「母親と乳母の間にある絶妙な距離感は、クレオを闇へと引き摺り込んでしまった」クレオの夏休み Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
母親と乳母の間にある絶妙な距離感は、クレオを闇へと引き摺り込んでしまった
2024.7.17 字幕 アップリンク京都
2023年のフランス映画(83分、G)
乳母との別れを惜しむ6歳の少女を描いた青春映画
監督はマリー・アマシュケリ
脚本はマリー・アマシュケリ&ポーリーヌ・ゲナ
原題は『Àma Gloria』で、「グロリアとの時間」という意味
物語の舞台は、フランスのパリ
乳母のグロリア(イルサ・モレーノ・ゼーゴ)に育てられた6歳の少女クレオ(ルイーズ・モーロワ=バンザニ)は、まるで親子のように近しい関係を築いていた
父アルノー(アルノー・ルボチーニ)は温かい目で二人を見守り、過剰なまでの干渉に口出しすることはなかった
ある日、グロリアの母が亡くなったとの知らせが入り、急遽母国のカーポ・ベルデに帰る事になった
実家には娘ナンダ(アブナラ・ゴメス・バレーラ)と息子セザール(フレディ・ゴメス・バレーラ)がいて、ナンダは出産を控えていた
母の急逝によって、ナンダのサポートをする必要も出ていて、とてもフランスにいられる状況ではなかったのである
その後、駄々をこねるクレオを見かねた父は、夏休みの間だけ、グロリアのいるカーポ・ベルデに行かせる事になった
クレオを快く思わないグロリアの家族たちは距離を置き、言葉が通じない中で徐々に孤立していく
グロリアは生まれたばかりのナンダの赤ちゃんにつきっきりになってしまい、クレオは良からぬ感情を抱える事になってしまうのであった
6歳の闇落ちを描いている内容で、乳母離れができない少女を描いていく
赤ちゃんがいなければグロリアが帰ってくると考えてしまうものの、その不穏さを見透かされて暴挙に出るなど、痛々しい場面も多い
だが、クレオを追い詰めているのはグロリアをはじめとした大人たちであり、乳母としての距離を取らなかった弊害が生まれている
クレオ自身にはそれを判断できる能力があるわけではないので、大人側が行く末を考えた上で距離感を取る必要があったのではないだろうか
いずれにせよ、5歳で演技に挑戦したと言う内容で、自然体ゆえの無邪気さがそこにあった
クレオの心情を完全に理解しているのかはわからないが、それらをうまく想像させて演技させているのはすごいことだと思う
パンフレットにはインタビュー記事が載っていて、一番簡単だったのは海に飛び込むシーンだったとのこと
色んな意味ですごいものを見たなあと感じた