「Brothers」アイアンクロー ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Brothers
プロレス自体はあまり詳しくなく、実在する一家のことも全く知らない状態での鑑賞。
呪われた一家という名目に惹かれましたが、家族映画という印象が強い作品でした。
呪われた一家というのは言葉の綾で、父親から託された夢が結果的に重荷になってしまっている重厚な家族ドラマ、兄弟愛を緻密に描いた作品でした。
史実を知らなかったので、映画で明かされる内容とともに、兄弟達最期を知っていくのは中々に辛かったです。
幼少期に長男は事故で亡くなっていることが明かされ、三男のデビッドは日本に来日のタイミングで急死、四男のケリーは事故による後遺症で未来が見えなくなりピストルで自殺、音楽にお熱だった五男のマイクは薬の過剰摂取で死亡、六男のクリスもシーンはないながらもピストルで自殺と、ケビン以外の兄弟が何らかの形で、ケビンよりも先に旅立っており、兄弟の仲がとてもよさげだっただけに、これが史実なのは心にきました。
その兄弟愛が深いがゆえに両親の愛の注ぎ方や態度はぶっきらぼうすぎないかなと思いました。
父親のフリッツは夢を託したといえば聞こえはいいですが、基本的に鍛えることにしか目が行っておらず、心のケアなんかはまともにしているようには見えませんでした。どんな相談を受けても、プロレス以外だったら兄弟で話し合えと突き放すだけですし、息子達が成長してからも考え方が変わっているようには思えず、いわゆる洗脳のような形で息子たちを支配していたなという印象が強く残り、胸糞でした。
母親は放置しているかの如く教育に携わっている様子が見られず、これまた兄弟たちで話し合ってと突き放すばかり。後は神頼みに逃げているようで、父母どちらからもしっかりとした愛は注がれていないようでモヤモヤしました。
こういう作品で死後の世界が描かれるのは珍しいな〜と観ていましたが、壮絶な死の後に兄弟揃って再会、幼い頃に亡くなった長男とも再会して歩き出すシーンはとても切ないんですが、どこか安心できるシーンにもなっていてとても良かったです。
ラストシーン、素晴らしすぎました。
プロレスラーという職業を辞め、リングから降りて、自分の子供たちと向き合って、兄弟たちに想いを馳せて涙ぐむシーン、それに子供たちが気づいて駆けつけて、僕たちが兄弟になる!と純粋に言ってくれたシーンは観ているこちらもウルッときてしまいました。
エンドロールに大家族で牧場を持って幸せに暮らしているという旨が記されてあって、一安心しました。ケビンの息子たちもプロレスに挑戦していたりと、その後もプロレスとの縁は続いているんだなぁ、血筋だなぁと思いました。
役者陣、ザック・エフロンが素晴らしかったです。肉体改造もさることながら、何かに取り憑かれたんじゃないかってくらい狂気じみたプロレスのシーンや、兄弟の死やうまくいかない生活に感じる悲哀だったりと、様々な表情が見れて素晴らしかったです。
ノンフィクションの物語としての重さがずっしりとあり、全くの他人のはずなのにケビンに強く強く感情移入してしまう作品でした。
家族という名の呪いに兄弟で立ち向かっていく姿、兄弟を失って悲しみに喘ぐ姿、どこを切り取っても辛いはずなのに、自らの手で呪いから脱したケビンに拍手喝采です。どうかこれからもお幸せに。
鑑賞日 4/9
鑑賞時間 12:30〜14:55
座席 F-3