劇場公開日 2024年5月3日

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「物語は面白かったけれど娯楽度が少し足りない」無名 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 物語は面白かったけれど娯楽度が少し足りない

2025年12月1日
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鑑賞方法:DVD/BD

第二次大戦下で行われるスパイサスペンス。
時間軸が少々いじられているのでもしかしたら理解が困難な部類に入ってしまうかもしれない。
とはいえ、幾人かのキャラクターが本当はどこに所属しているのか、というのが面白さの肝であるから、分かりやすくしてしまうと何も面白くなくなってしまうだろう。

登場人物のほとんどがスパイである。スパイと言っても正体を隠して敵に潜入するようなものではなくて、自分はこういった人間ですと正体を明かし(とは言ってもそれも嘘だったりするわけだが)相手からの信用を得て、自分の持っている情報と相手の情報を交換する感じのスパイである。

誰が何の情報を得ようとしているのか、誰に正体を隠したいのか、そして、観ていて理解している状態から辻褄の合いにくい場面に遭遇したときに面白さが発揮される。
更に後押しするように、結構感情的なスパイもので、任務(それすらも観ていて定かではないのだが)と自身の感情の間で揺れ、失敗するのではないかとハラハラするのだ。

本当の目的を隠して進む感じは「シリアナ」のようで、物語の分かりにくさは「裏切りのサーカス」のようだ。
どちらの作品もわけわからんと言う人もいるので、上記2作品ほどではないにしろ、やはり分かりにくい作品なのかもしれない。
最低でも中国の国民党と共産党くらいは分かっていないと観られないことは間違いない。

ドイツ映画なんかがよく使う黒い画の映像は中々いい感じだった。スパイノワールの雰囲気は充分である。
緊張感の創出には成功しているが、具体的に何が緊張の原因なのか理解できないので瞬間瞬間の面白さが生まれにくい気がした。
つまり、こういった理由で今、場面が緊張していると観ていて勘違いしてしまうミスリード不足なのだ。
本当の理由を隠すのは正しい。欲しいのは私たちを誤解させる偽情報だ。
それがあれば娯楽度も高くなり最高だったのではと思う。

つとみ