「高評価にとても驚き」ゴジラ-1.0/C どんさんの映画レビュー(感想・評価)
高評価にとても驚き
アカデミー賞で視覚効果賞を受賞したのはおめでたいことです。それはそうと作品全体を評価するなら個人的には駄作ですね。高評価されていることにとても驚きがあります。
予告編を見た程度の予備知識だったのですが、「焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ」なんてオフィシャルサイトにあったので、戦後復興し始めた東京を理不尽に壊しまくるのだと思ってたら、ゴジラが暴れるのはほとんど海。まあ最近のプロモーションなんてそんなものですね。これが一番残念だったかな。
さて。
ゴジラのシーンに気になる点は散見しますが(立ち泳ぎできるのかよ!とか、再生能力早すぎないか?とか)、それは『怪獣映画だから』と割り切るしかありません。怪獣映画の鑑賞の基本です。一方で、ゴジラ不在のドラマパートについては『怪獣映画だから』『エンターテインメント作品だから』と私には許容できませんでした。
この作品、多くの時間でゴジラが出てきません。人間ドラマに大部分を割いています。なのにキャラクターが深堀りされず、どうにも感情移入することが難しい。人物像の解釈を見る側に委ねられるのは最近のB級作品に多いような気がしますが、それにしても解釈に必要な描写があまりに浅い。だから話が進むごとに溜まっていく違和感が心地悪く、早い段階から白けてしまいました。
戦後の混沌を乗り越える強さを感じるキャラとして登場した典子が、敷島の家に転がり込んでからというもの、同一人物とは思えないくらい常識的なか弱い女性に変貌してしまう。
特攻逃れの苦悩をあれほど引きづった敷島が、破壊に巻き込まれ典子死亡を誤認してから別人のように覚悟を決めてしまう。典子への愛情がどれほど重いものなのか描くことなしに。
敷島と典子の生い立ち(どのような両親のもと、愛を注がれて育ったのかなど)をちゃんと描かず、ひょんなことから暮らすことになった赤の他人同士が、血のつながりもない子供をわが子のように育てる。
もう書き出したらきりがないくらい、そういうものがある。「あー、早くゴジラ出てこないかなー」と怪獣の登場を欲求不満のはけ口とするような2時間でした。
それと。俳優の方に非はありませんが、神木氏、浜辺女史には「戦後の焼け野原を生きる人物」を演じられる重みがない。戦後復興期という日本近代史においては特級の混沌さと死生観を必要とされた時代を演じるにはミスキャストだと感じました。
シリアスさとライトなエンターテインメントさ、そのどちらも取りに行ってるけど半端に終わった感じです。ドラマパートの制作側の意図が伝わらないのは私の感性の問題なのかもしれませんね。