劇場公開日 2024年9月27日

「倍返しが過ぎる「喰らう怒」(フラグ付き)」Cloud クラウド LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0倍返しが過ぎる「喰らう怒」(フラグ付き)

2024年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

 公開週なので番宣以上には本筋に言及しません。
 良くも悪しくも黒沢清。前半と後半でテイストが変わると言っても、常に不穏で居心地の悪い黒沢節が貫かれてる。監督のファンには通常運転なのでお勧めかも。
🌨️
1. 罪と罰が釣り合わない
 番宣やTrailerで明かされているように、転売ヤーが突然襲われるスリラー。転売で買った恨みが晴らされるのだが、罪に対して仕返しのタガが外れ過ぎている。転売で損させられた被害者も、そもそも自分でネット等で売り捌く努力を怠っていたり、本物と謳わず捨て値で売られた商品が偽物だったと怒るのも滑稽。主人公のヤリ口がアコギなのも確かだが、後半の仕返しも常軌を逸している。
 これはネットにおける過剰な炎上や、マスゴミも一体となったタコ殴り体質に重なる。起こした不祥事に犯罪性もなく、当人同士は謝罪で収まっていても、ネット民とマスゴミの総攻撃で表舞台から抹殺される。時には、不祥事の原因になった言動と同じかより不適切な雑言が投げつけられる。批判対象を個人に定めた烏合の衆の集団心理こそスリラー。

2. 親切なフラグが立ち過ぎ
 序盤から終盤を予測できる程、単純なプロットではないが、随所に分かりやすくフラグが目立つ。伏線は回収のされ方が解らないように貼るものだが、本作ではこの人これからアレしまっせと説明するようなカット(flag?)が散見される。親切ではあるが、いきなり結果を観せてからフラッシュバックで準備段階を種明かしされる方が、驚きがあって個人的には好き。
🌩️
3. 何故HDD? 10年以上前?
 本筋には関係ないが、本作中で頻出するPCは常にHDDがカリカリ音を立ている。PCからHDDを取り出す場面もあるがSSDは取り出さないので、WindowsをHDDから起動していたたらしい。ご存知のように、HDDからのWindows起動は耐え難い程遅い。主人公が睡眠中もPC付けっぱなしなのは其れが原因っぽい。ただ現在はほぼSSDに置き換わっているし、付けっぱなしよりスリープやスタンバイにする場合が多い。10年以上昔?とも邪推したが、だからといってストーリーには関わりない。
🌧️
4. Cloud?
 本作のテーマは1で述べた事に帰結しそうだが、表題のCloudって何? IT用語のcloudは、高度な計算処理や大容量の情報記憶をネット状にあるサービス(機器群)に任せる利用形態で、ユーザーはスマフォやシンクライアント等非力な端末から利用できる。
 ただ、本作で関連しそうなのは転売で利用するオークションサイトぐらいで、cloudと呼ぶほど大袈裟なサービスじゃない。またHDDを取り出して情報を守ろうとする際にも、大事な情報をcloudに分散させてないの?と多くの観客がツッコミそう。烏合の衆もネットを介して集るけど、それってPC通信の頃からやってへん? cloudって概念が出来るかなり前からある掲示板サイトで十分な交流。
 なので本作はcloudよりinternetの方がより本質的な気がする。

コメントする
LittleTitan