「大胆さと繊細さを兼ね備えれば、大抵のことは何とかなるのかもしれません」東京カウボーイ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
大胆さと繊細さを兼ね備えれば、大抵のことは何とかなるのかもしれません
2024.6.26 一部字幕 アップリンク京都
2023年のアメリカ映画
日本のビジネスマンがアメリカのモンタナにて和牛ビジネスを始めようとする様子を描いたヒューマンドラマ
監督はマーク・マリオット
脚本は藤谷文子&デイブ・ボイル
原題は『Tokyo Cowboy』
物語は、日本のある都市にあるチョコレート工場を視察する会社員・坂井英輝(井浦新)を描き、買収を成功させる様子が描かれて始まる
英輝は、コスト削減のためのアイデアを実現させ、それは社長の三輪(岩松了)を喜ばせた
そして、次の事業として、モンタナの牧場再建のアイデアをぶち上げるものの、それは上司かつ副社長の増田けい子(藤谷文子)を驚かせることになった
実は英輝とけい子は恋人関係にあり、彼はモンタナのアイデアを事前に通していなかった
けい子は計画を無謀だと思い「大きく出たわね」と言い、英輝は「大きくでなきゃ上には行けない」と答えた
映画は、英輝と和牛ビジネスのアドバイザー・和田(國村隼)が現地に向かう様子を描き、「レイジー・リバー牧場」の経営者ペグ(ロビン・ワイガード)たちと交流を深めていく様子が描かれていく
牧場には、案内役を任されるハビエル(ゴヤ・ロブレス)の他に、レオン・ダラハイド(ガブリエル・クラーク)、フィル・ウェイド(ジェフ・メドレイ)、ブレイス・フィルモア(ザック・トーマス)たちが従事している
英輝たちが泊まるモーテルの受付シンディ(スコット・スミス)はアニメが大好きで、暇を持て余しては、デバイスでそれらを視聴していた
難しい話に入る前に懇親会と呼ばれるジャブが入るのだが、下戸の英輝は飲めず、調子に乗った和田はロデオマシンで大ケガを負ってしまう
通訳がいない状態で話を進めることになり、プレゼンは完全に空振り状態で、話は一向に進まなくなってしまう
そこで英輝は、郷に入っては郷に従えを体現し、カウボーイ姿になって、乗馬などを始めていく
そして、彼らの仕事を体感していくことになるのだが、それらの報告を本社にちゃんと報告していかなった
その後、プロジェクトがどうなっているかわからない本社は、牧場を開発会社に売却する方向で動き出し、英輝はそれを方向転換させようと考えていく
そんな折、ハビエルが牧場内にて植物を育てていることがわかり、それをプロジェクトの一環に加え、牧場と農場を同時経営する案を思いつく
そして、本社から牧場を買い取ることで、存続させようと考えるのである
映画は、牧場どうするか問題と同時に、英輝とけい子の今後どうするか問題も浮上してくる
付き合いだして7年、家庭を作るかどうかを話し合って来なかった結果、けい子は自分が大事にされていないことを感じ、「ある決断」を胸に忍ばせていた
英輝はペグの助言を受け、けい子と向き合うことになり、そして自分が今後どうしたいかを話す
そして、内観した住宅を買って、そこで生涯をともに過ごしたいと思いを告げることになったのである
ビジネスにおける卓上の思考と現場の感覚のズレを描いていて、これまで数字だけで判断してきた英樹が考え方を改める様子が描かれていく
冒頭のチョコレート工場のチョコをおみやげとして持参していたのだが、それを食べたシンディが放つ言葉は辛辣でもある
これまでに良かれと思ってしてきたことは大部分で間違っていて、それに気づくための時間がモンタナの数週間だった
現地でこれまで続いてきたものの尊さを感じ、それを存続するための方策を考えるのだが、それこそが英輝の真骨頂だったと言えるのではないだろうか
いずれにせよ、モンタナの景色を眺めながら、そこにいる感覚になって、英輝を愛でる内容になっていた
女心がわからない英輝だが、惚れた弱みにとどめの一撃を贈ることができるのは天性の人たらしの部分があったのだろう
これまではビジネスの世界でそれを発揮してきたのだが、最後にはけい子に届けられたのはよかったと思う
そういった意味において、モンタナで天然温泉を見つけることができた英輝はラッキーだったのかな、と感じた