「canon」ジャン=リュック・ゴダール 遺言 奇妙な戦争 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
canon
写真の断片の連続が文字とともに示されるのだけど、写真の裏側を見せていることが面白い。「canon」と思いっきり企業名が書かれていて、豊かな写真の世界も裏返せば味気ないもんだよということなのか。企業活動に支えられている芸術活動みたいな。
黒味映像の多用、ぶつ切りにされる音楽、どれをとっても自然ではない。映画というか映像は、世界をそのまま切り取れるということが言われるのだけど、自然に見えることを拒否するかのように人工的な部分を強調しまくるのは相変わらずというか。実際、映画もまたひとつの「物体」ではある。
20分という短さがいい。これは未完の作品なのだろうけど、未完と完成の境もゴダール作品には元々薄い。「完成」ってどういう状態を指すんだっけ、とも思う。絵画なら美術館に飾られた状態が完成なのか、でももっと何か足したり引いても本当はいいのかもしれない。映画なら、映画館で上映した状態が完成なのか、でも、その後にいろいろ修正したり再編集する場合もあるし、「完成」って何だ。
あらゆる物事は未完の過程なのかも。
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