「これで成功と言っていいの?」燃えるドレスを紡いで La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
これで成功と言っていいの?
パリのオ-トクチュール・コレクションに参加し続けている唯一の日本人デザイナー・中里唯馬さんが、環境問題に対してファッション界から新たなヒントを産み出そうとする姿を追ったドキュメンタリーです。
まず、中里さんが訪れるケニアの廃棄物処分場の姿に愕然とします。ここには使用済みになった衣服が世界中から集められて、巨大な山脈の様にうず高く積まれています。そこへ地元の貧しい子供らが集まって来て、まだ売れそうな衣服を拾い集めるのです。こうして一日働いても200円ちょっとの稼ぎにしかなりません。世界中で製造される衣服の殆どは天寿を全うする事なく飽きて捨てられ、この山に辿り着いて子供らの僅かな日銭になるのでした。ファッション業界の頂点に立つ世界で働く中里さんは、こうして捨てられた衣服を用いて先端ファッションを生み出せないかと模索を始めます。
様々な試みと失敗を経て、ファッション・ショーを大成功を収め、彼のコンセプトには賛辞が送られます。
「えっ? でも・・」
と僕は戸惑ってしまいました。「大成功」と言っても彼がデザインするのは、オートクチュール、つまり一部のお金持ちの為の高級仕立て服に過ぎません。パリで絶賛され、彼の服が高く売れたからといって、ケニアのあの少年の日銭が1シリングでも増える訳ではないのです。彼のコンセプトが一流ファッション雑誌で認められたとしても、「衣服の廃棄を減らそう」との世界的な動きになるとはとても思えません。
そんな批判は、中里さんも、本作の制作陣も承知の上の事でしょうが、それでも「ショーは成功した」と言って良いのかなぁの戸惑いは深く残りました。
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