「レギュレーションとコンプライアンスに絡め取られた教員室。カーラ先生の真摯な姿勢が心を打つ。」ありふれた教室 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
レギュレーションとコンプライアンスに絡め取られた教員室。カーラ先生の真摯な姿勢が心を打つ。
原題の「Das Lehrerzimmer」は「教員室」という意味になる。邦題はストーリーに一般性を与えるためかどこでも起こり得る話ですよ、という気持ちを込めて「ありふれた教室」というタイトルにしたんだろうけど、これは教室で起こった事件ではない。学校のガバナンスについての物語である。
一つはっきりしているのは校長のリーダーシップのなさと、教師たちの定見のなさ、混乱である。
まずは最初の盗難の件で生徒の持ち物検査をしてしまったこと(この盗難はどこで発生したのかを見落としてしまった。映画館内でスマホを点灯した馬鹿者がいて気を取られたから。横浜シネマリンの7月11日13時10分の回、E列に座っていたお前だよ)、そしてカーラ先生の上着からお金が抜かれた件でカーラ先生が撮ったパソコン映像によって犯人を決めつけてしまったこと。要はこの校長は自分で不寛容主義と言っているようにレギュレーションには厳格なのだが、コンプライアンスについての考え方がゆるゆるなのである。
誰からも同意を得ていない動画(盗撮と言ってよい)の証拠能力ぐらい少し考えれば分かりそうなんだけど。ここはまだクーンを犯人として決めつけず、信用できる数人での監視を強化するってくらいが適切だったのだと思う。
これから教員になろうとする方は、学校はあんなひどいところだと思わないでください。実際の教育機関のガバナンスは今はもっとマシです。
可哀想なのはカーラ先生で、保護者には突き上げられ、生徒にはボイコットされ、学校新聞にはボロクソ書かれます。ただそれでも彼女は教育を放棄せずもがき苦しみます。そしてオスカーに対する態度は真摯であり(普通はあの母親の子供だっていうだけで嫌になると思うが)彼に向かい続けます。最終的にはオスカーについては残念な結果になったようですが(それもおそらくあの校長の差し金だと思うけど)カーラ先生の姿を観ている限りではそれほど後味は悪くないです。ところでカーラ先生を演じた女優さんですがちょっと市川実日子さんに似てませんか?