アリランラプソディのレビュー・感想・評価
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沢山涙を流した人ほどよく笑う
在日コリアンが日本で一番多い大阪で僕は生まれ育ったので、コリアンの人々と触れ合う機会は少なからずあり、我が家ではキムチが毎晩の食卓に上っていました。しかし、神奈川県川崎市にも多くの在日コリアンの人々が暮らしているという事を知ったのはほんの数年前のことです。本作は、朝鮮半島から日本に渡って来て川崎で暮らす1世の特にハルモニ(おばちゃん)達の来歴と日常を描いたドキュメンタリーです。「勝手に日本に来たんだから、気に入らなければ日本から出て行け」などという言辞が現在でも平気で行き交うこの国でハルモニたちが如何に苦しめられそれに耐えて来たのかが明るさを失わずに語られます。
こんな安易な常套句で語るべきではないのでしょうが、「沢山涙を流した人ほどよく笑う」との言葉を思い出したほどハルモニたちの笑顔とエネルギーが溢れ出ています。おばあちゃんになってもよく喋る、よく笑う。みんなで数十年ぶりの水着を買いに行くシーンは、もはやカオスな世界で抱腹絶倒なのに胸が熱くなってしまいました。
会場には、歳を取ってからあらためて字を習い始めたハルモニらのメッセージも掲示されていました。そうか、字も書けないままこの日本で生きて来たんだという事実に驚くと共に、今からでも勉強したいという思いに深く感じ入りました。
ひたすら尊い
在日1世のハルモニたちを映したドキュメンタリー。ハルモニたちはみんな個性が強くて魅力的だが、彼女たちが〝いい話〟を語るわけではないし、〝ドラマ〟が起きるわけでもない。映画はハルモニたちが沖縄のオバーと交流し、識字学級で字を学び、安保法制反対のデモに出掛ける姿を丹念に映していく。
自分とあまりに境遇や経験が違うので容易に感情移入もできない。しかし、ふとした瞬間に感情が揺さぶられ、今、自分は本当に尊い人間の姿を見ているという思いが胸を衝く。経験の違い、性別の違い、世代の違い、民族の違い、そうした違いを乗り越えて胸に迫る瞬間がある。
植民地時代の日本人の非道な行いが話題になり、ハルモニが怒りを爆発させる場面もあった。そうした場面は日本人として身の縮む思いだったが、映画全体としては、それ以上に感謝の念が湧いてきた。なぜ「感謝」なのかはわからなかった。
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