「職人技」Cloud クラウド Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
職人技
黒澤清とジャンル映画の距離感が面白かった。
湖畔の屋敷といえばサスペンスもの。停電したり不気味な人影はホラーもの。銃でバンバン人が死ぬのは西部劇かアクションもの、そしてラストはやくざもの。
ジャンル映画には観客と監督との間に約束のような暗黙の了解があるから、観客は安心して楽しめる。
ジャンル映画特有のマジックによって、観客はこの時ばかりと単調な日常生活から逃れ、スクリーンの映像とストーリーを満喫するのだ。
面白い映画は、こうしたジャンル映画にその時々の社会状況やテーマを織り交ぜて巻き直すことで、観客に新鮮な感覚を与える。
本作も、転売ヤー、闇サイト、嫉妬やマウント、晒し上げ、無敵の人などなど、現代の問題をきちんと切り取りつつ、無意識な悪が絶対的な悪の手中に落ちる奇妙な物語を提示してくれた。
ショットとショットのつなぎなんか最高にワクワクしたし、銃の音とか、闇バイトが落ち合うレトロなゲームセンターとか、随所に職人技を感じた。
ラストは空飛ぶ車であちらの世界(地獄)に行ってしまった主人公。〝Cure〟でも役所広司が空飛ぶバスであちら側へ行ってたよね。
黒澤清らしさで締めてくれたのがまた安心感があって最高だった。
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