「バレエに対してリスペクトのない人物は、何を演じさせても心を動かせないと思う」ネネ エトワールに憧れて Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
バレエに対してリスペクトのない人物は、何を演じさせても心を動かせないと思う
2024.11.8 字幕 イオンシネマ京都桂川
2022年のフランス映画(96分、G)
エトワールに憧れる黒人の少女を描いたバレエ映画
監督&脚本はラムジ・ベン・スリマン
原題の『Neneh Superstar』は「ネネはスーパースター」という意味で、劇中で父から娘に当てられた手紙の文言
物語の舞台は、フランスのパリ
12歳の少女ネネ=ファンタ・シャオレ(オウミ・ブルーニ・ギャレル)は、父フレッド(スティーヴ・ティアンチュー)の協力を経て、憧れのエトワール、マリアンヌ・ヴィラージュ(マイウェン)が校長を務めるオペラ座バレエ校の入試を受けることになった
試験の演技を経て、マリアンヌは難色を示すものの、他の審査員は才能を認めて入学を許可した
物語は、バレエ学校の生徒となったネネが白人の生徒たちと一緒に授業に向かう様子が描かれ、そこであからさまな人種差別を受ける様子が描かれていく
とは言え、ネネ自身の素行の悪さも相まっていて、人種差別なのか、単なる育ちの悪さに嫌気が差しているのかわからない感じになっている
教師にタメ口を使い、出来もしないのに率先してアピールして呆れさせる
慢心と表現されていたが、どちらかと言えば自信過剰で、実力も伴っていないのにしゃしゃり出て教室の雰囲気を悪くさせているだけのような気がする
マリアンヌは断固としてネネの否定派だったが、その理由はが「彼女の活躍が多様性の支持になって目立つから」みたいな感じになっているのがよくわからなかった
演目選びにも白人が主人公の物語にこだわり、練習でもあからさまに無視をする
その行動が生徒の言動を肯定することに繋がり事件へと発展していく
物語の大枠を見ていくと、多様性の主張というものが捻じ曲がっている感じがして、才能あれば行動には目を瞑るという価値観がネネを支えているように見える
教師に敬意を払うことももちろんだが、同級生へのリスペクトもないし、作品やオペラ、バレエの歴史にすらそう言ったものを持ち合わせていない
それが12歳の精神性だと言われればそれまでだが、わざわざ波風を立てるような業界に来てゴリ押しするよりは、バレエとヒップホップを融合した新しいカルチャーで世の出た方が良いように思える
ネネがエトワールに憧れる理由は希薄で、部屋にポスターが貼ってあるぐらいしかわからない
マリアンヌが憧れだとしても、彼女にすら敬意を示さないのは意味不明に思える
後半に明かされるマリアンヌの出自問題を考えれば、彼女がネネの良き理解者であるはずなのだが、そう言った人でも立場が変われば人種差別を平気で行うということなのだろうか
自分の味わった苦労をさせたくないという感じにも思えないので、全体的にキャラがブレブレになっているように思えた
いずれにせよ、白雪姫を誰が演じようが問題ないと思うが、その物語の精神性を理解し、観客に伝えられる才能があれば良いと思う
逆境に対して、白人に生まれたかったとネネは言うが、白人だからと言って差別されないわけではない
彼女の家庭がそのまま白人家族だとしても、彼女の素行に教師は苛立つし、底辺階級として見下されて、富裕層の子息からはキツく当たられるだろう
その辺りを踏まえて、誰が味方で誰が敵であるのかを設定として整え、変化するのが主人公である、と言う基本に忠実だった方がわかりやすい
ネネの本音を知ってマリアンヌが変わると言うのであれば、マリアンヌ目線で物語を作る必要があり、そうなるとタイトルからすべて変えなければならないのではないだろうか