「最初からモノクロだったら...」ゴジラ-1.0/C K2さんの映画レビュー(感想・評価)
最初からモノクロだったら...
カラー版を2回観たうえで、3回目をモノクロ版で観ました。
結論からいうと、モノクロ版のほうが好きです。
モノクロのほうが、圧倒的に戦後感や昭和初期感が出ていて、見る側が"当時の物語"の世界に浸り易いし、映像の情報量が減る分、怪獣映画としての怖さや不気味さが強調される効果が高いと思います。
モノクロにすることで画としてのリアルさが減るために、映像と見る側の時間的な距離感が遠くなって、かえって"物語"に集中できる感じです。
カラー版で伝わってきた映像の迫力や細かいCGのクオリティはわかりにくい一方、相対的に音やセリフ、演技の迫力は増してくるように思います。
先にどちら版で観るかで、作品の評価や印象が変わってくるでしょうね。
制作側からしたら、折角作り込んだCGのクオリティが伝えられないし、興行的にもカラー版公開が先、の選択肢しかないでしょうが、両方公開、しかも時期をラップさせての公開という選択は絶妙、というかファインプレーですね。拍手!!
見る側は、どちらを観るか、両方の場合は観る順番を選べますからね。
ストーリーや演出など、共通部分はカラー版のレビューに書いたので省略しますが、書き忘れたことを一つ述べます。(ネタバレ要素)
ラストで、崩壊して海に沈みゆく行くゴジラに向かって人間たちが、一斉に敬礼するシーンがありますが、ここだけは、何度考えても全く理解不能なので、もし別のテイクがあるのならいつか改訂版を公開してほしいです。
激闘の末に退治して、滅びゆく敵(しかも怪獣ゴジラ)に対して、その場の人間たちが、誰ともなく自然発生的に思わず敬礼する、という行為はどう考えてもその場面では起こり得ない出来事で、仮に「こういう気持ちを描いたシナリオなんだろうね。これもありかも」と理解することすらできない演出です。
あそこで怪獣に向かって"敬礼"する行為があり得るとしたら、先の戦争やゴジラとの戦いの犠牲者への敬意や弔い気持ちの現れ、という設定しか想像できないのですが、命がけの戦いの中や、その直後にそのような極めて客観的な感慨をその場の全員が同時に感じる、ということが起きる可能性はゼロというしかありません。演出云々の前に、プロット自体が理解できない。
SFとしての不自然さなどのツッコミどころ(ゴジラが序盤に海洋生物らしく海面を泳いでいたと思ったら、あるシーンでは比重を無視した海上仁王立ち(立ち泳ぎ?)とか、戦艦を襲うときと主人公が乗るポンポン船を追いかけるときのスピードが全然違うとか)は、怪獣映画、娯楽映画ということで敢えて減点要素にする気はないのですが、このラストの演出を理由にマイナス0.5点です。
(山崎作品て、好きな作品にも少なからずこういう"決定的違和感"シーンがあるので、作品の良し悪しは抜きにして、結局好きになれないんですよね。画竜点睛を欠くというか、極めて表層的というか。根本的な人としての価値観とか人生観が合わない可能性がありますね。)