劇場公開日 2024年9月27日

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「コンクリートの打ちっぱなし」Cloud クラウド つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5コンクリートの打ちっぱなし

2025年6月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

黒沢清監督はバツグンにいいショットを撮れる人なのだけれど、逆に言えばその一点突破型の人でもある。つまり、アクが強くて観る人を選ぶのだ。
私も以前は黒澤監督を苦手だと思い、一時は「もう観ない監督」のレッテルを貼った。
しかし同監督の「CURE」を観て、そのあまりの面白さに少し考えを変えることになった。

巷で評判の悪い本作は、かなり期待して観ることになった。なぜならば、評判が悪いということは「CURE」のような娯楽性はなくとも、全開に突き抜けているに違いないと思ったからだ。
私が黒澤監督に求めるものは突き抜け感のみなのだ。

やはりというべきか、物語のほうはある程度目茶苦茶なのである。表面に見えている物語は、だが。
内に潜む物語のほうはしっかりしている。
それを表現するような、ディストピア風で寂れた温かみのないショットの連続は面白さしかない。
ほとんどの画が金属とコンクリートで、その中で生きるキャラクターにはある意味で生すら感じない。荒廃した生き物のいない世界で動いている者たちとは何なのかと考える。
そしてそれは、映画用に極端に表現されてはいるものの、現代に生きる一部の人と重なってしまう恐ろしさ。
この作品のわけが分からないって?。私には現実でも大して変わらない、わけの分からなさを感じる。

菅田将暉演じる吉井はサイコパスだ。いかなる状況でも自分のこと(彼の場合は出品物が売れたかどうか)しか考えていない。ハッキリいってヤバいヤツだ。
しかし物語が進むにつれ、吉井はまともな方にみえてくるくらいヤバい人だらけになっていく。
吉井がまともに見えるって相当おかしいよね。でもそうなる。つまりそれくらいこの作品は目茶苦茶だったわけだ。そしてそれが最高なのである。

吉井の新居、コンクリートの打ちっぱなしで倉庫のようだ。それだけでも観た価値ある。

つとみ
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