デビルズ・バスのレビュー・感想・評価
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リアルなキモグロファンタジー
靄とか雲とか、霞がかった英三は非常に美しいし、生々しい自然物なんかの描写が素晴らしかったです。抑揚利いた音楽や音響なんかも秀逸で、作品にハマっていきます。ただ、内容は強烈過ぎるし、気持ち悪さを追求したかのような表現には、チープなホラーなんてぶっ飛んじゃいます。このグロくてキモい感じをどう処理できるか─それがこの作品を鑑賞する上でかなり重要なところ。一応、説明を見ればどんなにキモくても、納得はできる作品だと思いますが、あまりにもねぇ・・・これじゃあ嫌気が勝ったり途中退席されてもやむを得なしと─。
なかなか優れた作品だとは思うのですが、これは単なる皮肉なのか啓発なのかいまいち判断しかねるし、単にオモしろ半分で映像を追求したものだとしたら最悪。まぁ色々と解説があるので、単に─とは思いませんが、それも後付けで問題回避的なところも感じるんですよねー。
小難しくはありません。いたってシンプルで非常に分かりやすいと思います。質も高くて見応えはあります。それを素直に受け入れることがどうかだけだと思います。
子供のために─という趣旨のメッセージも込められていましたが、個人的には子供には見せない方がいいかもと─
オロロロロロロロ これが普通のエグいホラーだったらどれだけ良かった...
お、重い⋯
最初から最後までとにかく重くて息苦しい作品でした。しかし深くもありました。
あんな閉鎖的で暗鬱で自分とは違った価値観を持った人々(旦那も含めて)の中で生活していたら、そりゃあ頭もおかしくなるよな、とはじめは思いました。主人公の女の人が精神に異常をきたしてしまうのもわかるような気もしました。
しかし、この女の人も、虫の死骸を後生大事に持ち歩いていたりとか、それが自分が信じる何らかの宗教観に基づくものとはいえ、私自身からすると決して普通ではない感覚だとは思うのですが、そのような世界で生きてきたら、それが当たり前になり、その当たり前が通じない世界もまた彼女にとっては普通ではなくなるので、結局何が普通で何がそうじゃないのか、というのがもうわからなくなってしまいます。
しかし、これは現代にも通じるものがあるかもしれません。と言いますか、これと似たようことは(普通かそうでないか)、全世界全時代の底流にあるものなのかもしれません。
そういう、単に宗教観や時代観の違いにとらわれない、人間の根本的な部分での価値観の違い、あるいは多様さについて改めて考えさせられるような作品でした。
隣村に嫁いだ女性の悪夢
タイトルなし(ネタバレ)
18世紀半ば、オーストリア北部の小さな集落。
隣の集落(といっても周囲に他の家族は見当たらない)から嫁いだアグネス(アーニャ・プラシュク)。
夫ヴォルフ(ダーヴィド・シャイト)はその集落の長の次男坊。
新居を構えたが、ヴォルフの母がはやく集落の暮らしに慣れるようにと、アグネスを急き立てるように指導する・・・
といったところからはじまる物語。
怖い怖いホラー映画を期待すると肩透かしを食らう土俗歴史もの、慣れない生活で疲弊して病んでしまう女性の悲劇。
まぁ、アグネスは精神的に病んでしまうのだが、義母の過干渉は、傍から見ればそれほどでもない(ようにみえる)。
側での鯉漁、洗濯の仕方、料理の仕方・・・
集落には集落のしきたりがあるものだ。
こんなときには夫ヴォルフに支えてもらいたいものだが、ヴォルフのアグネスへの関心が薄い。
夜の営みを行わないところをみると・・・
と村の祭りの際に、親友の青年への愛情が過ぎているようにもみえる。
「子は鎹」なのだろう。
アグネスは一刻も早く子どもが欲しいのだ。
ここが、悲劇の芽かもしれない。
病んだ後にすがる唯一のものは宗教。
だが、キリスト教では「自死」は忌避されるべきもので、埋葬すらされない。
ヴォルフの親友の青年が自死したのをみたアグネスが採った最終手段は・・・
「殺人者として、告解し、魂を救済してもらった上での処刑」。
悲惨かつおぞましい。
さらに、結婚式と同様に処刑も、日々の暗い暮らしにおける祝祭なのが、やりきれない。
全体的に、まだるっこしい演出が難点。
なお、タイトルは、あまりよろしくない。
主人公の名をとって『アグネス/血の祝祭日』とかのほうがよかったのではないかしらん。
あ、これだと、さらにB級ホラーっぽいか・・・
宗教観の教えだった。
無意識の加害者
数百年前、狭い共同体内で生きている人間には、
精神的に追い詰められた状態から逃げる場所は現実になく、
また宗教にも(現代からみて)歪んだ異常な形での解決策しかない。
とくに生き物の姿を愛でることに心の安らぎを見出していた主人公の女性の
単に生活の糧として動物を飼い、狩猟する村での上手くいかない結婚生活の辛さは、
屠られた動物の死骸とシンクロされて表現されているかのようだ。
という感想に至ったのは見終わってしばらく経った後で、
見ている最中は主人公にほとんど共感できない状態でイライラし、
ラストの注釈でやっと気づくことができた。
つまり、主人公の身体、精神の状態を正しく理解していないとき、
私自身は周囲の村人に近しい気持ちを持っていたことになり、
図らずも無知のもたらす偏見による加害者の立場を疑似的に体験したことになる。
冒頭とラストの村の祭祀の対象の対称な状態も含めて、なんともホラーでありつつ、皮肉。
人間とは?
渡る世間はデビルばかり
『デビルズバス』というタイトルと不気味なポスターを見ると、血なまぐさいホラー映画を想像してしまいますが、実際はまったく異なる作品です。18世紀のオーストリアの農村を舞台に、若き女性の過酷な運命を通じて、信仰や社会の不条理を描く、重厚なヒューマンドラマです。
物語の中心は、結婚したばかりのカロリーヌという女性で、姑との関係はうまくいかず、頼りない夫や閉鎖的な村の住民たちとも馴染めず、彼女は鬱屈した日々を送ります。とかくと、橋田壽賀子ドラマのような印象も受けますが、本作はそんなに甘くありません。
懊悩する主人公の抑うつは、当時の社会では「悪魔憑き」と見なされ、宗教上、自ら命を絶つことも許されません。カロリーヌの閉塞感は、観る者の心を強く締め付けます。
映像表現も印象的です。カラー作品なのに、貧しい村や森のシーンは色彩を抑えたモノトーンのような雰囲気で描かれています。これは、カロリーヌの絶望や社会の閉鎖性を映し出すようで、観客に深い印象を与えます。
物語の展開は、現代の感覚では驚くべきものです。カロリーヌは、自死という「大罪」を避けるため、特異な「罪」を犯し、教会での告解を経て、死を選ぶことで魂の救済を求めます。当時の信仰に基づくこの選択は、現代人には理解しにくいかもしれません。さらに、処刑された彼女の遺体の一部が村人たちに聖遺物として分けられる場面は、事前に伏線があったとはいえ、強い衝撃を残します。
序盤では、処刑された女性の遺物をめぐる描写がホラー的な雰囲気を漂わせますが、中盤以降はカロリーヌの内面や社会の抑圧に焦点が移ります。そして、クライマックスで彼女が過酷な運命をたどる姿は、観客に深いメッセージを投げかけます。この構成は、単なるホラー映画を超えた見事な展開です。
この映画は、歴史の一場面を描くだけにとどまりません。女性が強いられる過酷な運命は、当時の社会構造を浮き彫りにし、近代化の裏に隠された犠牲を教えてくれます。また、男女平等が進んだ現代でも、男性中心の社会構造や生きづらさを抱える女性の存在を思い起こさせます。同時期に公開された『ガール・ウィズ・ニードル』とも共通するテーマですが、本作は歴史の闇に埋もれた個人の苦悩に光を当て、現代の私たちに考えるきっかけを与えてくれます。
ホラー映画を期待して観ると、驚くかもしれません。しかし、『デビルズバス』は、人間の魂の救済、信仰、そして社会の不条理を問う、忘れられない作品です。心して鑑賞してほしい一本です。
ヨーロッパのこの頃の風習とかを絡めた作品は好きです というか民俗学...
ヨーロッパのこの頃の風習とかを絡めた作品は好きです
というか民俗学的なスタンスで興味があります
しかも事実に基づいてるなんてすごい
そして本当に切なかった
あと、スクリーンでタイトルが出てくるまで、
デビルズパス(passとか pathとか)だと思ってた
だから何だとかないけど
でもフライパンは引っ掛けたほうが楽だぞ
悪魔の糸に絡め捕られる絶望的な恐怖体験
18世紀中葉のオーストリアの山村を舞台に、田舎に根付く古き因習に絡め取られていく一人の女性を描いた本作。類似したテーマの作品として『ミッドサマー』や『嗤う蟲』が思い出されますが、本作は実話を基にしているだけあって、エンタメ的な要素が少なく、恐怖のリアリティが段違いでした。
まず冒頭、謎めいた衝撃的なシーンで物語は始まります。赤ん坊を抱いた女性が、突如滝の上から赤ん坊を放り投げて殺してしまうという惨劇。続いて彼女は首を刎ねられ、その首と胴体は森の中の処刑台に晒されます。驚くべきは、彼女がなぜ赤ん坊を殺したのかという説明が一切ないまま、物語が主人公アグネス(アーニャ・プラシュグ)と夫ヴォルフ(ダービド・シャイド)の結婚式へと移行していく点。あまりに唐突で不可解な導入ながら、後にこの謎が見事に解き明かされていく構成に唸らされました。
晴れて結婚したアグネスですが、良くあることとは言え嫁ぎ先の姑や、集団思考しているかのような村人たちに馴染めず(この辺りは『嗤う蟲』と通底するものがあった)、懸命に順応しようとするものの、唯一の頼りであるはずの夫からも子作りを拒まれてしまうという無情。やがて精神を病み、そこから肉体まで蝕まれていく様子が丁寧に描かれており、その絶望感は凡百のホラーを遥かに凌駕する恐ろしさを感じました。特に印象的だったのは、アグネスの“病み方”の描写の美しさ。象徴的に蝶を口に入れるシーンなどは、視覚的にも感情的にも強烈な印象を残しました。
そんなアグネスに対し、夫は“浴場”で“治療”を受けるよう勧めます。そして登場する“医者”は、現代の視点ではもはや医学とは呼べない、呪術的な“治療”を施す存在。彼がアグネスの首の裏に針金のような細い糸を通すシーンは、蝶のシーンと並んで本作の象徴ともいえる不気味さを放っており、最大の見どころのひとつでした。そして、本作のタイトルである『デビルズ・バス』が、この悪魔的な“浴場”を指していることがここで明らかになります。
心身共に疲弊し、ついに精神の限界を迎えたアグネス。本当は死にたくても、敬虔なキリスト教徒である彼女には自殺という選択肢がなく、代わりに死刑を選ぶべく子供を殺してしまうという絶望的な行動に出ます。そして冒頭に描かれた、滝に赤ん坊を投げ落とした女性と同じ運命を辿ることに。アグネスの悲劇は彼女ひとりのものではなく、この村で繰り返されてきた運命だったのだと気づかされる場面です。
さらに、アグネスの処刑を見つめる10歳ほどの無垢な少女の姿は、こうした因習が次の世代にも継承されていくことを象徴しており、不気味さに拍車をかけます。また、アグネスの首が刎ねられ、血が流れる中、それを笑顔で喜びながら口にする村人たちの姿は、シュールさと狂気を極めた観る者に衝撃を与え、強く印象に残りました。
物語の展開だけでなく、映像表現も見事でした。光と影のコントラストの使い方が巧みで、全体的に暗いトーンの中、処刑シーンだけが妙に明るく演出され、村人たちの笑顔や明るい音楽とのギャップが気味の悪さをさらに際立たせていました。
以上の点から、本作は精緻に計算された完成度の高い作品であると感じられるとともに、逃げ場のな絶望的な恐怖体験が出来る上質なホラーであると思ったところでした。
そんな訳で、本作の評価は★4.4とします。
そぅなるよね〜_:(´ཀ`」 ∠):
オーストリア北部の小さい村に嫁いできた主人公だが生家に徒歩で帰って来れる距離だったのはビックリでした。義母が強いのは、シングルだったからかなぁと。鬱をテーマにした暗い映画だったので…赤ちゃんを滝から落としたのは産後鬱だったから?主人公の鬱は吐き出せず全て飲み込む性格だったからかな。旦那が同性愛者なのを知らずに結婚し子どもを産む事を期待された為。学校も無く娯楽は結婚式やらキャンプファイヤーの様な周りで酒を飲んで騒ぐ祭りのみ。主人公が自分の世界(虫の収集)から踏み出し友人と仲良く交流出来てたら違った結果になったかも知れないと残念な気持ちになりました。せっかく実家に帰ってこれたのに…また婚家に帰されると思っちゃったのかな?宗教の教えがそうなら救いを求める為(楽になる事)なら仕方なかったのかな_| ̄|○
悪魔のお風呂じゃなかった
18世紀半ば、小さな村の陰鬱とした物語は
実話に基づくと言うのだから恐ろしい。
あらすじにあるような場面あったかなぁ。と
鑑賞後頭を悩ませた。
義母の執拗なイジメがあったわけではないし
村民から虐げられてた訳でもない。
夫も勃起不全だが決して意地悪でもないし
妻の味方もしてくれる。
ただ、夫が抱いてくれない=子供ができない=義母からの嫌味が増える。
それで心を病んでしまったのか。
そもそもアグネスは「死」を美しいものと
捉えていたようにも思える。
告解することで、罪は許され天国に行ける
だから赤ん坊を滝に落とした女の指も清いもの?
ラストの祭りも告解した後だから
神に仕えたものの血として有難がっていたのかな。
よくわからんけど、そんな解釈をしてみた。
鬱ってこの頃は「悪魔憑き」とされたのだから
魔女狩りの犠牲者になった多くの人たちは
鬱だったかもしれないな。とも思った。
邦題に思い込みで勘違いしてはいけない。
25-066
ただただ暗い…
この映画はとにかく暗い。
終始気分を不快にさせるBGMが流れてるし。
正確に言えば結婚式とラストのシーンは明るい。
まぁ、ラストの明るさは逆に怖いんだけど。
気分がイマイチの人は観ない方が良いかと。
今、自分は色々とあり精神的にへこんでるるんだけど、その気分でこの映画を観終わった時はホントにキツイ。
じゃあ、面白く無いかと言われればそんなことは無い。
まぁ、『スゴく面白い!』とも言いづらいけど。
映画としては良く出来てると思います。
ジャンルがホラーと言って良いのかは分からない。
グロいのはラストくらいだったし。
ただ、胸糞悪い映画です。
個人的には去年観た『胸騒ぎ』の方が胸糞は悪い。
でもこちらの映画はメンタルをガッツリ削られた。
体調はもちろん、精神的にも絶好調な時に観る事をオススメします。
最後に・・・主人公の旦那、見た目のイメージと違って声が高いな。
神の赦し
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