劇場公開日 2024年5月10日

「否認と固着の果てに。」不死身ラヴァーズ 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0否認と固着の果てに。

2024年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2024年。松居大悟監督。小さいころ死の淵から生還した女性は、そのとき出会った少年が忘れられない。中学校で再会して告白するが、突然目の前から消えてしまう。それ以来、同じ名前の男性が現れるが恋になるところで消える、ということを繰り返して、、、という話。
主人公の主観に沿って映画が進むが、それは否認に基づいた過去語りであることがやがてわかってくる。そのきかっけは、否認の元になった本物と遭遇すること。特殊な病を抱えている本物との付き合いを通じて、主人公は否認の事実を認めていく。
SF系や幽霊系など途中まではどんなフィクションでもありうる展開だったが、いかに特殊でも心理系で説明がつく現実世界の映画だった。否認と固着といった自我問題を抱える主人公と、事故により記憶に障害をうむ器質的疾患を持つ相手と。つまり、「心」に問題をもつ人と「記憶」に問題をもつ人が対峙しているのでどっちを信頼していいかわからない、というところがミソ。
同じロケーション、同じアイテムをどこで使うか、どこをずらすかによってリズムをつくることに意識的で安心して見られる。

文字読み