「情報がギュウギュウ過ぎる、かも。」クイズ・ショウ なかじwithみゆさんの映画レビュー(感想・評価)
情報がギュウギュウ過ぎる、かも。
レッドフォード監督4作目。
追悼。
なんとも深くて、ピンとこない観客に埋もれてしまった傑作。
レッドフォード演出は冴えていますが、情報量が多すぎて、観客は消化できないだろう。
人は簡単にウソをつく。
私は嘘をついていませんと平気で嘘をつく。
嘘ではないと嘘をついていれば、
いつの間にか、嘘ではなく、まるで本当のことのように思えてくる。
自分が苦しまず、嘘を本当のことにする出来る人も居る。
人間界の、あるある、なのだ。
アメリカ最大のテレビ事件として有名な題材に、
アメリカンドリームや視聴率競争、格差社会に人種問題
(しかもユダヤ人対ユダヤ人の諍いも常にイライラしている)がギュウギュウに詰まっていて、
安易には面白くない見えない。
人間はそれぞれに様々に、生まれ育ちの事情があり、
人間なので皆んな金欲しさに嘘をつく。
その真実を様々に真面目に暴いている映画。
テレビ業界のヤラセなんて、
この映画が示すようにアメリカ1950年代から当たり前だぜ、
なんて白けて見られるほど僕は賢くなれず、
クイズ番組はダイスキなので
(クイズ東大王なんか見ると、やっぱり東大生って凄いなぁ、なんて)
いまだに騙されまくっています。
まさかまさかと、嘘を暴きません。
この映画が語るように、視聴者はそんなものです。
インテリ一家に育った主人公が、
クイズ番組のイカサマで一躍スターになり疲れ、実家で深夜チョコレートケーキを食べるシーンがある。
主人公の父が気づきフォークを持ち一緒にケーキを頬張る。
『子供の時チョコレートケーキと牛乳が幸せだった』と言う主人公が
『あんな幸せは、またあるのか』と父に尋ねる。
『息子をもて』と当たり前のように答える父親。
この何気ないシーンにもレッドフォードは愛情を描ける。
誰かを何かを裁くのは簡単だが、
人をみつめ、己をみつめ直すのは難しい。
レッドフォードはテレビのヤラセ問題を面白がるより
真摯に人々をみつめてしまった。
なかじwithみゆさま
『追憶』に共感とコメントを、ありがとうございました🙂
チョコレートケーキのシーン、よく憶えています。逆に言えば、憶えているのはこのシーンだけです。
「子どもの時は、いつもチョコレートケーキと冷たいミルク」
「私も一口もらおう」
父親と息子の会話から、レイフ・ファインズが愛情ある家庭で育てられたこと、彼がこれからする決断によって失うであろうものが伝わってきました。
今年の春『教皇選挙』を観た時に、ローレンス枢機卿を演じるレイフ・ファインズの表情を、どこかで見たような気がしていましたが、この『クイズ・ショウ』でした🧐