「面白さはあったのですが‥」Cloud クラウド komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
面白さはあったのですが‥
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
正直に言うと今作の映画『Cloud クラウド』は、個人的には食い足りなさがありました。
食い足らなさの1番の理由は、果たして映画の題材になっているネットのオークションサイトについて黒沢清 監督はちゃんと調べて脚本演出しているのかな?と疑問に思われた点です。
主人公・吉井良介(菅田将暉さん)は、オークションサイトの出品者で、潰れた会社から商品を買い叩いて仕入れたり、偽物をろくに確認せずに出品したりして儲けています。
しかしながら、現実のオークションサイトを利用した人のほとんどが知っているように、出品者は(サイトによっては購入者も)マイナンバーカードなどの身分証の登録が必要で、出品者や購入者にはレビューが付き、悪質な出品者はレビュー等で淘汰され、法令違反の出品者はバンされるのが通常だと思われます。
つまりそもそもこの映画で描かれたような悪質出品者が存在し続けられるかは、サイトのシステム的に疑問が出て来ます。
であるので、それが発展して今作で描かれたような、偽商品の購入者や安く買い叩かれた人達が出品者に恨みを持って襲い掛かるのは、いささかリアリティがないように感じました。
つまり、黒沢清 監督のイメージが先行して、現在の社会から遊離して映画が描かれているように私には感じられたのです。
そうなると映画の評価としては厳しくならざるを得ません。
(もちろん一般の観客がどのような評価をするのかは自由で開かれている必要はありますが)
『蛇の道』でも思われましたが、黒沢清 監督のイメージ先行で具体的な細部の現実リアリティから遊離した作品を、映画評論家の人達が持ち上げ続けるのも罪が深く、映画の世界に閉じこもり現実社会リアリティを知らないままで他作品含めて映画の評価をしているのではないかとの、(他作品の採点合わせて)専門家への疑念も湧き上がります。
今作がアメリカアカデミー賞の国際長編映画賞 日本代表作品になっているのも罪深いことだなとは僭越思われました。
菅田将暉さんを初め、秋子を演じた古川琴音さん、佐野を演じた奥平大兼さんなど、俳優の皆さんは素晴らしかったと思われます。
黒沢清 監督作品の特有の映画の雰囲気の良さは相変わらずあったので、俳優陣の皆さんの素晴らしい演技と合わせて、僭越ながら今回の点数となりました。