。
期待しすぎた面もあるが、意外と平凡な映画だった。
コメントありがとうございます。
兵衛と才蔵どっちを見せたいのかも分からないし、才蔵の修行を柄本明に任せちゃうから師弟の絆も薄い。
松本若菜の役どころは居なくても成立するし…
なんか色々やりすぎて全部が薄くなっちゃった気がするんですよね。
共感ありがとうございます。
エンタメとしてはまだまだ振り切れてなかったかもしれませんね。まぁ矛盾の噴き出した室町時代舞台は目新しいと思いました。実はもののけ姫もこの辺りらしいですね。