倭文(しづり) 旅するカジの木のレビュー・感想・評価
全1件を表示
堅牢な土台の上での創造
例えば、映画やドラマで観る卑弥呼は衣服を身に着けています。でも、あの服って一体何の素材から出来ており、それをどう織ったのでしょう? それを確かめるべき同時代的文献もない中で、「昔の日本人は何を着ていたのか」の疑問から、素材としてのカジノキに辿り着き、それを最新の科学的手法で証明し、どこから伝わったのかまで検証し、その上でそれを再現し、更に現代の新しい布にまでしようとする試みを描いたドキュメンタリーです。
まず、古代の布はカジノキで出来ていたと言う事を想像だけで突っ走らせるのでなく、一つ一つ事実を押さえて検証する手順が素敵です。それがこの映画の信頼性を高め、堅牢な土台を築きます。それがあればこそ、現代の織師、染色家、紙漉き職人などの人々の試みが輝きます。過去から現在そして未来へのその道筋が出来て行く過程は見ていて「カッコいいなぁ」と思えました。
そして、羨ましかった事。僕はアルマーニのスーツを着たいなんて全く思わないし、リーバイスのビンテージ・ジーンズを穿きたいとも思いません。しかし、本作に登場する職人さん達の着ている普段着のセーターやシャツは素朴なのにとても魅力的でした。手を伸ばしてその風合いに触れてみたいと思う程で、色合いも派手さはないのに惹かれます。本当のおしゃれってこういう事なんだろうなと妙な所で感じ入ったのでした。
コメントする (0件)
共感した! (0件)
全1件を表示