「【”面白く無き世を面白く生きる。”今作は”寛正の土一揆”を弱者救済のために起こした男と彼に感化された男達と、民に圧政を強いる室町幕府に仕える愚かしき者たちとの激烈な闘いを描いた歴史絵巻である。】」室町無頼 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”面白く無き世を面白く生きる。”今作は”寛正の土一揆”を弱者救済のために起こした男と彼に感化された男達と、民に圧政を強いる室町幕府に仕える愚かしき者たちとの激烈な闘いを描いた歴史絵巻である。】
■応仁の乱の直前。1461年の京。室町幕府の圧政の中、京の民は困窮を極め金貸しから借りた金を返せずに、妻娘を質方に取られる者多数。浪人者が多数徘徊していた。
だが、東山文化を築いた将軍及び大名衆は、それとは別世界で過ごしていた。
それを、睥睨していたのが、応仁の乱で焼失した相国寺の境内に三代将軍義満が建立した七重の塔だった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・私が今作を鑑賞中に感じたのは、蓮田兵衛を演じた大泉洋さんの飄々とした演技も要因だったのかもしれないが、劇中流れる音楽を含めて、<(マカロニ・ウエスタン&荒野の七人)/2>みたいな作品だなあ、という事であった。
・蓮田兵衛が拾った蛙と呼ばれていた才蔵(長尾謙社)の一年に亙る修行のシーンなども、コレマタ何となく、若きジャッキー・チェンの幾つかの映画を思い出してしまったモノである。
■嬉しかったのは、高級遊女の芳王子を松本若菜さんが演じられていた事である。家人に、”最近、松本若菜さんが良く映画に出るんだよ!”と報告したら、どうもTVドラマがヒットしたらしいのである。どちらにしろ、嬉しき事である。
ホント、お綺麗な方であるよ。
そして、ナント芳王子は、兵衛と寝た後に、訪れた才蔵を見て”貴方、女を知らないでしょう。”と言って優しく微笑むのである。良いなあ・・。(オバカ)
・蓮田兵衛と、京洛中警護をする骨皮道賢(堤真一)とは、どうも昔は同じ思いを持つ仲間だったようなのだが、今は別の道を歩んでいる。
だが、骨皮道賢(何だか、凄い名前であるなあ。)は、何処か蓮田兵衛には親しみと共に、一目置いているようなのである。
■今作で非常に爽やかだったのは、蓮田兵衛が土産の簪を上げた娘が、民の事を”虫”と呼ぶ愚かしき大名(北村一輝)に殺された事を知り、大名が酔っ払って宮中に戻る際に輿から引きずり下ろし、娘の簪で喉元を突き刺し殺すシーンである。
大泉さんは、コミカルな演技とシリアスな演技での”眼”の使い分けが絶妙に上手い人だと思うのである。
■そして、蓮田兵衛が率いる無頼の一団は宮中に突き進み、”無頼”と書いた紙を門に矢で突き立てるのである。このシーンでの才蔵の棒術の凄さは、必見である。
だが、宮中の中では将軍たち(多分、東山文化を築く事にうつつを抜かし、民を顧みなかった足利義政であろう。)がそのような状況も知らずに、虚ろな表情で七重の塔にちらほらと舞う炎をぼんやりと見ているのである。
<蓮田兵衛と、骨皮道賢は激しく刃を交わし、蓮田兵衛は地に斃れる。だが、彼が起こした”寛正の土一機”により、室町幕府は【徳政令】(簡単に言えば、借金棒引き令)を出し、それを知った皆は”蓮田兵衛の勝利だな。”と呟くのである。
時は流れ、応仁の乱が起き、幕府側だった骨皮道賢は斬首されるのである。諸行無常である。
そして、街中をぼんやりと歩く芳王子の前に、すっかり貫録を付けた才蔵が懐かしそうな顔で現れるのである。
今作は、”寛正の土一機”を、弱者救済のために立ち上がり、起こした男と彼に感化された男達と、民に圧政を強いる室町幕府に仕える者たちとの激烈な闘いを描いた歴史絵巻の逸品なのである。