「雲のように広がる悪意と暴力」Cloud クラウド ヨークさんの映画レビュー(感想・評価)
雲のように広がる悪意と暴力
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転売=悪と決めつけた名前も知らない人たちが寄ってたかってひとりの人間を追い込む姿は匿名で誹謗中傷を繰り返すネット上の現実そのもので、それをより分かりやすい形で表現したのがこの映画。
そういう意味では非常にアイロニカルで、主人公が激しい銃撃戦の末に生き残った直後に商品の売れ行きを確認する姿や味方のように見せてクレジットカードだけを強奪しようとする女などかなり痛烈な皮肉として描いている。
理不尽に迫り来る暴力を排除するのもまた違う暴力の存在で、このあたり表現に容赦がない。日本人監督らしからぬ印象さえ受ける。黒澤清監督だからこそ成し得た作品か。
個人的には、分かるけどちょっと直接的過ぎてどうなん?と思ってしまうけれど、まあこれはこれで良いのかな。前半の得体の知れない何かの影に怯えるシーンなどは監督らしさがあって好きだった。
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