喪うのレビュー・感想・評価
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偉大なる死を描いた偉大なる映画
若干ヘビーな内容の作品だが、役者の演技も素晴らしく楽しめた。ラストシーンはダブルミーニングかなと思ったのは、自分だけか。キャリー・クーンがお洒落で素敵。こういう映画を見るとアメリカが好きになる。また日本語字幕の翻訳者も大変良い仕事をしていて映画の良さに輪をかけていた。原題を知っていると邦題がイマイチと感じるが、恐らく制作側が決めたものだろう。
深味がありました
異母違いの三姉妹…ひと昔前のドラマにありがちな設定ではありましたが各自の母親像が読み取れるほど姉妹それぞれの性格がうかがい知れる程
3女優の名演技に引き込まれました
大きな波がある訳ではなく舞台を観ている様な深没入な演出も引き立っていましたし
幻?的な父親の登場シーンもインパクトがありました!
次女の彼氏はいい奴じゃん!
秋の夜長にゆっくり観るのにハマりそうな作品でした!
三姉妹であり続ける
父親が病に倒れ、危篤状態に。
疎遠だった三姉妹が父の住むアパートに集う。
エリザベス・オルセンやドラマなどで活躍する実力派が出ているものの、見るからに小規模、インディーズ作品。
キャストもほとんど三姉妹を演じた3人のみ。ホスピス職員や次女の恋人はちょこっとだけ。病床の父親すら映らない。
舞台もほとんどアパート一室。実際に町中のアパートで撮影したという。
設定も凝った捻りなく。ドラマチックな展開も起きない。
映画的な大きな見せ場はないが、映画ならではの醍醐味はある。
静かながらも緊張感走り、ワンシーン/ワン・シチュエーション、キャストの熱演…。こういう時、映画は化学反応を起こす。
何やら自分の家族親族や身内との死別時の事を色々思い出してしまった。
私の母も三姉妹。母は末の妹。
長女は真面目で几帳面。次女は商売人。末妹の母はどちらかと言うと甘やかされて育ち…。
親族が集まった時、仲良しこよしな三姉妹という感じではなく…。何と言うか、ちょっと他人行儀みたいな所があり…。
祖父が亡くなり、母が借金を背負った事で、絶縁。もうかれこれ20年以上は会っていない。
ま、遠方に住んでいるし、会う理由もないし、別に会いたいとも思わないけど。
劇中ほぼずっと聞こえる父親の心拍音。私も母方の祖父、父方の祖父母、両親を看取った時、病院に寝泊まりして、静かな病室にあの音だけが響いて…。
映画としては非常に単調なプロット。しかし、自分や家族親族に重ね合わせられる点が多い。
長女ケイティ。真面目で神経質。
次女レイチェル。マリファナやスポーツ賭博好き。性格も口調もガサツ。
三女クリスティーナ。柔和で泣き虫だが、ちょい裕福暮らしが滲み出る。
疎遠で性格もバラバラ。さらに、次女レイチェルは血の繋がりは無い。
そんな三姉妹が集ったら…? 静かな作品だが、怒涛のような何かが起こるのはすぐ分かる。
初っ端からケイティがレイチェルにくどくど、くどくど。
レイチェルは父と暮らしている。にも関わらず、延命処置拒否の書類にサインしていない、冷蔵庫に腐ったリンゴなど生活能力の無さにまた小言が多くなる。
レイチェルもレイチェルで聞いているような聞いていないような。外にマリファナ吸いに行ったり、スマホのスポーツ賭博が気になったり。それがまたケイティを苛々させる。
クリスティーナが場を穏やかにしようとするが、彼女も時々感情爆発したり、泣き出したり…。
些細な事、事ある毎に、何かが起きる。
普通の会話の中、食事中の会話の中でも、ちょっとした受け止め方の違い、すれ違いやズレで気まずくなる。
ケイティとクリスティーナは家庭持ち。自慢したいのか…? 各々事情も抱えている。いっぱいいっぱいをアピールしたいのか…?
父が亡くなったらこのアパートはどうする…? レイチェルが住んでいるのだからそのまま相続すればいい。ところが当のレイチェルは、アタシはアパートは要らない。それでまた言い合いに。
恋人は要るが姉妹の中で唯一独り身。性格も生活能力もダメダメなのは本人が一番分かっている。二人に対して劣等感も…。
プラスして、血の繋がりが無い。病床の父は実の父ではない。そんな気後れもあってか、姉妹が来てからは父の部屋へ入ろうとしない。
各々、何かを抱えている。悩んでいる。
もっとこう、しかと話せば分かり合えるのに、寄り添い合えるのに、それとは違う感情が出てしまう。
愛する肉親の命が消えようとしている。不安は隠し切れない。だから余計に過敏に。
各々の感情や本音が時に辛辣に、時に胸に染み入るように、露になっていく…。
基本は何かと言い合い。果ては口論、大口喧嘩までに。
一方ちょっとした事やヘンな事で共感したり。
姉妹は兄弟よりフシギな関係。
それを体現したキャリー・クーン、ナターシャ・リオン、エリザベス・オルセンのアンサンブルが素晴らしい。
マーベル作品に出演したりして一番人気や知名度あるのはオルセンだが、彼女もキャリアの始まりはインディーズ作品だった(『マーサ、あるいはマーシー・メイ』)。
甲乙付け難いが、とりわけリオンがインパクト残す。ガサツな性格が時折ユーモア醸し出し、心底で抱える劣等感が哀しさ滲ませる。
圧巻だったのは、父親への思いを吐露するシーン。実の父ではない。でもアタシにとって父親は、今病床のあの人!
オスカーノミネートがあるとすれば、リオンだろう。(小規模配信映画なので可能性は低いだろうが、是非!)
インディーズで幾つか作品を発表していたらしいが、いずれも日本未公開。
今回配信という形だが、アザゼル・ジェイコブス監督の作品を見たのは初めて。
その演出力は紛うことなき。
キャストから名演引き出し、ワン・シチュエーションで何の種も仕掛けも無いが、時にスリリングにエモーショナルに、見るものを引き込ませる。
種も仕掛けも…と言ったが、“最期”の意外な見せ方。こう来たか…!
躍進期待。
ラストも概ね想定は出来る。
チクチク言い合い、感情ぶつかり合っても…。
愛する肉親を喪ったからこそ、改めて想う。ひしひしと感じる。
そもそも関係修復絶望って訳ではないのだ。疎遠だっただけ。またこれを機に。
三姉妹であり続ける。
余韻も残る。
見逃さなくて良かった。
良作であった。
大事な大事な三姉妹
父親の最期を看取るために集まった三姉妹。
ほとんど家の中(ちょっと裏庭も)で繰り広げられる会話劇。
それぞれが父親との接し方や思いが違い仲違いする三姉妹。
最後のシーンまで病床の父親の姿を見せないのはものすごく効果的。
バラバラの三姉妹が父親の死をきっかけに本当の気持ちを話す。
いろんな思いがあるが大事な姉妹。
打ち解けるシーンは感動モノでした。
父親の最期を看取るために集まった三姉妹の会話劇。父親の姿が描写され...
父親の最期を看取るために集まった三姉妹の会話劇。父親の姿が描写されないのは、性格も環境も違う姉妹がそれぞれの視点で違った父親像を持ち、すれ違ってしまうことを表しているんだと思う。そして父親からの視点の三姉妹が描かれるあるシーンが切ない。3人は分かり合えたのか、答えは...
三姉妹を演じるのは、ナターシャ・リオン×エリザベス・オルセン×キャリー・クーン。ナターシャ・リオンの演じるキャラがドラマ「ポーカーフェイス」の主人公そのままなので、スピンオフかよとちょっと笑いました。
演技という危険な行為
アザゼル・ジェイコブス監督による、
シンプルに言うと素晴らしいマジックショーだ。
種も仕掛けもない、
ただ役者たちが自分たちの身体一つで紡ぎ出す物語。
目鼻口、頬、額と眉骨、眉、手足、肩、全身で身体表現。
口頭、のど、腹で分けて発する言葉。
これらの要素を駆使し、
役者たちは観客を物語の世界へと鮮やかに誘い込む。
パトス(感情)を揺さぶり→レイチェル、
ロゴス(論理)で説得し→ケイティ、
クリスティーンは、エトス(品格、倫理、勇気)を巧みに操りながら、
キャッチボールを繰り返して、
エンジェルと対応,
エンパシーに近づいていく。
状況に応じて意識する体の場所を的確にコントロールしながら、
役者たちはまるで魔法使いのように観客の心を操る。
観客は3姉妹の、一長一短、
一長を理解し、一短に共感していく・・・
この一短に共感させていく技術がマジックショーのよう。
感情のコントロールと演技
本作のような芝居は、
感情をコントロールできる高い技術が不可欠だ。
感情に任せて演技することは、
時に取り返しのつかない状況をもたらす。
役者は、感情を理解し、コントロールし、
表現する高度な技術を身につける必要がある。
それは、メンタル面の訓練も要求される、ある種の職人技だ。
演技の重要性と教育
演技は、単なるエンターテイメントにとどまらない。
他人とコミュニケーションを取り、
理解し合うための重要なツールだ。
欧米では、医師や法曹等、国家試験が必要な職業と同様に、
役者も高度な専門知識と技術を必要とする職業と認識されている。
そのため、演技は小中の義務教育課程でカリキュラムに組まれている国が多く、
コミュニケーション能力を育むための基礎的な科目として位置づけられている。
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