「人間ドラマが9割」ゴジラ-1.0/C odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
人間ドラマが9割
本作はモノクロ版というだけで中身は同じ、確かにモノクロだと時代の雰囲気がでてますね。初代ゴジラに寄せたオマージュでしょう。
2時間余りの長尺だが人間ドラマが9割、これも「ALWAYS 三丁目の夕日」や「永遠の0」などヒューマンドラマが得意な山崎貴監督らしさ全開、さしずめゴジラは厄介な悪役といった冷めた脇どころ、昔、鶴田浩二さんも揶揄されていましたが特攻の生き残りの同僚への罪の意識とかは「永遠の0」の流れでしょうかね。
戦後の貧しい恋人たちということであれば、先ずは黒澤監督の初期作品「素晴らしき日曜日」の人間賛歌が頭に浮かびます、それに比べれば山崎監督は戦争体験が無い分リアリティが欠けるのは致し方ないでしょうね。
本作の特徴は軍ではなく民間対処というところでしょう。戦争の生き残りの元兵士が結束、最後は元特攻の敷島の自己犠牲で完結かと思いました。
初代ゴジラの芹沢博士のように最後はゴジラと心中でも成り立ちますが、暗い時代背景だからこそ山崎監督はどうしてもハッピーエンドにしたかったのでしょう、当時の戦闘機には緊急脱出装置はありませんでした、装置は大戦末期にドイツの「サラマンダー」機で初めて実用化、なんと映画の震電の座席にはドイツ語で「Druckluft-Schleudersitz」(圧縮空気式射出座席)と書かれたプレートが付いていました、敷島を助けるためにわざわざドイツ製の座席を付けることを結びつけた博識ぶりには脱帽です。
ソ連との開戦を避けるべく助けてくれない米国というのはどうなんでしょう、アメリカ映画なら3発目のオッペンハイマーの原子爆弾で撃退という描き方だったかもしれませんね。
最後は民間の漁船迄総動員というのはチャーチルのダンケルク撤退作戦をモジった海外受け狙いかも、今までより動物臭いゴジラの造形、足の爪の迫力、海中シーンなどアカデミー賞は納得ですが視覚効果賞にとどまったのはアメリカの出番が無かったからかも知れませんね。こんなに早くに家で観られるなんて思っていませんでしたからアマゾンに感謝です。