「「正義」とは、何だ。」ビーキーパー しゅわとろんさんの映画レビュー(感想・評価)
「正義」とは、何だ。
ジェイソン・ステイサム氏演じるキャラクターが無双する映画だろう。そう予想して劇場に入った。……そんな生ぬるいものではなかった。
養蜂業を営むアダムは、ある家の納屋を借りて蜂蜜を作りご近所に配るという、平穏な日々を過ごしていた。しかしある日、恩人の老婦人がネット詐欺によって全財産を奪われ、自ら命を絶ってしまう。それに強い怒りを抱いたアダムは、特殊な経路によって詐欺グループの居所を突き止める。素人とは思えぬ強さで数々の敵を倒していくアダム。一方派手に動いた事で、FBIが彼を逮捕するため捜査に乗り出した。アダムの正体は?そして、詐欺グループの裏に潜む黒幕とは……?
ストーリー自体は単純明快だ。とんでもない経歴を持つ男が、復讐の為に悪党を倒していく。他の映画で例えるなら「ジョン・ウィック」のような作りである。だが………ジェイソン・ステイサム氏演じるアダムが強い。そう、圧倒的なまでに強すぎるのである。
並の用心棒や特殊部隊程度なら数秒でブチのめされ、同業者ですらも数分で倒してしまう。苦戦した相手は終盤に一人だけ。清々しいまでの無双っぷり。悪役が可哀想になるほどの凄まじいジェノサイドが繰り広げられる。ただ倒すだけでなく拷問や恐怖を植え付けてからのトドメなど、ダーティーな手もガンガン使う。悪人に対しては一切容赦の無いダークヒーローっぷりだ。
しかし、台詞の節々からは優しい心を持っている事、強い正義感で動いている事がわかる。戦闘シーンにおいても、表情や台詞を介さずとも悪への強い怒りを抱いている事が感じられる。ただの残虐な男にとどまらず魅力的なキャラクターに仕上がっており、ステイサム氏の名演が光る。
殆どが戦闘シーンで構成される一方で、ラストには「法とは何だ」「正義とは何だ」といった問いかけもある。そしてそれに劇中で答えが出されることは無い。そうしたメッセージ性もこの映画の魅力だ。
突っ込み所は少々あるが、この映画の凄まじい勢いには霞んでしまう。頭を空っぽにして観る事のできるアクションエンタメ作品だ。
ステイサム氏のファン、アクション映画ファンにはぜひとも観ていただきたい。