「正義の怒りをぶつけろステイサム!」ビーキーパー sokenbiteaさんの映画レビュー(感想・評価)
正義の怒りをぶつけろステイサム!
一見すると、とにかく悪人をぶっ倒すヒーローの活躍を描いた、何も考えずに気持ちよく見れるアクション映画、に見えるかもしれないですけど、、ほんとにそうですかね?
実は典型的なアクション映画からは、色々とはみ出してるところがあって、だからこそ、この作品ならではのカタルシスが得られて、こんなにも爽快な映画になってるんではないかと思います。
まずそもそも、殺しすぎですよね。(それが悪いという意味ではないです。)
卑劣な詐欺集団の親玉とかを派手にぶっ殺すのはいいとして、途中から絡んでくるFBIとかに対しても、手向かいするなら容赦しない。
敢えて殺そうとして殺してるわけじゃないだろうけど、FBIも何人もやられてますよね。
思うに、ビーキーパーは一人の人間というよりも、システムとして行動してるんだと思う。
作中でもところどころで、そういう趣旨のことは言われてます。
社会がおかしな方に進んだときに、蜂を守る役目を果たすために、働き始める。
いわば自身も一種ハチのように、一旦事が始まれば役割をこなす以外に選択肢を持たない存在のようにも見えます。
なので、親切にされた人が自殺に追い込まれたから、というだけの個人的な復讐とはちょっと違うと思います。
実際、死んでしまった彼女との関係はあっさりとしか描かれてなくて、普通に考えたら足りてないですから。
自分はこれが単に手落ちで描けてないとか、アクション主体なんだからどうでもいいとか、そんな理由でこうなっているのではなく、この映画のシナリオとしてはこれが的確なんだと思っています。
今の時代について、無茶苦茶簡略化して言ってしまうと、何か正体のわからない悪意にいつもさらされているのが、今という時代の特徴と言えるのではないかと思います。
人の痛みや苦しみを、自分が得をするなら簡単に無視してしまう、そういう浅はかで無神経な悪意があふれかえっている。
そういうものには、本当に我慢がならないんだけども、現実には得体のしれない気持ち悪い出来事が増えるばかりで、正体を暴いて鉄槌を食らわすようなケースはめったに見られない。
ビーキーパーはそこをなんていうか、全部丸ごとぶちのめしてくれるので、だからこんなにも胸がすくのかなと思います。
こういうのは、中途半端に邪魔が入ったらまとめてぶっ飛ばしてでも、とことん根こそぎやらなきゃダメなんです。
この映画では、糸口は振込み詐欺なんだけど、それにとどまらず、ほんとに悪いのは何か(今回のケースでは、ということだけど)という正体をちゃんと提示していて、それを叩き潰すまでビーキーパーは止まりません。
そしてそれは、ビーキーパーとしての仕事ではあるんだけども、出発点にはクレイ自身の正義があります。(これはセリフでもはっきり言ってたと思います。)
これらが全部つながってるからこそ、見てるこっちもほんとに心底「やったれ!」という気持ちになれるんだと思います。
その仕事ぶりの凄まじさは、もう見ての通りで。
ほんとに胸がスカッとするんですけど、それだけではなく、最後の親玉を追い詰めるべくひたすら敵を薙ぎ倒していくあたりでは、なんだか見ていて泣きそうになりました。
クレイの戦いぶりには、ムラムラと湧き上がるような怒りが感じられて、それがまさに、我々自身の怒りをぶつけてくれているように思えたからです。
熱かったです。
つまりこの映画は、ジェイソン・ステイサムがただ暴れまくる爽快なアクション映画、ではなくて、本当に怒るべきものに対する怒りを爆発させて、我々の代わりに暴れまくってくれる爽快なアクション映画、なんだと思います。
そういう意味では、今までにない魅力を持った作品かと思います。
ジェイソン・ステイサム主演の映画では過去最高と言ってもいいのではないかと個人的には思っています。