「鑑賞後は全身から力が抜けるのを体感できる映画」室町無頼 香さんの映画レビュー(感想・評価)
鑑賞後は全身から力が抜けるのを体感できる映画
感激で気づいたら涙が出ていました。スケールの大きさに劇中何度鳥肌が立ったか分かりません。
まず主人公の蓮田兵衛を演じる大泉さんがかっこよすぎます。原作で読んだ蓮田兵衛のイメージを映像で見事に再現してくれています。飄々とした性格ながらも信念は固く、誰もがこの人に着いていきたいと思う。どの時代でもこのような人物は愛され自然と人が集まってくるし、必然的に中心に立っている。蓮田兵衛が一揆の頭となり、映画を見てる自分でさえもこの人に着いていきたいと思わせてくれるような大泉さんのお芝居は流石としか言いようがないです。
また個人的に兵衛と道賢の悪友のシーンがとてもリアリティがあって好きでした。かつては友人でありながらも生きていく中で道が変わり、人も変えてしまうという現在でもあるよなとイメージしやすい話でどちらの役にも感情移入をしてしまいました。最後の場面では道賢が自分の刀と倒れた兵衛の刀を外して座るという、かつての友人関係を示すような細かい工夫もされており、あのシーンは涙無しでは見れなかったです。
才蔵のアクションは言葉に表せないので見てください。笑
語るとしたら演技ですかね。一本の映画であれほどの成長を表現することはとても難しかったと思います。信じる人もいないただ吠えるだけだった蛙が、命尽きようとも守りたいと思えた人物ができたというだけでも感動ですし、少年ながらの純粋さが表れているのもとても良かったです。また全てを教えてくれて成長させてくれた師匠を何があっても守るという信念が、凄まじい棒術や後半の声色、目の演技で伝わってきました。
兵衛と道賢の最後の場面では、師匠を守りたい、これからも着いていきたいという少年ながらの気持ちと、兵法者である師匠の意思を弟子として引き継がなければという葛藤がひしひしと伝わってきました。才蔵の棒術があれば、兵衛を生かすこともできたかもしれないが、師匠が地に突き刺した六尺棒を抜かず握りしめ、自分の頭で考えろという言葉を胸に、何もせずグッと堪え、師匠の最後をただ見守るシーンがとても印象に残りました。
何度観に行っても飽きない、むしろ回数を重ねるごとに新しい発見があり面白さが増す映画だと思います。(既に3回みました笑)
最高の映画です。