劇場公開日 2024年6月14日

「ガルクラの参考として」数分間のエールを yudutarouさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ガルクラの参考として

2024年6月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

 娘と観てきた。今作と同じく花田十輝さんが脚本を手掛ける現在放送中のテレビアニメ『ガールズバンドクライ』(傑作、遂に今週で終わってしまう…)で感じたプロフェッショナルへのこだわりを『数分間のエールを』ではより鮮明に感じて興味深く観た。それは音楽を演る上での姿勢とか立場の話なのだけど、『ガールズバンドクライ』では主人公のメンター的存在の桃香が、商業主義に嫌気が差して一度は諦めた音楽の道へ再び進むか否かを逡巡するという物語があって、こちらの感覚としては多分桃香は職業として音楽を演るのでなく、純粋に音楽を楽しむこと、仲間と音楽をやることが手段ではなく目的そのものになることを目指すのだろうな、という風に展開を追っていたのだが、実際は桃香はプロミュージシャンになるという目的そのものには疑念とかは無く、その過程でちゃんと大衆に受け入れられるか否かということに気を揉んでいたという流れになっていて、そこはインディロックとか聴いてきた身の感覚でいくと別にプロとか売れるとか関係無しに好きな音鳴らすのが良いんじゃない?とか思ってしまった訳だが、日本の伝統芸能的ロックには成り上がり文化もあるし、妥協しない音楽をやって広く受け入れられたいというスタンスにも説得力があったので、それはそれで納得、という感じになった。で、今作『数分間のエールを』に登場するミュージシャンの夕は、ロックバンドでもなく、より個人発信的なDIYマインドの音楽をやっていながら、堅気の職業に就くかプロミュージシャンかという二者択一の視点しかなくて、さすがにこちらは『ガールズバンドクライ』の桃香と違って、学校の先生やりながらネット発信で音楽続ければよくないかと感じたのだが、そこはプロとして業界でサヴァイブしてきた脚本家の矜持やプロ意識が色濃く反映されての方向性なのかなと思えて、『ガルクラ』を読み解く上でも興味深かった、というわけで、今、頭が『ガルクラ』脳なので『ガルクラ』のことしか書いてないな…。
 一応この映画そのものの感想も…。いかにもCG画面なビジュアルと、そんなビジュアルでわざわざ昔ながらの記号的なアニメ表現(ズッコケる動作とか、デフォルメされた表情で感情表現する、とか)をやったりしているのが『映画』を観ている感覚から遠くて、慣れるまで作品に入り込めなかったというのはあったけど中盤からは慣れて前述の通り『ガルクラ』と比較したりして楽しんだ。尺がコンパクトなのも良かったよ。

yudutarou