「現代性が欲しかった」東京カウボーイ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
現代性が欲しかった
井浦新扮する日本企業に勤めるサラリーマンの坂井英揮が、買収したアメリカ企業の傘下にあるモンタナ州の不採算牧場を立て直すために渡米するというお話でした。監督のマーク・マリオットはアメリカ人、主演の井浦新は日本人男優ということで、外国人監督と日本人男優の組み合わせは「PERFECT DAYS」とも軌を一にしていますが、日本制作だった同作とは異なり、本作はアメリカ制作の外国映画でした。
井浦新が主演ということで観に行ったのですが、その点では満足が行ったものの、お話の方はちょっと残念でした。その理由は、主人公・坂井英揮が体現する日本人像が、いかにも1980年代の元気だった頃の日本人像で、現代性が全く感じられなかったからでした。英揮は、婚約相手にして上司でもある増田けい子(藤谷文子)のことを顧みず、仕事第一主義のモーレツ仕事人間。アメリカ企業を買収して不採算部門を切り捨てようという日本企業の存在も含め、”リゲイン”を飲んで24時間戦っていた頃の日本ならいざ知らず、今や落日の日出ずる国となった昨今の日本の状況とはあまりにかけ離れた感じがして、全く呑み込めませんでした。
井浦新の演技以外にも、モンタナ州の広大な牧場の風景や、英揮が四苦八苦しながら乗馬するシーン、國村準演ずる和田直弘のいい加減な雰囲気満載の演技など、面白かった部分もあっただけに、もう少しストーリーに現代性を入れ込んで欲しかったなと思ったところでした。
そんな訳で、本作の評価は★3とします。
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