「アメリカの核心を突く"揚げ足取り"」アメリカン・フィクション とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アメリカの核心を突く"揚げ足取り"

2024年2月28日
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この作品について考えれば考えるほど、その目を見開くほどの恐ろしい面白さに気付かされる。彼らが聞きたいものだけ聞きたいような形で語られ、流行りモノのように世の中に溢れる白人のための免罪符。そんな耳の痛いお話を実によくできた構成・語り口で無駄なくまとめ上げている手腕に思わずうっとりするほど唸ってしまった。真に知的で挑戦的かつ時に爆笑できるほどのユーモラスさを忘れない。そして、それらを体現する主演ジェフリー・ライトの素晴らしさにお見事。
始めよう、まずは誰から?主人公は(格式高い)文学作品を書く小説家であり同時に博士として教鞭をとっているが、あまりに時代の流れにそぐわないハッキリとした不適切な物言いがために、休職になってしまうところからこの物語は始まる。今の風潮を皮肉り倒した、ファストフードみたいな味付けの画一的ステレオタイプな侮辱的黒人描写満載の"ザ・黒人"な本を書いたら、まさかのそれが大当たりしてしまって…?! 主人公自身がうんざりと軽蔑している偽善の核心へと迫ることとなる。真実を打ち明けます…ファック。

まず主人公モンクは医者一家の出であるということ。つまり、作中お金に苦労する描写もありながら、基本的には金持ちの出である(家政婦もいる)。それは、彼もまた実際には侮辱的表現満載の"黒人のエンタメ"で描かれるような、黒人は"ストリート"で"ラップ"を歌って"ドラッグ"して最後は"警察に殺される"という生き方とは無縁な人生を過ごしてきたということ。それ以外の生き方もある。
あと、主人公の兄弟がゲイという設定も、"黒人エンタメ(ビジネス)"同様に、ゲイもまた"LGBTQエンタメ"として流行りモノ・風潮のように消費搾取されているということではなかろうか。そう、本作はアメリカに限ったことではない。今を生きる私たち皆にとって、大いに笑えて時に痛い今を映し出す"フィクション"。
作中出てくる黒人女性作家と"ザ・白人"な映画監督が如何にもな形でそれぞれの立場や主張を体現していて、(少しムカつきながらも)作品として良かった。また、モンクがそうした冗談みたいに不本意な作品でも乗っからずにはいらない(ex. ずっとシャツしか着ないのに突然Tシャツ姿に(笑)w)、大金が入り用な理由もしっかりと尺を割いていて、本作を見ていると全編通していて理に適っている・納得のいくキャラクターや展開が気持ちよかった。

"So much death."
MY PAFOLOGY
FUCK
「皆お前を愛したい、俺には分からないが。愛してもらえ」
「罪悪感から逃れたい白人のために書いている」「君の本と違いが?」
「今こそ黒人の声に耳を傾けるべき」
天才は孤独
"Gimme some real." 死ぬのか?サイコーだ!

P.S. 拳銃自殺した父親についてはまだ考え中…。

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とぽとぽ