「こんなキヨシ映画を待っていた…」Cloud クラウド yudutarouさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなキヨシ映画を待っていた…
菅田将暉主演での黒沢清新作、なので時々発生する人気有名俳優主演で予算多めのキヨシ映画のパターンなのかなと勝手に想像してたんだけど、とんでもない怪作、というか観たかったキヨシ映画であり、傑作だった。ヤバい。冒頭から日常の続きのように画面が始まって、そのまま不穏なキヨシワールドにどっぷり浸かって、ニヤニヤし、ハラハラしっぱなしの2時間超だった。
とにかく菅田将暉がここまでキヨシワールドにハマるとは思っても無かった。しかも口髭を蓄えた佇まいはちょっと黒沢清みたいにも見えてきたし。そして菅田将暉だけでなく、キャストのほとんどが善人なのか悪人なのか曖昧な、タイトル通りに雲のように不定形な存在感を醸し出していて素晴らしく、怖かった。それが前半では菅田将暉の部屋を訪ねてくる荒川良々のシーンを筆頭に普通に存在する狂気としてサスペンスを盛り上げるし、後半はどこにでもいるような人が銃器を持って繰り広げる、ちょっと見たことがないけど、日本が舞台ならこれがリアルだよな〜というガンアクションに活かされていた。しかもリアルな人間像だけではなくて、助手の佐野くんという漫画的なキャラクターも出てきて、虚構としての飛躍の楽しさもバッチリだった。
廃工場、ビニール幕などいつものキヨシ映画印もふんだんに登場するし、スクリーンプロセスなどは今回演出的にも必然性があったりして、ちょっと集大成的な作品にも思えるほど隅々まで黒沢清的。なのにちゃんとアクションエンターテイメントとしても面白くて、役者も全員良い。で、前半も後半も怖くて笑えて楽しいという映画。最高だった!
コメントする