「“一揆“の場面は圧巻だが・・・」室町無頼 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
“一揆“の場面は圧巻だが・・・
それにしても大泉洋は、時代劇が似合います。
出演作の中でもっとも格好良く見えました。
(衣装がいいからかな)
兵衛(大泉)に拾われた才蔵(長尾謙社)は、兵衛の弟子を志願して泥まみれで、泥水に何度も突き落とされ、こずかれる汚れ役。
更に老人役の柄本明の元で一年の地獄の修行。
後半の一揆での殺陣のシーンと、見せ場が多かったです。
室町時代の中頃(1461年)の京の都。
室町幕府は初期に金閣寺、中期に銀閣寺を建立している。
帝や公家が如何に華やかな生活をしていたかが窺われます。
その後に焼け落ちましたが、京の真ん中に位置する七重塔では、
幼馴染の骨皮道賢(堤真一)と蓮田兵衛(大泉洋)が、
昇っては遊んでいた。
この塔が後の伏線になります。
栄えた屋敷が連なる反面、民は重税と飢饉で野垂れ死している。
《飢饉》言葉では知っていても、映像で見るのと、聞くでは大違い。
道端に捨てられる人骨、足の骨が散乱して、そして着物を捲ると
髑髏が2つ。
武家屋敷では公家か?帝が言う。
“臭いのー“
“へーッ、疫病で死んだ骸を焼く匂いにてございいます“
などの会話が交わされる。
あまりの貧富の差に言葉を無くしました。
蓮田兵衛(大泉洋)率いる5000人を超える賊軍(浪人や農民たち)が
一揆を起こして室町幕府の転覆を目指す話しです。
蓮田兵衛とは、歴史書に一行だけその名がある謎の男。
だから殆どが原作者(垣根涼介)と脚本も書いた入江悠監督の
空想を膨らませたストーリーと思われます。
《重税》
農民民の少ない稼ぎから吸い取った税金。
飢え死にするほどの年貢・・・
それを払えず借金をして、借金のカタに妻や娘を取られる。
飄々とした兵衛の胸内には怒りや憤りがあり、一揆へと向かうのだ。
★それにしても北村一輝は上手い役者だ。
農民を“ムシ“と呼び「虫でも潰せば脂が出る」
《税をあげよ!!、もっと、もっと》
酔っ払って吐く仕草、
これほど憎々しい演技は並の役者には出来ない。
出演シーンは印象深い。
★骨皮役の堤真一は貫禄があり、時代劇の格を上げている。
そして紅一点の遊女・芳王子(松本若菜)・・・実に美しい。
巨体の阿見201は一際目立つ。
才蔵を鍛える老人役の柄本明・・・出てない映画が珍しいほど売れっ子。
《一揆の決行》
偽の決行日を広める兵衛・・・マンマと1日騙して、先駆け!
兵衛の兵は松明を掲げて京に乗り込む。
京は碁盤の目のように作られている。
俯瞰から映す松明の行列が美しい。
《七重塔の役割》
例えば、道を塞がれたら、すぐさま七重塔を見るのです。
塔に上がっている仲間が松明の灯りで、
「右→」、「左🤜」と
方角を示す。
この松明の大群はエキストラも多く、圧巻の迫力の見どころでした。
大泉洋は初めてのアクションと殺陣を頑張ってます。
馬は本当に乗ったのかな?
本来なら気の合う親友なのに、道を違えると敵と味方になり
殺し合う。
その骨皮も応仁の乱では賊軍となり処刑されてしまう。
《戦乱の世》
現在の世の中とは違う生き様がありました。
面白かったけれど、畳み掛ける勢いが薄く、
今ひとつ盛り上がりに欠けている印象でした。
堤真一が「時代劇の格を上げている」と書かれていて、うれしくなりました。
中井貴一の後に続き、日本の時代劇の要になって欲しいです。
「さよならくちびる」にコメントありがとうございます。
ロードムービーとしても、良かったです。